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【ヘタリア・腐】きっと見つかるGGm8!【西ロマ】

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「スペインのアホちくしょう!」
 携帯に届いたのは、まだ仕事が終わらないという恋人からのメールだった。せっかく休みを合わせたのに何だと憤りつつ、文句を言っても仕事が終わる訳でもない。抗議すればする程彼の仕事は遅れるのだから、ロマーノには了解のメールを返すことしか出来なかった。
 とぼとぼと自室に戻り、暇になってしまった一日をどうしようかとベッドで膝を抱える。ふと視界に入ったパソコンに気付き、ロマーノは大きな溜息をつくと電源のボタンを押した。
 インストールしてあるゲームが立ち上がる間に、飲み物とお菓子を用意する。こうなったらヤケ喰いしてやると山盛り持ち込み、苛立ちを込めるようにキーボードのエンターキーを押した。
『ヘタリアファンタジア』
 アメリカと日本が共同開発したネットゲームは、今日も多くの人々がログインしている。人で溢れる町に降り立ち、ロマーノは可愛い女性キャラでも居ないかと辺りを見回した。
 ナンパでもして話せば気が紛れるかと思ったが、たまたま声を掛けたいようなキャラが通りかからない。更には久しぶりの逢瀬が駄目になったイライラは相当のようで、町を出てモンスターを殴っていた方がスッキリするかもしれないと道端で棒立ちしながら考える。
(うー……まぁ、いっか)
 ロマーノの職業はスペインの策略(女の子キャラに回復と称して声を掛けられる)によりクレリックだ。攻撃魔法はもっとレベルが上がらないと覚えられず、攻撃手段といえば非力な杖で殴るだけ。それでも小物ならば相手に出来るだろう。
(町近くなら弱いモンスターしか出ねぇよな)
 いつもなら戦士のスペインを盾にレベルアップをしていたが、今日は一人。急に寂しくなる自分を叱咤し、ロマーノは町のゲートを潜った。
「ろ、ロマーノ君! 待って!」
 ……潜ろうとした所で声を掛けられる。声の主をチャット画面の名前で探せば、思わず顔が引きつった。
「ロシア……」
「ありがとう。さ、一緒に行こう!」
「え? はぁっ!?」
 腕を取られ、引きずられて町を出る。恐怖の為抵抗出来なかった間に町は遠ざかり、森の中へと連れ込まれてしまった。
「ななな、何なんだよこのやろぉ……」
 画面の向こうで泣きそうになりつつ、ゲーム内のロマーノは必死にロシアと距離を取る。これからカツアゲでもされるのかと震えていると、辺りを必要以上に伺っていた相手は大きく息を吐いた。
「……よし、撒けたみたいだね」
「は?」
「助けてくれてありがとう、ロマーノ君」
 くるりとこちらを振り返り、ロシアは笑顔でお礼を言ってくる。一体何だと首を傾げれば、町の入り口から一人で出るキャラを遠くからベラルーシがチェックしていたのだと言う。だからロマーノを見つけ慌てて声を掛け、パーティのように出て誤魔化したのだと説明してくれた。
(ベラルーシ……恐ろしいな……)
 ロシアの妹であるベラルーシとは世界会議で会った事があるが、色々と恐ろしい女性であるとロマーノの脳には記録されている。基本女性好きのイタリアではあるが、彼女の内面の恐ろしさに震え上がったことがあった。
 戦争よりも怖かったと思い出し、ロマーノはロシアに軽く同情する。確かにあの形相で追いかけられれば流石の彼も恐ろしいだろう。そして今日は逃げ切れたと思っているようだが、そんな彼にロマーノは残念なお知らせがあった。
「残念ながら、ああいう奴は勘で見つけてくるから諦めた方がいいぞコノヤロー」
 スペインを思い出し、ロマーノは肩を竦める。鈍感な男は何故か変な所で勘が鋭く、何処へ隠れても見つけられてしまい、昔も今も逃げ切れた例がない。
 密かに涙を零した木陰も、会えなくて寂しい海辺でも、いつでもスペインはロマーノを見つけ抱き締めてくれる。そんな彼の腕を思い出し表情を曇らせると、ロシアが何処か諦めたような笑みを浮かべた。
「うん、……知ってる。あ、じゃあ、ロマーノ君はスペイン君のストーキングに負けて付き合ってるのかな?」
「ストーキングはされてねーよ! ……たぶん」
 何処からか急に現れるが、犯罪行為は行われていない筈だ。たぶん無い筈、あって欲しくない。後半は祈りのようになった言葉を胸の中で握り潰し、自身に言い聞かせるように拳を握る。
 ロマーノの弱気な語尾に笑ったロシアは、次の町まで一緒にパーティを組んで欲しいと頼んできた。どうせ誰かのせいで暇だし、次の町までならそこまで遠くない。妹の影に怯えるロシアに同情してしまい、ロマーノは了承した。
「どうやったって行き過ぎてるんだからよ、ちょっとは怒った方がいいんじゃねーのか?」
 出てくるモンスターを軽く吹き飛ばすロシアの後ろを歩きながら、ロマーノは一応提案してみる。俺は弟をちゃんと叱ってるぞと兄貴顔すれば、彼は何処か照れたように頬を掻いた。
「うーん、やっぱり兄妹だからね。嫌われたくないっていうのかな……」
 離れて暮らしているからこそ、気を使ってしまう。強く想われれば想われる程、失うのが恐ろしくなる。
 言葉一つで背を向けられてしまうかもしれないという恐怖を、小さな声でぽつりぽつりとロシアは話す。目の前で恐ろしい魔物がぐちゃりと潰れるが、殴りつけた本人は自分の世界に入っているのか完全に無視していた。
 弟と同居しているロマーノには、その言葉はスペインを連想させられる。好きで大切だからこそ言えない気持ち。今日のメールだってそうだ。本当は「でも、会いたい」と言いたかった。失う恐怖に怯えるばかりに、物分りが良くなっていく自分に肩が落ちる。スペインはもっと我侭を言っていいと言うが、付き合う年月が増える分だけ言えなくなっていた。
「そ、そうですかコノヤロー」
 ロマーノの気持ちを引き戻すように、目の前でどんどん大型モンスターが潰されていく。切々と姉と妹への悩みを語るロシアに頷きを返しつつ、ロマーノは敵の攻撃を避けることだけに集中した。一応傷を負ったら回復してやろうと思っていたものの、どんな守備力をしているのかロシアのHPゲージはピクリともしていない。
(恐怖という意味では、似た者兄妹だな)
 ウクライナはぽややんとした感じなのに、どうして下二人は恐ろしいのだろうか。もしや北国の厳しさの影響かと想像し、ロマーノは思わず体を震わせた。自国が暖かい地中海で良かった。
「あ、町が見えてきたね」
 うーん、と背筋を伸ばす動きをし、最後の敵を倒したロシアは笑顔でこちらを振り向く。返り血のエフェクトは消えかけているものの、全身を染めている姿で微笑まれれば画面の向こうの顔は引きつってしまうのは仕方ない。キャラの表情に表れなくて良かったと密かに安堵し、ロマーノは震えを抑えた声で応じた。
「あ、ああ……」
 あの町へ着けばこの謎の恐怖は終わる。それだけを希望に町へ辿り着いた二人を迎えたのは、入り口に仁王立ちしたベラルーシだった。
「!?」
 背後に呪いの文字でも見えそうな程どす黒い何かを背負った美人が、こちらを凄い勢いで睨んできている。頼みのロシアは既にロマーノの背後に逃げこんでおり、大きい体を小さく丸めて震えていた。
「……チャオ」