【ヘタリア・腐】きっと見つかるGGm8!【西ロマ】
首まで真っ赤に染め、ロマーノは恋人の胸に顔を埋める。絶対に顔を上げないと決意した動きは強固で、驚きのあまりスペインが体を起こしてしまってもぴったりと張り付いたままだった。
「いけないなんて、ある訳ないやん」
恥ずかしがり屋ないつもの反応に笑い、スペインはロマーノの背中をあやすようにゆっくりと撫でる。数度撫でて腕の中から緊張感が消えたことを確認すると、そっと頬に手を伸ばし恋人の顔を上げさせた。
「嬉しいわぁ」
溶けるような笑顔で、心の底からの言葉を告げる。その表情と柔らかな声の直撃を受け、ロマーノの頭は恥ずかしさと喜びと愛情で爆発した。
(うわ……うわああああああ!)
たった一言、素直に言葉を出すだけでこんなに喜んで貰える。下りてくるスペインの唇を受け止めながら、ロマーノは感涙してしまった。自分が恋人を喜ばせられたことが嬉しくてたまらない。
「ロマは変な所で聞き分けええから、ほんま嬉しい」
「いつもわがまま、……ぐすっ、言ってるだろうが」
「重要な時ほど言わへんやん」
恋人になっても二人の間にはロマーノが引いた一線があり、どうしてもそこを越えられない。
ここを越えたら嫌われるのではないか。
そんな想像が足を竦ませ、ロマーノはスペインの時間を拘束する事をよしとしなかった。ロシアが話していたように失う事を恐れ、寂しさを飲み込む。オランダやベルギーであれば許されると思うことでも、スペインにだけは出来なかった。
(でも、スペインは笑ってくれた)
まだ恐怖が強いものの、今日勢いで言った言葉はロマーノに勇気を与える。少しだけでも伝えられれば、あんなに喜んで貰えると知り、怯えて震える心が毛布で包まれたような気がした。
「あー、もうっ! あいつらのせいだー!!」
強引に腕で涙を拭き、気恥ずかしさを全部を他人のせいにする。ヘタリアファンタジアで事あるごとにスペインの所在を聞かれたせいだと八つ当たりすれば、スペインはロマーノの額にキスをしながら「それでもええわ」と笑った。
「ロマが俺に会いたいって思ってくれたのなら十分!」
「そんなのいつも……」
喜ばれ安堵した気持ちがするりと心の壁を越えていく。慌てて「思っている」という言葉を飲み込んだが、スペインは耳聡く顔を近づけてきた。
「何? いつも、何?」
「うるせー! 飯冷えるだろうが、放せコノヤロー!」
によによと笑う顔に頭突きを決め、出来上がったスープを皿に盛る。顔を押さえしゃがんでいるスペインを無視しテーブルに並べると、「ロマのケチ~」という恨み言が聞こえた気がした。
「さ、飯食おうぜ」
「ふぁ~い……」
二人一緒にとる食事は少し冷えてしまっていたが、愛する人が傍に居るというだけで気持ちは浮かぶ。食べながら今日ゲーム内であった事を話すと、スペインはロシアとベラルーシの話に笑い、アメリカに微妙な顔をし、スウェーデン達の話をどこか懐かしむような表情で聞いていた。
「で、その騎士さんとは仲良くするん?」
あのキャラの話題は飛ばしたいものの、その後のベルギー達の話をするには避けられない。さらっと流したつもりが、スペインの瞳は笑っていなかった。
「……スペインと会えない時には、手伝うつもりだけど」
もう報酬貰ってるし、と言い訳のように付け足す。逃避するようにフォークでパスタをつついていると、スペインはにっこりと笑って「そうなん」と言うだけだった。
「……」
何やら凄く嫌な予感がする。額に汗が浮かんだ気がして、ロマーノは思わず自分の手を当てた。
別に悪い事はしていない筈。浮気ではないし、ナンパもしていない。手伝う時も時間がある時だけでいいと言っていた。
ちらりとスペインの様子を窺う。顔は笑みを浮かべているが目が笑っておらず、ロマーノは顔を上げられなかった。
「ええんよ、俺はロマーノが楽しければ別に。でも、クエストって人手がある方が助かるやんなぁ?」
「んー、そうかもな」
白銀の狼のボスと戦っていた時も、シーランドが一人増えただけで随分楽になった。あの鎧の性能のせいとも言えるが、攻撃対象が分散されるだけでもかなり助かるだろう。
同意したと同時に、恋人の考えに及ぶ。もしやとロマーノが半目で睨めば、スペインは手にしていたワイングラスにキスをすることで応えた。
(乱入する気かー!)
心の中で白と黒の闇夜の騎士に謝る。何かあったら自分が責任を持って突っ込もうと決め、この話は終了にした。
「俺、まだ仕事あるんやけど……」
食事の片付けをしながら、スペインがこちらを窺うように視線を送ってくる。甘えの見える様子に溜息をつきつつ、ロマーノは顔を背けて答えた。
「どうせ俺の部屋掃除してないんだろ? もう眠いし、お前の部屋で寝るからな」
反論は許さないという顔でキッチンを出ようとする。その腕を取り、スペインは羞恥で赤く染まったロマーノの耳に「早めに終わらせる」と熱い吐息で囁いた。
スペインのベッドに転がり、ロマーノは大きく息を吐く。何だか色々あった一日だったが、充実していたような気もしなくはない。
ゲームで色々な国と遊んだが、結局自分が一番安心するのは、遥か昔から守ってくれていたスペインなのだろう。楽しくても悲しくても彼を思い浮かべてしまうのだ。この想いはもう魂にまで染み付いているのかもしれない。
「早く仕事終えろコノヤロー」
まだ本人を前には言えない言葉を唇に乗せる。離れてしまえば寂しさが込み上げ、同じ屋敷に居るというのに不安になった。悲しい気持ちを振り払うように布団をめくり、ベッドの中央に丸まって眠る。時計の音だけが響く部屋で瞳を閉じれば、ベルギーの言葉が脳裏に浮かんだ。
『うちはロマの味方やで!』
彼女の声が脳内再生され、布団を跳ね上げる。体を起こすと、背中がじんわりと暖かくなった気がした。
オランダとベルギーが、自分の背中を押してくれている。
そんな馬鹿げた想像をしてしまい、ロマーノは笑おうとして失敗した。唇を噛み、ぐっと堪える。目の端に浮かんだ水を腕で拭うと、勢いをつけて寝室を飛び出した。
目指す先はスペインの仕事部屋。飛び込むと同時に「やっぱり寂しいぞコノヤロー!」と叫べば、大切な恋人は両手を広げ柔らかく受け止めてくれた。
END
作品名:【ヘタリア・腐】きっと見つかるGGm8!【西ロマ】 作家名:あやもり