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機動戦士ガンダムRS 第1話 偽りの平和

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宇宙からは、コロニー軍所属の大型艦艇が次々と艦尾に取り付けられた増設ブースターを地上に噴射しながら地球に向かっていった。
これらの艦には、ミノフスキークラフトという擬似的に反重力を発生させて物体を浮遊させる技術が採用されている。
これらによって大型艦艇は、とてつもなくゆっくりとした速度で大気圏に突入して行った。
その結果大気圏突入の際の運動エネルギーが熱エネルギーに変換され宇宙船の前面に非常に強い衝撃波が現れ艦艇全体が非常に高い高温に曝されるのを防いでいる。
(減速4マッハ、角度良好、増設ブースター噴射停止まで28秒。
空力制御開始)
 無線からは、指揮官からの命令が各艦隊に届いていた。
どの艦隊とも問題は、ない。
(地べたにへばりついた化け物に思いっきりきついのをくらわしてやれ)
 指揮官は、各員を鼓舞した。
(暖流層突破。
減速、0.9マッハ。
噴射停止。
姿勢良好。
諸君らに天の加護を。
降下点、座標追尾固定。
さあ、行け)
 まさに「そのとき」は、近づいていた。
(青き清浄なる世界のために。
全艦、180度回頭とともに水平飛行に移行。
攻撃開始)
 その命令とともに各艦からメガ粒子砲、ミサイルと機銃が地表に向かって攻撃された。
それと同時にベースジャバーに乗ったマン・マシーンも出撃していった。
地上からは迎撃にグゥルに乗ったジン、シグーとディンが迎え撃った。
白兵戦になると判断した各艦は、艦砲を中止した。
 白兵戦に突入したが性能差は歴然で次々とジン、シグーやディンが撃墜されていった。
特にマン・マシーンが標準装備とするビーム兵器は、脅威でありジンやシグーが持つ重斬刀はビームサーベルで折られシグーのシールドも貫通されてしまっている。
地上では、ザウートも応戦しているがまったく歯が立っていない。
 実弾兵器で自走リニア榴弾砲、地対空75mmバルカン砲塔システム、ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー、大型砲などが破壊されていった。

           ※

 コズミック・イラ70。
地球とコロニー間の緊張は、一気に本格的武力衝突へと発展した。
その直後に起きた「血のバレンタイ」の悲劇によって戦火は、地球圏全域を巻き込んだ。
誰もが疑わなかった数で勝る地球軍の勝利。
が当初の予測は、大きく裏切られ戦局は疲弊したまま既に11ヶ月が過ぎようとしていた。

           ※

 (南アフリカの難民キャンプでは、慢性的に支援物資が不足しており120万の人々が生命の危機にさらされています)
 ラジオからは、地球での悲惨な現状を伝えている。
しかしここに住む人々は、「自分達には関係なし」といわんばかりの無関心である。
それもそのはずでここヘリオポリス(オーブ連合首長国政府が開発した難民コロニー)は、地球連合政府とコロニー連邦共和国政府が締結した「南極条約」でヘリオポリスへの攻撃を禁止しているために安全に暮らせるのだ。
しかも支援物資も恵まれておりそれほど欲を言わなければ何不自由なく暮らせる。
そしてそれを象徴するかのようにトリィがヘリオポリス内を自由に飛んでいる。
屋根つきの休憩所でキラ・ヤマトが戦争を前線からの生中継を聞きながらノートパソコンのキーボードをたたいている。
するとさっきのトリィがノートパソコンに止まった。
トリィの持ち主は、キラだった。
「キラー!」
 キラが声の方を向いた。
そこにトール・ケーニヒとミリアリア・ハウが立っていた。
「カトー教授がお前のこと探してたぞ」
 トールの言葉にキラは、あきれた表情と同時に(また?)と顔に書いた。
このことから日常茶飯事的な出来事らしい。
すると今度は、ミリアリアが言った。
「『見かけたら、すぐ引っ張って来い』って。なーにー?また何か手伝わされているの?」
 するとキラは、姿勢を正した。
「昨日渡された物もまだ終わってないのに」
 キラは、愚痴ように言った。
「そっか」
 トールが苦労人を労うように言った。
 このありきたりな会話が作る空気もノートパソコンから兵士らしき男性の声で変わった。
トールがノートパソコンを見に近寄ってきた。
「お 新しいニュースか?」
 戦地では、地獄以上の地獄を人々が体験してるにもかかわらず彼らには実に他人事のように聞こえていた。
これが俗に言う「平和ボケ」であろう。
「ああ カオシュンだって」
 キラは、2人が見やすいように最大化をクリックした。
彼らは、「ここは絶対に戦地にならない」と信じてるからこそこのような会話ができるのだろう。
(こちらカオシュン。
ここカオシュンから7キロのところまで激しい戦闘が続いています)
 記者の後ろでは、コロニー軍所属マン・マシーン(ユーピテル)2機が戦闘を続けておりところどころ記者のリポートが聞こえないほど現地では悲鳴が飛び交っている。
「うひょー先週でこれじゃ今頃は、もう落ちちゃってるんじゃないの?」
 このような発言をするのは「戦争の勝利」より「戦争の早急な終結」を願っているからであろう。
「うん」
 キラは、一言言ってノートパソコンを閉じた。
ミリアリアが不安な表情を浮かべた。
「カオシュンなんてオーブのすぐそばじゃない?
大丈夫かしら?」
 オーブとは、「オーブ連合首長国」のことであり地球連合軍に参加していない「永久中立国家」である。
彼らの出身は、この国である。
再びトリィがどこかへ飛んでいった。
まさに自由奔放である。
「まあそれは、心配ないでしょう。
オーブが戦地になることもここが戦地になることもない」
 このときの彼らは、そう思っていた。
いや戦地になるなんて誰も予測できなかった。
「そお?
ならいいけど・・・・」
 キラは、飛んでいくトリィを見ながら幼馴染との別れを思い出していた。

           ※

 桜が舞う桜並木で幼いキラとアスランが向き合っている。
アスランが笑顔でキラに話しかける。
「本当に戦争になるなんてことは、ないよ。
コロニーと地球で」
 約束のようにあのトリィが少年からキラに渡された。
キラの表情は、悲しみでいっぱいだった。
「避難なんて意味無いと思うけど。
キラもそのうち地球へ戻るんだろ?」

             ※

「キラ?」
トールは、ボーっとしているキラを不思議と見て覗き込んできた。
キラは、びっくりして柱に頭をぶつけた。
「何やってるんだ、お前?
さあ行くぞ」
 キラは、頭を押さえながら「ああ」と返事をし後を追いかけた。

             ※

 ヘリオポリス内にマルセイユⅢ世級が1隻入港してきた。
入港後艦長が言葉を発した。
「これでこの船の最後の任務も無事終了だ。
お前達も護衛の任務ご苦労だった。
フラガ大尉、クルーゼ少佐」
 フラガ大尉は、艦長の方を向き直した。
「ええ。
航路何も無く幸いでありました」
 この言葉からこの輸送艦は、よほど大事な荷物を運んだらしい。
「周辺にコロニー艦の動きは?」
 クルーゼ少佐が艦長に質問した。
「3隻トレースしておるが。
なーに港に入ってしまえばコロニー軍も手は、出せんよ」
 艦長の言葉にフラガ大尉は、思わず苦笑いした。
「条約ですか?