零崎空識の人間パーティー ２６話－２９話
三夏は空識に向かって走り、両脇にある壁で三角跳びの要領で空識の頭上を超えた。
「喰らえ！！」
長すぎる袖から大量のクナイが現れ空識に襲い掛った。
「やばー！」
『地抜き応用後ろ跳び』で避けようとした空識だったが、
「そうはさせませんよ」
後方で連続して爆発が起こった。
「山なりで爆弾を投げていたのかー！」
仕方がなく空識は『刀流し』を編用しながら、全てのクナイに対応した。
「さすが、一春兄さんと四冬を倒したほどはありますね」
小さな爆弾をお手玉のようにジャグリングをしながら、二秋は言った。
「なに敵を褒めてんだよ二秋兄さん。……ってさっきウチに同じこと言っていなかったか？」
二秋のそばに降りた三夏はクナイを構えながら言った。
「そうでしたっけ？」
「そうでございますよ！！ たく、二秋兄さんは自分の事ばっか棚に上げて」
余裕といった感じに二人はじゃれる様に口論をしていた。
そんな二人を見ながら空識は思った。
（なんというか……。俺の前なのに、こうやって余裕そうにされると――）
「殺したくなってくるかい？」
その声は空識の声でも二秋の声でも三夏の声でもなく、空識の後方からした。
その声の主を真正面から見ることができる二秋と三夏はさっきまでの余裕はあたかたもなく消え去り、唖然と恐怖の色で塗り固められた表情に変わって、唇をワナワナと震わせていた。
空識は声の主を見るためには振り返らなければいけなかったが、その必要はなかった。
その声には聞き覚えがあった。
と言うよりもう聞きたくなかった声だった。
「おいおいまじかよー、どんだけエンカウント率が高いんだよー」
自分の不幸を嘆くように空識は溜息をつきながら振り向き、声の主の名を言った。
「またお会いしましたねー。 零崎双識さんー」
＜第二十九話 再会（再開）＞
「本当に間が悪いなー。 前兆なしのイベントとかマジ勘弁ですよーー。俺って神様にでも嫌われてんのかな―」
溜息をつきながらも空識は、サーベルを双識に向けた。
「それは私のセリフだよ空識君。人識には会えないのにキミとばっか合ってしまうんだから」
はぁー、と双識は肩をすくめ、大仰に溜息をついた。
その姿は二秋とは違いどこか演技臭く、似合っていなかった。
「だったｒ……まあいいや、なんかこの前の焼きまわしの話の流れになりそうだしー。 さっさと起きたイベントは消化しないとなー！！」
身体を低くし一気に空識は双識に向かって駆けた。
『メシッ！！』と猛烈な加速により、アスファルトの地面が砕け、一瞬にして空識は双識との間合いを詰めた。
《一刀・一点突き》
猛烈な勢いをそのまま加えた空識の突きだったが、双識の背広の裏から取り出した鋏のような凶器『自殺志願(マインドレンデル)』でうまく後ろに捌いた。
「攻撃が単調だよ、空識君」
がら空きになった腹に、双識は長い腕を鞭のように振った。
「ぐっー！！」
空識は元いた場所よりさらに後ろまで、ブッ飛ばさた。
「なっ！？」
双識の登場により茫然としていた二秋と三夏だったが、足もとに空識が転がってきたことにより意識を取り戻した。
「て、てっめぇ！！」
焦りながらも三夏はクナイを手に構えた。
「あぶねっー！」
空識は倒れた状態のまま、三夏の手を蹴り上げ、クナイを弾きあげた。 そのまま空識は腕の力だけで跳ね起き、二秋と三夏の後ろに跳んだ。
今の位置は三夏と二秋を挟んで、空識と双識が向かい合うようなかんじである。
「やっべえーよ二秋兄さん！ 《二十人目の地獄》とかさすがに大物すぎるだろ」
焦燥するように三夏は二秋に話しかける。
「落ち着いてください三夏さん！ 《二十人目の地獄》さんの相手は私がしますから三夏さんは早く零崎まがいさんを！」
そう返して、二秋と三夏はそれぞれの敵と向かい合った。
「『零崎まがい』ねぇ、言い得て妙だね、空識君」
可笑しそうに双識は『自殺志願(マインドレンデル)』を指で回しながら笑った。
「若干ムカつきますよ双識さんー。 ――まあ実際、けっこう合っている思うんですけどねー」
空識も可笑しそうに笑いサーベルを構えた。
「それでは」「うじゃー」
「「零崎を」」
「始めよう」「開催しようー」
作品名：零崎空識の人間パーティー ２６話－２９話 作家名：okurairi