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【デジ無印 番外】 危機

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とても長くて、そしてとても短かったあの夏休みの大冒険から一年が過ぎた。
デジタルゲートは、冒険が終わった3ヶ月後くらいから気まぐれに開いたり閉じたりを繰り返して、その度に子供たちがデジタルワールドへ行ったり、デジモンたちがこっちの世界へ来たりと、絆が途絶えることはなかった。
そして、翌年2000年の春にはネットの中にデータを食い荒らす謎の新種デジモン、ディアボロモンが現れて、太一、ヤマト、光子朗、タケルの四人(この時丈は試験に、ミミはハワイへ旅行に、ヒカリは友達の誕生会に行っており、空は太一と喧嘩の真っ最中で戦いに参加しなかった)とパートナーデジモンはディアボロモンを倒すために奮闘し、そしてウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体してオメガモンとなり、危機は去った。
そして、2002年に新しい選ばれし子供たちと新しい冒険が始まることになるまで、平和な時間が続いていくはずだったのだが、実はもうひとつ、これまでにかつてないほどの大きな危機が訪れていた。
それは、太一たちがディアボロモンを倒した約九ヶ月後、2000年冬のことだった。


その日は、雪が降っていた。当然、気温が低く寒い日だったのだが、そんなことはどこ吹く風で雪合戦に興じる子供たちの姿があった。
 「今日こそ決着をつけようぜ。ヤマト」
「ああ、望むところだ!」
そして互いにせっせと雪玉を作り始まる太一とヤマト。その傍らではタケルとヒカリが仲良く雪うさぎを作っていた。まさに平和な冬の光景。しかし、この後かつてないほどの危機が訪れる事を、まだ子供たちは知らなかった。
それから大体一時間後、雪合戦をしていたはずの二人は、いつの間にかただ雪をぶつけ合い雪の中に倒れこみ、もはや何をやっているのかわからない状態に。タケルとヒカリも雪うさぎに飽きたのか、すぐ横で雪合戦を始めている。ただ、よく見るとヒカリが一方的にタケルに雪玉を投げつけている。
「ちょっと、ヒカリちゃん強いよう。」
「えー、タケルくんが弱いのよ。」
「太一、ヒカリ。そろそろ家に上がりなさい。」
声のする方を見ると、そこには太一ママの姿があった。
「はーい。」
「タケル君とヤマト君もうちで温まってらっしゃい。ココアとケーキがあるわよ。」
「はい、ありがとうございます。」
そして四人は太一の部屋に集まり、ココアとケーキを頂いていた。
「パタモン、風邪とかひいていないかな。」
「大丈夫だよ。きっと暖かいところで元気に過ごしているさ。」
「次にゲートが繋がるのはいつだろうな。アグモンたち、元気にしてるかな。」
「早くまたテイルモンに会いたいな。」
この四人が集まると、どうしてもこの話になってしまうもの。最も、ついこの前ゲートが開いてデジモンたちと再会を果たしたばかりなのだが。
そんな話をしていると、突然デジバイスのアラームが鳴った。
「どうしたんだ?」
「デジタルワールドで何かあったのか?」
「お兄ちゃん、見てみようよ。」
「ああ。」
すぐに四人は父親の部屋へ移動し、パソコンの前に座った。予想通り、ゲートが開いている。そして画面にはアグモンがいた。
「太一、大変だ!突然見たこともないデジモンが現れて暴れているんだ!」
「なんだって!?わかった、すぐ行く!」
そして太一は他の選ばれし子供達に連絡を取る。しかし・・・
「あら太一くん。こんにちは。え?光子郎?ごめんなさい。光子郎は今修学旅行へ行っているの。」
「修学旅行!?」
そういえば今日は12月の半ばで、修学旅行シーズンである。太一とヤマトと空も去年京都へ行ってきたばかりだ。しかし、それでは光子郎は呼べない。ということは、同学年であるミミも修学旅行へ行っていることになる。次に丈に連絡をしてみると、塾で留守とのことだった。そして空の家は誰も電話に出なかった(後でわかったことだが、空は学校から帰った後すぐにお母さんと祖母の家に行っていたそうだ)。
選ばれし子供たちといえども普段は普通の小中学生。なかなか八人が集まることは難しい。
「仕方がない。俺たちだけで行こう。」
「うん!」
そして太一、ヤマト、タケル、ヒカリの四人はデジタルワールドへと旅立って行った。
「太一ぃ!」
「ヤマト!」
「ヒカリ!」
「タケルぅ!」
ゲートの向こうではアグモン、ガブモン、パタモン、テイルモンが待っていた。この間会ったばかりだというのに、しばらく再会を喜び合っていた。
「アグモン。暴れている奴がいるって、一体なんなんだ?」
「僕たちにもよくわからないんだ。突然、見たこともないデジモンが現れて暴れだしんたんだ。しかもそのデジモンに挑んでいったほかのデジモンたちはみんな倒されちゃったんだ。」
「なんだって!?それで、倒された他のデジモンたちはどうなったんだ?」
「わからない、でもきっとあいつを倒したら助けられるよ!」
「よしわかった。行こう、みんな!」
「おう!」
そして一行は歩き出す。まるで、デジモンワールドが危機に瀕していることが嘘のような静けさである。
「静かだな。何も起こっていないようだ。」
「でも、デジモンたちの姿がいないよ。」
「あのデジモンが現れてから、皆隠れて過ごすようになったんだ。」
「ひどい。なんでこんなことを・・・」
「ヒカリ・・・」
「大丈夫だ。きっとみんなで力を合わせれば倒せるさ。」
「うん。そうだよね。」
「頑張ろうね。パタモン。」
「うん。任せてよ、タケル!」
その時だった。突然テイルモンが静止の声を上げる。
「止まって!」
「どうしたの?」
「今、何か聞こえた!」
その音は次第に子供たちの耳にも届くようになった。
「何この音?気味が悪い。」
「タケル、そばから離れるなよ。」
「なんか、呻き声みたいだ。」
その時は、なんの前触れもなく唐突に訪れた。後ろの気配に気づき、振り向いたその瞬間、そこにそいつはいた。
その姿をどう形容すればいいだろう。二足立ちした獣のようにも見えるが、それだけでは説明しきれない、言いようの無いおぞましさがあった。サイズはそこまで大きくはないが、ヴェノムヴァンデモンを彷彿とさせるようでもあった。
「こいつが、そうなのか?」
「きっとそうだよ。」
「怖いよ、お兄ちゃん。」
「心配するな、タケル。大丈夫だ。」
「ヤマト!」
「わかった。ガブモン、頼んだぞ!」
「アグモン!」
「よし、太一任せて!」
「パタモン頑張って!」
「うん!」
そして久しぶりにデジバイスから光が放たれる。
「アグモン進化!グレイモン!」
「ガブモン、進化!ガルルモン!」
「パタモン進化ぁあ!エンジェモン!」
そしてテイルモンもそれに続こうとした。ところが、ヒカリが怯えていることに気づいた。
「どうしたんだ。ヒカリ?」
「だめ、あのデジモンは恐ろしいわ。このままじゃ勝てない。」
「恐ろしい?一体何がそんなに恐いんだ?」
「わからないわ。でも今のままじゃ大変なことになる気がするの。」
「・・・そうか。でも、ここであいつを倒さなければデジタルワールドは救われない。大丈夫だ。私たちならきっとできる。」
「・・・うん。わかった。頑張って、テイルモン!」
そして四体の成熟期デジモンは謎のデジモンに挑んでいった。



「ただいま帰りました。お母さん。」