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Act.7 「Big Deal」~Kizuna~

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「はい。簡単に言えば、僕は警察官です。地球の警察組織を大きくしたものと思ってください。と言っても、かなりスケールが大きすぎて想像が出来づらいかもしれませんね」
少し笑うとトレイに載せていたカップを依月に手渡すと、依月は受け取った。
 ジェイスの微笑は、どこか人を安心させるものがある。その眼は、いつか自分が見ていた「眼」にどこか似ている。最初に彼に出会った時から、ずっと感じていたことだ。
 いっそのこと、自分も話を聞いたほうがいいのだろうか……
 考えていた依月にジェイスが話しかける。
「単刀直入にお話ししましょう。依月さんたちがこの間、手に入れた小惑星の欠片のこと……僕も知りました」
「あ……」
「小惑星探査機が持ち帰った欠片、まだ調査段階に入ったばかりだと聞いています。でも、あれを狙っている奴らがいる……」
依月の表情が変わった。
「あの欠片は、地球上には存在しないエネルギー体の塊です。利用次第では、とても有効なものになりますが、扱いを間違えたり、心無い者が扱うとどうなるか……わかりますよね?」
「じゃ、じゃあ、この間、私が襲われて……浅沼くんが狙われたのは」
「そうです。あの欠片を狙ったやつらの仕業です」
一度立ち上がった依月は、再び、ベッドのふちに腰を落とした。
 怖い、怖い。震える彼女の気持ちがダイレクトに……ジェイスに伝わってくる。
 自分たちが調べていることがとてつもないことに繋がっていることが、少しずつわかってきた。そんな危険なものを自分たちはあの探査機で手に入れたのかと、恐怖すら感じる。でも、自分たちはそれすらもわからないまま…今、自分はジェイスから聞いたからこそ、新たなる恐怖が襲ってきている。
 まさか…そんなことって……
「相模原キャンパスには、銀河連邦警察の監視カメラを数台、送り込んでいます。それから……依月さんや研究者のみなさんを助けるための手段をこちらで用意してあります。今後、しばらくは僕たちが相模原キャンパスのみなさんに協力することになるのですが、でも、表だっての活動はできません」
「どうして?」
「さっきも言いましたが、我々の組織は地球人には知られてはならないからなんですよ。色々ありましてね」
「だけど、私……相模原キャンパスに戻らないと。ほかの人たちも心配しているだろうし」
「ええ。だけど、依月さんをひとりにしておくわけにはいかない。かといって、僕がそばにいるのもヘンですからね。そこで、宇宙関連の仕事がわかる人で、なおかつ、心強いボディガードになる人を呼びました」
すぅっと、ジェイスは深呼吸する。顔を挙げた依月に、もう一度、優しく笑いかけると、振り向いてドアの向こうに話しかけた。
「入ってきてもいいよ」
スライドしたドアの向こうから、ジェイスとは色違いの制服を着た男がやってくる。
 依月は自分の目を疑った。
「うそ……なんで?」
目の前にやってきた男……撃の姿を認める。
 1年半前、自分の前から宇宙へ飛び立ち、そして行方不明になってしまったはずの撃が、目の前にいる!
 周囲が諦めても、自分はどうしても諦めきれなかった。ずっと行方を捜していた。でも、こうやって今、目の前にいきなり現れるとは思わなかった。
 依月は言った。
「真くん、どういうこと?まさか、撃が私たちを…?それに、なんで真くんと同じ制服なの?撃も、なんで生きてるのに、生きているなら連絡……どうして?ねぇ!」
「依月」
必死に言葉を絞り出す依月を、そっと撃が制した。
「俺のことはあとできちんと話す。今は、ジェイス先輩の話を最後まで聞いてくれ。先輩、話しを続けてください」
静かで、落ち着いた声。撃の横顔は、何かを決心したような、すっきりとした表情だった。ジェイスは小さく頷くと、話しを続ける。
「しばらくは依月さんのボディガードを撃くんに頼んだ。とはいっても、彼は一般的に顔が知られているから、どうしたものかと考えたけれど、まぁ、そのあたりはこちらに任せてください。撃くん、わかっているよね」
「はい」
「依月さん、安心して仕事に戻ってください。あなたと相模原キャンパスのことは、僕たち銀河連邦警察と十文字撃……彼が守ります」
そう言うと、ジェイスは撃と依月を見た。


 最上家での「お留守番」をしていたセイラは、ジェイスからの通信を受け取り、事の次第を把握する。
「なるほど……コトは動き出したという感じね」
目の前にあったノートパソコンを閉じると、天井をみて少しため息をついた。相模原キャンパスと依月の件は動き出したからいいけれど、問題は……
「あとはコンバットスーツなのよねぇ……」
銀河連邦警察からの連絡は、まだ来ていない。キャプテン・マーベラスからも、あれから特に連絡はないから、何か動きがあったわけではなさそうだ。ジェイスに大怪我を負わせた相手というのが、今回のキーワードになっているのは間違いない。「相手」がどんな手段を使ってきたのかというのも気になる。謎の腐食という言葉も気になるし。とにかく謎だらけだわ、今回の相手は。
 もともと、コンバットスーツというのは、着用する人間のパワーを増幅させるものではあるが、それは着用する人間のふだんからの心構えと基礎体力などがあってこそのものだ。また、今までジェイスのコンバットスーツが派手に損傷したということはなかった。今回がほぼ初めてのことになる。
 そう思いつつ、目の前にあったコーヒーカップを手にして、残っていたものを飲み干すと、元気な声が玄関から聞こえてきた。
「セイラねーちゃん、ただいま!」
「あ、太一くん、おかえりなさい」
慌てて時計を見ると、確かに太一たちが帰ってくる時間だ。そういえば、シェリーがジェイスの部屋にいるはずよね。あとで声、かけておいたほうがいいかな。
「あれ?ママは?」
「もうすぐ帰ってくると思うよ。太一くん、今日は闘破さんのところでしょ?」
「うん!闘破先生、先週はお出かけしていたんだよ」
「そうだったの?」
「そう。だから、ケイ先生が教えてくれたんだよね。今日は闘破先生、帰ってきてると思う」
太一の通っている道場……「武仁館」の山地闘破は今も時々、ジェイスに連絡をとることもある。彼も百戦錬磨、実にさまざまな「修羅場」を越えてきたひとりだ。ジェイスの「師匠」ということもあるし、ジェイス自身も時間が合えば、道場に通っているのは先にも書いたとおりである。
「太一くん、ちょっと……私、お出かけしたいんだけれど、お留守番、いいかな?」
「うん!もうすぐママも帰ってくるんだったら大丈夫だよ」
「ありがとうね」
セイラは小さく礼を言うと、ノートパソコンを閉じて、立ち上がった。

作品名:Act.7 「Big Deal」~Kizuna~ 作家名:じゅん