零崎空識の人間パーティー 26話-29話
<第二十六話 電話>
「ルーンルーンルーンー♪」
新しいサーベルを手に入れ上機嫌な空識は、鼻歌交じりで夜の街を闊歩していた。
「やっぱり腰にこれがないと、一応はサーベル使いの殺人鬼って設定なんだしー」
いろいろな意味で物騒なことを呟いた空識だったが、人通りは少なく聞いてるような人は幸いなことにいなかった。
「一番いい装備もしたところで、お仕事の続きでもしましょうかー。嫌だけどー」
さっきまでの上機嫌が雲散霧消しように肩を落とした、空識の腰のところが小刻みに震えた。
別にサーベルに秘められし魔が騒ぎ出した、という展開ではなく、サーベルを差している方とは逆にあるポケットにしまっていた携帯に着信が入ったようだ。
哀川さんかな?
そう思いながら、携帯を開き液晶を見ると、そこには何桁かの数字と『精神崩壊』の四文字が並んでいた。
「……まあー。普通にでるか」
23秒液晶を凝視した空識は、携帯を耳からなぜか離して着信のボタンを押した。
「ハロぉォーー!! 空識くんーー!! 元気にしているかなーー!!?」
十分に離しているはずだが、それでもやかましいと感じる女性と言うにはまだ早い女の子のテンションが高い声が聞こえてきた。
携帯からの声が鳴りやまると、空識は恐る恐るといった感じにゆっくりと携帯を通話する際のベストポジションに移動させた。
「……いつも言ってるけどー。 最初だけマックステンションは止めてほしいなー。 心臓に悪いんだからー」
「そうは言われても仕方がないんだけど、そういうルールだし」
携帯からさっきより格段に落ち着いた少女の声が聞こえてきた。
「ルールは破るためにあるんだー!」
「それは違う、ルールは食べるためにあるんだよ、空識くん」
「えっ!? ルールって食材なのー!?」
「ちなみに生で味噌をつけるのがおススメ」
「しかも、きゅうり的なものなのー!?」
会話の感じから空識と電話の少女はかなり仲が良いようである。
「――それはどうでもいいとして、用はなんなの『精神崩壊(マッドミュージカル)』さんー?」
溜息混じりに言う空識に少女は怒るように返した。
「その名で呼ばないでほしーな、空識くん。私には零崎白織(ぜろざきしらおり)というちゃんとした名前があるんだし」
「はいはい、それは悪ーござんしたー」
「悪いと思ってないでしょ、その態度。――まあいいや空識くんだし」
「なんか諦め交じりで言われたが、それは俺のほうだからねー!」
「それでなんでTELしたかだっけ?」
(ナチュラルに話し無視されたー)
心の中で叫んだが話を進めるため、空識は我慢した。
「そうだよー。 それでこの通話の目的はなんだー?」
「いやね私の空識くんレーダーに反応があってね。 空識くん今私の家に近いでしょ?」
「二山越えなければならない距離を近いと定義するなら近いなー」
「それじゃ私の家によってよ」
(こいつには嫌味が聞かないのか!?)
「それじゃ即刻即座に最高スピードで来いよ。 それじゃあねー」
空識が驚愕に襲われている間に電話の相手――零崎白織は電話を切った。
零崎白織。
彼女の説明は今さっき立った『お家訪れフラグ』が回収されたところで詳しく説明しよう。
今はそれどころではないのだから。
「おいちょっとー! ――まあいいや、家に寄るぐらいー……」
携帯をポケットにしまおうとした空識だったが、
「ッ!?」
何か反応したように反射的にそれを投げた。
手を離れてすぐ携帯に深々とクナイが突き刺さった。
そしてクナイと一体化してアスファルトの地面に落ちた。
「今のに反応出来るとは見事とですね」
クナイが来た方向を見ると、さっきまでは誰もいなっかったはずのただの壁しかない行き止まりだったはずのところに、異様に袖が長く地面に着くほどの服に身を包んだファンシーなプリントがされた帽子をかぶった、二十代前半ぐらいの女が立っていた。
「復讐相手を褒めるとは、だめですよ三夏(みなつ)さん」
後ろから声がして振り向くと、そこに同じく異様に袖が長く地面に着くほどの服に身を包んで眼鏡をかけた女より少し年上ぐらいの男が立っていた。
「うるさいな、二秋(にあき)兄さん。そんなの気にすんなよ、めんどくさいなー」
「うるさいなではないですよ。すこし口を慎みなさい三夏さん」
そんな二人の口論を聞きながら、空識はサーベルを抜いた。
「ちょっとフラグ回収に遅れそうだな……」
<第二十七話 火ぶた>
「申し遅れました、零崎モドキさん。私は蓬生二秋と言う者です」
「同じく蓬生三夏だ、クソ殺人鬼」
二人は、空識に己の名を名乗った。
「それでアンタがたは何の目的があるんですかー? 復讐とか言ってたけど、それがホントの目的じゃないですよねー?」
空識はサーベルを、これ見よがしとばかりに挑発するようにバトンのように回した。
そう平生を装っていたが、
(『零崎モドキ』ねぇー。こいつらはそこまで情報を持っているのか。ちょっとやばいかな)
と考えていた。
そんな空識の不安に気付かず、ゆったりとした口調で笑みをこぼしながら二秋は言う。
「聡明な方ですね、そこまでお気づきになるとは。 まあ、わざわざ伝える意味は無いのですが……。 一応答えてあげましょう」
そこで二秋はどこかの二枚目俳優がするように優雅に肩をすくめた。
「私たちの本当の目的、それは簡単です」
そう言って二秋は懐から小さなピン球ぐらいの大きさの、なにか包帯のようなものに包まれた物を取り出した。
「変体刀集めの支障である、あなたを殺すことです。 復讐はついでですね」
(予想はしていたがやっぱり蓬生のところにも変体刀集めの依頼が来ていたんだな。 その依頼者がだれかとかは考えても予想はつかないから止めるとして。 つまりはこのイベントは、哀川さんに巻き込まれた影響で入ったルートと言うわけか……。 まじで、いらんイベントを呼ぶなあの人は)
空識の中に、怒りの対象にやり場がないというか、殺り用がない怒りが湧いてきた。
「……まあいいやー。 この頃、殺すのけっこう我慢してきたしー。 豪快に贅沢に容赦もなく遠慮もなく汚く乱雑に巻き散らす、零崎を開催してやるよー」
そう言って空識はサーベルの回転を止め戦闘態勢に入った。
「けっ! 殺れるもんならやってみろよ!! クソ殺人鬼」
三秋は先ほど携帯を絶命させた物と同じ形状のクナイを構えた。
「たく、三夏さんは本当に口が悪いのですから。 ……けど同意見です」
そして、二秋は手に持っていた球を投げ、同じく三夏も同時に投擲した。
戦いの火蓋は落とされたように、そこにいた者はみな思っていた。
しかい実はまだ完全には落とされてはいなかったのであった……。
<第二十八話 嫌な>
「本当に面倒だなー」
そう言いながら空識は、機能を停止した携帯を足で蹴り上げ、サーベルの持ち手部分である衛拳で、携帯を砕いた。
砕かれ粉々になった携帯は二秋が投げた小さな球に当たり、そして爆発が起こった。
「やっぱり爆弾だったかー。まあ、殺傷能力は低そうだけどー」
三夏のクナイを叩き落としながら空識は言った。
「まだまだだぜぇ!!」
「ルーンルーンルーンー♪」
新しいサーベルを手に入れ上機嫌な空識は、鼻歌交じりで夜の街を闊歩していた。
「やっぱり腰にこれがないと、一応はサーベル使いの殺人鬼って設定なんだしー」
いろいろな意味で物騒なことを呟いた空識だったが、人通りは少なく聞いてるような人は幸いなことにいなかった。
「一番いい装備もしたところで、お仕事の続きでもしましょうかー。嫌だけどー」
さっきまでの上機嫌が雲散霧消しように肩を落とした、空識の腰のところが小刻みに震えた。
別にサーベルに秘められし魔が騒ぎ出した、という展開ではなく、サーベルを差している方とは逆にあるポケットにしまっていた携帯に着信が入ったようだ。
哀川さんかな?
そう思いながら、携帯を開き液晶を見ると、そこには何桁かの数字と『精神崩壊』の四文字が並んでいた。
「……まあー。普通にでるか」
23秒液晶を凝視した空識は、携帯を耳からなぜか離して着信のボタンを押した。
「ハロぉォーー!! 空識くんーー!! 元気にしているかなーー!!?」
十分に離しているはずだが、それでもやかましいと感じる女性と言うにはまだ早い女の子のテンションが高い声が聞こえてきた。
携帯からの声が鳴りやまると、空識は恐る恐るといった感じにゆっくりと携帯を通話する際のベストポジションに移動させた。
「……いつも言ってるけどー。 最初だけマックステンションは止めてほしいなー。 心臓に悪いんだからー」
「そうは言われても仕方がないんだけど、そういうルールだし」
携帯からさっきより格段に落ち着いた少女の声が聞こえてきた。
「ルールは破るためにあるんだー!」
「それは違う、ルールは食べるためにあるんだよ、空識くん」
「えっ!? ルールって食材なのー!?」
「ちなみに生で味噌をつけるのがおススメ」
「しかも、きゅうり的なものなのー!?」
会話の感じから空識と電話の少女はかなり仲が良いようである。
「――それはどうでもいいとして、用はなんなの『精神崩壊(マッドミュージカル)』さんー?」
溜息混じりに言う空識に少女は怒るように返した。
「その名で呼ばないでほしーな、空識くん。私には零崎白織(ぜろざきしらおり)というちゃんとした名前があるんだし」
「はいはい、それは悪ーござんしたー」
「悪いと思ってないでしょ、その態度。――まあいいや空識くんだし」
「なんか諦め交じりで言われたが、それは俺のほうだからねー!」
「それでなんでTELしたかだっけ?」
(ナチュラルに話し無視されたー)
心の中で叫んだが話を進めるため、空識は我慢した。
「そうだよー。 それでこの通話の目的はなんだー?」
「いやね私の空識くんレーダーに反応があってね。 空識くん今私の家に近いでしょ?」
「二山越えなければならない距離を近いと定義するなら近いなー」
「それじゃ私の家によってよ」
(こいつには嫌味が聞かないのか!?)
「それじゃ即刻即座に最高スピードで来いよ。 それじゃあねー」
空識が驚愕に襲われている間に電話の相手――零崎白織は電話を切った。
零崎白織。
彼女の説明は今さっき立った『お家訪れフラグ』が回収されたところで詳しく説明しよう。
今はそれどころではないのだから。
「おいちょっとー! ――まあいいや、家に寄るぐらいー……」
携帯をポケットにしまおうとした空識だったが、
「ッ!?」
何か反応したように反射的にそれを投げた。
手を離れてすぐ携帯に深々とクナイが突き刺さった。
そしてクナイと一体化してアスファルトの地面に落ちた。
「今のに反応出来るとは見事とですね」
クナイが来た方向を見ると、さっきまでは誰もいなっかったはずのただの壁しかない行き止まりだったはずのところに、異様に袖が長く地面に着くほどの服に身を包んだファンシーなプリントがされた帽子をかぶった、二十代前半ぐらいの女が立っていた。
「復讐相手を褒めるとは、だめですよ三夏(みなつ)さん」
後ろから声がして振り向くと、そこに同じく異様に袖が長く地面に着くほどの服に身を包んで眼鏡をかけた女より少し年上ぐらいの男が立っていた。
「うるさいな、二秋(にあき)兄さん。そんなの気にすんなよ、めんどくさいなー」
「うるさいなではないですよ。すこし口を慎みなさい三夏さん」
そんな二人の口論を聞きながら、空識はサーベルを抜いた。
「ちょっとフラグ回収に遅れそうだな……」
<第二十七話 火ぶた>
「申し遅れました、零崎モドキさん。私は蓬生二秋と言う者です」
「同じく蓬生三夏だ、クソ殺人鬼」
二人は、空識に己の名を名乗った。
「それでアンタがたは何の目的があるんですかー? 復讐とか言ってたけど、それがホントの目的じゃないですよねー?」
空識はサーベルを、これ見よがしとばかりに挑発するようにバトンのように回した。
そう平生を装っていたが、
(『零崎モドキ』ねぇー。こいつらはそこまで情報を持っているのか。ちょっとやばいかな)
と考えていた。
そんな空識の不安に気付かず、ゆったりとした口調で笑みをこぼしながら二秋は言う。
「聡明な方ですね、そこまでお気づきになるとは。 まあ、わざわざ伝える意味は無いのですが……。 一応答えてあげましょう」
そこで二秋はどこかの二枚目俳優がするように優雅に肩をすくめた。
「私たちの本当の目的、それは簡単です」
そう言って二秋は懐から小さなピン球ぐらいの大きさの、なにか包帯のようなものに包まれた物を取り出した。
「変体刀集めの支障である、あなたを殺すことです。 復讐はついでですね」
(予想はしていたがやっぱり蓬生のところにも変体刀集めの依頼が来ていたんだな。 その依頼者がだれかとかは考えても予想はつかないから止めるとして。 つまりはこのイベントは、哀川さんに巻き込まれた影響で入ったルートと言うわけか……。 まじで、いらんイベントを呼ぶなあの人は)
空識の中に、怒りの対象にやり場がないというか、殺り用がない怒りが湧いてきた。
「……まあいいやー。 この頃、殺すのけっこう我慢してきたしー。 豪快に贅沢に容赦もなく遠慮もなく汚く乱雑に巻き散らす、零崎を開催してやるよー」
そう言って空識はサーベルの回転を止め戦闘態勢に入った。
「けっ! 殺れるもんならやってみろよ!! クソ殺人鬼」
三秋は先ほど携帯を絶命させた物と同じ形状のクナイを構えた。
「たく、三夏さんは本当に口が悪いのですから。 ……けど同意見です」
そして、二秋は手に持っていた球を投げ、同じく三夏も同時に投擲した。
戦いの火蓋は落とされたように、そこにいた者はみな思っていた。
しかい実はまだ完全には落とされてはいなかったのであった……。
<第二十八話 嫌な>
「本当に面倒だなー」
そう言いながら空識は、機能を停止した携帯を足で蹴り上げ、サーベルの持ち手部分である衛拳で、携帯を砕いた。
砕かれ粉々になった携帯は二秋が投げた小さな球に当たり、そして爆発が起こった。
「やっぱり爆弾だったかー。まあ、殺傷能力は低そうだけどー」
三夏のクナイを叩き落としながら空識は言った。
「まだまだだぜぇ!!」
作品名:零崎空識の人間パーティー 26話-29話 作家名:okurairi