東方南十字星 the SouthernCross Wars五
「できれば今日、と言いたい所だけど、彼らも忙しいでしょうし、明日と明後日にしましょう。場所は、次に会う時までには考えておくわ」
「わかりました。ちゃんと伝えておきますので」
紫は一言お願いねと残して合意した。
PM2:30分
「以上です」
「模擬戦かぁ・・・・・・・」
彼らは今、人里の案内を受けつつ、羽田の報告に耳を傾けている。
「別に構わんが、場所は早く教えてもらわないと後で面倒なんだが」
「教えてくれなかったんですよ」
「ちょっこし胡散臭い女やな」
吉本がぼやく。
岡島は雄一案内人である『上白沢 慧音』の話を真剣に聞いている。
「それで、ここが私が教師をしている寺子屋だ。今日の授業はもう終わってるから、今はみんな帰って遊んでいるか家の手伝いだな」
「やはりそろばんや習字の練習を?」
「ああ、それはもちろん、国語と数学、場合によっては理科に英語、それ以外の教科も少し挟んでいる」
岡島はその名前からは想像できないほどの内容に少し感心していた。
一通り廻り終えると、慧音は大通りにある団子屋に四人を連れてきた。ここ結構美味いんだぞ
と一言述べて。
適当に店主に頼み、五人は少し小さめのテーブルに腰掛ける。
その後吉本が頬張って喉に詰まらせて羽田が無視したり、岡島がむせて井野村の顔面に茶をぶちまけるなどのハプニング(?)があった。
現在慧音と別れた四人は帰還中。ついてない岡島は犬の尻尾をふんずけてしまったために追いかけ回された。
なんやかんやありようやく用意された新居へたどり着いた一行。
羽田は家の中を見てくると言いあちこち探索しだした。
残された三人は現在羽田の持ってきたメモ帳とにらめっこしている。
なぜか三人とも彼の書いたどうでもいい一文を見つめていた。
内容は以下の通り。
『P.Sお茶うまし』
「・・・・・・・・・なんやこれ?」
「知るか」
「知らん」
その後井野村は戻ってきた羽田の頭を吉本から借りたハリセンで一発殴った。
スパァァァァン!と乾いた音が部屋中にこだま・・・・・・・・・・・はしなかったけど響いた。
改めて今後について話し合う。
「模擬戦、といっても装備はいつもどうり、実弾の使用も場合によっては許可するとの事です」
「たしか妖怪も相手には含まれてるんだよな?」
「はい。ですが集団でかかってくるような並の妖怪は相手には入れてないそうです。せいぜい大妖怪のトップレベルが数人のようで」
「ふ~ん・・・・・・・・・・・ん?だいようかい?」
「知ってると思いますがかなりの年月を生き絶大な力を持つ妖怪の最強種です。肉弾戦以外に弾幕を展開することにも長けています。ここは井野村さんと岡島さんが特に活躍できる場ですね」
「ちょい待ち。オレはたしかに重装だけどもな、大阪人ならどんな修羅場も乗り越えられるっつー事忘れたらアカンで」
吉本が誇らしげに自慢する。が、今回は皆肯定の意を示したようだ。
「そう来なくちゃ」
「さすがだな」
「んじゃ、まかした」
岡島が妙な事を言ったが気にしてはいけない。
そしてなぜこうも彼らが妖怪と言う単語に何も違和感を感じないのか。
普通の人間なら不思議がり、どのようなものか知ってしまえばたちまち戦意喪失である。
が、彼らはビクリともしない。理由は簡単、”慣れている”からだ。
だが決して今まで妖怪と遭遇したわけではない。(森にいたやつはともかくとして・・・・・)
それは四人が傭兵だからであろう。一度雇われればどのような依頼でも確実にこなす、その肉体的にも精神的にも強い彼らだからこそ平気でいられ、むしろわくわくしているようにも見える。
自分達の力をある程度実感できるようになれば、それはそれで士気の向上にもつながる。
そして吉本のような自身がつく。
そう。以上の事からも分かるように、彼らの本当の武器は他でもない「プライド」だ。
まだ語り足らないかもしれないが総合するとこうなのだ。
絶対に敵に後ろを見せない、最後まで戦い通す、これが揺らいだことなど今まで一度もなかった。
そして「撤退」と言う言葉が浮かんだとしても、実行に移す前にまず己のプライドが許さない。
そんな彼らだからこそ、今まで傭兵として活動してこれたのだ。(まぁ、金銭的な問題でレーサーやってたけども・・・・・・)
きっと彼らなら、妖怪相手でも決して臆するようなことは絶対にない。
・・・・・・・・・事も無いことを、彼らはもう少し後で知ることとなる。
模擬戦という名の作戦(ミッション)開始まで、残り約15時間。