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こらぼでほすと 厳命10

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ロックオンが戻って来るという連絡が入った。予定通りだから、これといって問題はないのだろう。ダブルオーとオーライザーのマッチングをやりつつ、刹那は、ほっとする。何もないということは、おかんも無事だと言うことだからだ。
「そろそろ、タイムリミットだ、キラ。」
 ハイネが、ダブルオーのコクピットに乗り込んでいるキラに声をかける。完成まで手伝いたいところだが、プラントでの滞在予定がギリギリになってきた。そろそろ戻らなければならない。
「もうちょっと手伝えると思ってたんだけどなあ。」
「いや、随分と進んだ。感謝する、キラ。」
 コクピットには刹那も居る。刹那の機体だから、刹那の生体認証がないと操作出来ない。タンタカタタターンとキーボードを打ち終わると区切りまで完成だ。くるりと背後の刹那に振り向く。
「刹那、ママのほうは僕が保証する。・・・八戒さんが新しい漢方薬で治療してくれているから、もうダウンすることはない。」
「ああ。」
「ママが飲んでいる漢方薬は、特別製だからね。」
「そうらしいな。」
 そろそろ、教えてもいいだろう。刹那もイノベイターに変化したのだから、世界が人間だけではないことも受け入れられる、と、キラは話を切り出す。
「きみに、ひとつ、教えておくね。僕らも、人間としては特別製だけど、悟空たちも特別製なんだ。・・・悟空たちは人間じゃない。神仙界というところに所属してて、悟空は神様なんだ。」
「・・・は?・・・」
「僕らが信仰するような神様とは、ちょっと違うけど。人間ではない。以前、三蔵さんの上司が遊びに来ただろ? あの人たちも神様枠の人たちで、あちらのクスリは、人間が作るものとは、まったく違う強力なものなんだ。ただし、人間に飲ませるのは禁止されている。本来は、不干渉でなければならないんだって。でも、悟空のおかんとして認められたから、ママには使えるってことになってる。もし、ママが、今のクスリでも危なかったら、もっと強力なのを用意してくれると思う。だから、大丈夫。」
 というか、身内認定しれてくれたから、ママは、あちらの関係者ということになって漢方薬が使えるようになっている。かなり信じ難い話のはずだが、キラは世間話でもするような気楽さで口にする。天然電波に、真面目さなんて求めてはいけないのは、刹那も理解しているから驚きはするが、素直に聞く。
「神様? 神はいないはずだ、キラ。」
「もちろん、信仰されているような神様は存在しないと思う。ある意味、異次元に存在する人類以外の生物って言ったほうがいいかもね。」
 酷い言われ様だと、どこぞの元帥様が聞いたら嘆くだろう。世界には、人間だけが存在しているわけではない。生物と呼ばれるものには、人外というものもあるのだ。妖怪を生物という括りに入れられるか、どうかは疑問だが。
「僕らみたいなもの? と思ってればいいかな。ということだから、ダブルオーの完成のために、刹那が身体を壊すような無茶はしないでね? そんなことしたら、ママに告げ口して叱ってもらうから。」
「確かに、俺も人類とは少し違うらしいが・・・・ニールも変化したのか? 」
「ううん、今のところは人間のまま。ちなみに三蔵さんもナチュラルに人間だったりするよ? 」
「悟空だけなのか? 」
「ううん、八戒さんと悟浄さん、それから爾燕さんと紅が、そっちの関係者。だから、MS関連には参加してもらえないんだ。一応、不干渉たからね。」
「今のところって・・・キラ。」
「えーっとね、三蔵さんが、悟空たちと同じものに変化することになったら、もれなくママも変化させられるってこと。」
「ニールは神になるのか? 」
「異次元生物になるってほうが近いかな。」
 それは、キラたちがプラントに移住する頃の話だ。数年は先になる。まずは、地球に恒久的平和を確立させなければならない。その頃には、刹那たちの組織も落着いているだろう。たぶん、悟空は、ニールと刹那の繋がりを断つようなことはしない。何かしらの接触が出来るように考えてくれるはずだ。神仙界ではなくて、世界のどこかで刹那が逢えると思う、と、キラは説明する。
「とりあえず、そういうことだから。・・・でも、これは、他の人にはオフレコでね? 」
「了解した。」
「今月の末のイベントには、ちょっとサプライズがあるんだ。・・・そっちのほうもよろしく? 」
「そちらも了解している。・・・・キラのお陰で、なんとかなりそうだ。感謝する。」
 キラが数日、刹那の手伝いをしてくれて予定より、かなり進捗度が増した。年末になりそうだったが、今月の末には、なんとかなりそうだ、と、刹那は礼を言う。本来、『吉祥富貴』は、戦争には手を貸さない。表向きには永世中立という立場だが、それを無理に曲げて手伝いに来てくれた。兎にも角にも、ダブルオーを完成させなければ、ニールの生死に関わるからだ。
「僕にとっても、大切なママだもん。・・・これが終わったら、みんなで騒ごうね? 刹那。春ぐらいに、カガリの別荘へ行こう。」
「そうだな。」
「じゃあ、帰る。ママに伝言は? 」
「大人しくしていろ、と、伝えてくれ。」
「あはははは・・・・りょうかーいっっ。」
 コクピットから立ち上がると、キラは、ポンッと外へ飛び出す。低重力だから、そのまま緩々とダブルオーから降下していく。俄かには信じられない話だが、キラが冗談に、そんなことを言うとは思えない。つまり、それは真実だと言うことだ。

・・・俺のおかんは、スーパーコーディネーターとイノベーターと神様のおかんというわけか・・・・・

 特別製の生き物ばかりというわけではないが、それでも珍しい陣容だろう。それも、おかんの人柄によるものだと思うと、妙に納得できる。なんせ、刹那自身が、出会った頃から特殊な生き物だった自覚はあるからだ。野生の獣と似たようなものだったのに、ニールは諦めず、慌てず、じっくりと相手をしてくれた。さらに、普通の家庭でやるようなことも教えてくれて、人間らしくしてくれたのは、ニールだった。その根気強さは、今から考えると、刹那が呆れるほどだ。よく見捨てずに世話してくれたものだと思う。
 悟空が神様だと言うなら、それもよかろう。それで、ニールを守ってくれるのなら、何も心配することはない。目に見えない信仰の対象である神様より分かり易い。



 キラがプラントへ戻ってから、ロックオンが戻って来た。おかんからの差し入れがあるから、ブリーフィングルームに集まれ、とか連絡して来た。
「じゃあ、ハロ、よろしくな? 」
「マカサレテ、マカサレテ。」
 ブリーフィングルームに、マイスターとフェルトが集まると、小振りのキャリーケースとお茶の用意が置かれている。そして、ハロに何事かリクエストしてから、全員に振り向いた。
「兄さんから差し入れを預かってきた。ということで、ここでお茶会なんて、どう? 」
 おどけたようにロックオンが、そう言うと、真っ先に噛み付いたのはティエリアだ。キラと一緒にヴェーダから戻ってきて、組織の再構築とダブルオー以外の機体の再生をしていて、てんやわんやで忙しくて、若干、キレ気味だ。
「お茶会だと? たわけたことを言うなっっ。さっさと、ニールの差し入れを配布しろ。」
作品名:こらぼでほすと 厳命10 作家名:篠義