二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

こらぼでほすと 厳命8

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
「あんたさ、クリスマスとか、どうしてた? 」
 食事の時間に、ライルが唐突に口を開いた。それも、いきなりな質問で、ニールは質問を理解するのに、ちょっと時間がかかった。
「どうしてたって? 」
「だから、クリスマスは誰と過ごしてた? 」
「クリスマスに限らず、独りだったよ。・・ああ、まあ、適当に誰かと過ごしてたこともあったけど・・・ミサには出てないな。」
 仕事柄、イベントだから休みというものではなかったから、ニールはクリスマスに何をしていたか、と、尋ねられても思い出せない。酒場か、そういう場所で女性を誘って一夜限りの遊びはしていたが、それだけだ。組織に入って、アレルヤたちと顔を合わせてからは、イベントはやるようにしていた。アレルヤたちもティエリアも刹那も、そういうイベントを体験していないことが判明したからだ。少しぐらい楽しい思い出があっても悪くない、なんて考えていた。それを知っているのが、自分だけだから率先してイベントを提案していた。いずれ、世界から贖罪を求められる仲間だ。その前に、何かしらの楽しい思い出があればいいと思ったからだ。
「刹那はクリスマスにケーキを食べたって言ってたぜ? 」
「ああ、組織に入ってからは、なるべくイベントはするようにしてたんだ。刹那は、サンタクロースすら知らなかったからさ。みんな、家庭でやることを体験したことがなかったから、そういうの教えてやりたくて。」
 受け取りはしないものの、愛情は注いでいたらしい。そう思うと、ライルは、ちょっと腹が立つ。切り分けたローストチキンをがぶりと齧りついて、空いたフォークで兄を指し示す。大変お行儀の悪い態度だが、ニールのほうは気にしていない。小首を傾げて、ライルの言葉の続きを勧めてくれる。
「俺はな、兄さん。クリスマスに毎年、天涯孤独だって感じてたんだ。・・・・あんたみたいに擬似家族を楽しむ余裕はなかった。」
 ハイスクールも大学も寮に入っていたライルにとって、一番孤独だったのはクリスマス休暇だった。クリスマスは、基本的に家族で過ごすものだ。親友や友達が毎年、家に招待してくれたので、寮で孤独に浸っていたわけではない。 ただ、招待してもらった家で、そこの家族が集まって楽しそうに会話しているのを見て、自分には、もう、この光景は作れないんだと痛いほどに感じたのだ。額縁の中に見える景色だった。そこには、ライルは家族でないから入れない。退屈させないように、友人の家族たちが相手をしてくれても、それは家族としてではない。あくまで、客としてだ。そう思うと、本当に家族は失ったのだと、ひしひしと感じて、クリスマスは苦手なイベントになってしまった。
「俺は、どこへ行っても客なんだ。それが、すごく寂しくってさ。」
 遣り切れなかったんだ、と、自嘲してスープを口に運ぶ。普段は、そんなこと感じないのに、家族でやるイベントの時だけは、寂しかった。それらを滔々と説明すると、実兄は食事の手を止めて黙ってライルの口元を見ていた。
「だから、あんたは、どうしてたのかなって思った。」
「・・・組織に入るまでは何もしなかった・・・・」
「そうか、じゃあ、俺のほうがマシだな。」
「そんなこと、考えたこともなかったよ。・・・・というか考えること自体を放棄してたんだろうな。」
「放棄されるほうは、たまったもんじゃないんだが? 」
「そう言われてもな。おまえとは、絶対に逢わないと決めてたからさ。」
 ライルに逢ったら、たぶん心が折れていただろう。一時期は眠れなくて、ドラッグを使っていたほどだ。バッドトリップをした時は最悪だった。何度も何度も、あの光景を見せられた。組織に誘われていなかったら、あのまま溺れていたかもしれない。組織では、毎日、メディカルチェックを受けていたから、ドラッグを使うことはできなかったのもある。それで、すっかりクスリは抜けた。家族がいないことなんて考えから外していた。そうしないと、とても生きていけなかった。
 組織に誘われて訓練を受けてからは、肉体的な疲労から死んだように眠っていたし、マイスターに確定してから、アレルヤたちとティエリアと出会って、いろいろと世話をしているうちに気にせず眠れるようになった。刹那が同室になった時は、ゆっくりと目を閉じるだけで眠りに落ちていけた。そう思うと、マイスターたちは精神安定剤のような効果があったらしい。そこまでのことは、ライルに言えないから口元を歪めて誤魔化した。ライルの代わりになっていたのだから。
「あんた、本当にバカなんだな。」
「それ、三蔵さんにも言われてるよ。」
「ちっっ、また二番煎じかよ。」
「バカだから気になるんだとさ。まあ、三蔵さんには、いろいろと世話をかけてる。」
「傍目には、あんたが世話を焼きまくってるようにしか見えないぜ? 」
「そうでもない。二人の時は泣き言垂れてることが多いんだ。愚痴ってることもあるし・・・・でも、聞いてくれるだけで、ちょっと楽になる。トダカさんも聞いてくれるな。・・・・再始動の時期は、酷かったと思う。」
 坊主もトダカも、聞いてくれるだけで、どうにかしてくれたわけではない。ただ聞いて、肯定してくれるだけだが、ニールには、それだけでも助かった。誰にも頼れない生活をしていたら、そんなことはできないことだからだ。『吉祥富貴』に所属が代わって、愚痴が言える相手が出来た。お陰で、どうにか再始動の恐怖も乗り切れた。
「・・・俺も、あんたとは逢えないんだと思ってた。俺との縁なんて切ったんだろうと思ってたからさ。・・・・でも、きっちり仕送りだけはあって、どうしてるのか、とは考えてはいたんだ。」
「それぐらいしかしてやれなくて、ごめんな? おまえに不自由させたくなくて・・・それだけが、俺の生き甲斐みたいなもんだった。」
「でも、俺のことは心配してくれなかったんだよな。」
「・・・そうだろうな。」
「薄情者。」
「違いない。」
 嘘をつけ、と、内心でライルはツッコミだ。仕送りはライルが就職してからも延々と続いていた。最後の爆弾振込みまで、かなりの金額の仕送りを受けていたのだ。年齢的に必要でなくなっていたのに、送り続けてくれたのは、ライルのことを心配してのことだ。それなのに、ライルが非難しても頷いて謝罪してくれる。そんなことはない、と、言って欲しいのに、そうは言えないのが、ニールの壊れた部分だ。与えて与えられての遣り取りを否定していたから、ライルに対しても、ライルから投げられたものは受け取らない。ここで怒鳴っても、兄には意味がわからないはずだ。
「兄さん、愛してるよ? 」
「はあ? 」
「俺は兄さんを家族として愛してる。あんたも、俺のことを愛してくれるといいと思うんで、時折、確認しておくことにする。」
「話の繋がりが見えないんだけど? 俺は、おまえのことを家族として愛してるよ。なんで、確認する必要があるんだ? 当たり前だろ? 」
「まあ、そうなんだけど、なんとなく言いたくなった。」
作品名:こらぼでほすと 厳命8 作家名:篠義