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氷雲しょういち
氷雲しょういち
novelistID. 39642
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第5Q 私のバスケはみんなと違う

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1―黒子テツヤ
ワッシャ……
火神くんは僕の頭をつかみ、黄瀬くんに言った。
「お前の弱点って、こいつだろ」
すると、蜂の巣をつついたようにコートは騒然とした。
「黄瀬の弱点が、パス以外コート上で最弱の、黒子ぉ!!!?」
みな、口々に言い、ボールはいつの間にか、外に出た。
「アウトオブバウンス。誠凜、タイムアウトです」
審判の声で、僕らは自分たちのベンチへ。
「大丈夫、みんな?」
僕や先輩たちは汗のかきかたが尋常じゃなかった。
だけど、火神くんたちの攻守の入れ替えの速さを考えれば仕方ない。
むしろ、よく耐えてるな、と思うくらいだ。
ちなみに、僕もきつい。
火神くんはさっきの話をカントクにした。
「なるほど……たしかにそれ、いいかもね。火神くん、なんとか頭冷えたみたいね」
「オレは最初っから、」
「「むっちゃムキになってたよ!」」
伊月先輩と日向先輩の声が重なる。
ちなみに、このタイムアウト、火神くんのペースを切り、黄瀬くんとの掛け合いでジリ貧になることを防ぐためだった。というのはみんな分かってることだ。
そして僕は、言わなければならない。
「それとカントク、言っとかないといけないことが」
「ん?なに、黒子くん?」
不思議そうなカントクの隣でジト目の紺野さん。
――まだ言ってなかったの?
そう、目が語っていた。

2―黄瀬涼太
「大丈夫っスよ」
休憩が始まり、オレは真左の、深刻そうな顔をした主将にいった。
「黒子っちには弱点がある」
「なんだよ?」
「黒子っちのミスディレクションは、魔法とかじゃない。その証拠に、一瞬なら俺にもできます」
監督にバシバシ言われている横で、オレは手近なボールを片手に、主将を見た。
「オレをよく見ててください」
ボールをヒョイッと上げる。
すると、主将の目がボールに釣られた。
ボールはオレの手元に落ちた。が、
「ほら、もう見てない」
主将は目だけで驚いた。
「彼はこれを駆使して見えないように思わせてるんス。まあ、元々影は薄いんスけど」
苦笑しながらそう語り、最後にこう締めた。
「この行為はずっと、とか使えないんス。すなわち、彼のミスディレクションは試合フルタイムまでは保たない」
オレは言い終わり、ミネラルウォーターを飲みきった。

3ー紺野舞
相田先輩は、ホクロくんの話を聞き終えると、声にならない叫びをあげた。
「なんでそれを言わんかったんじゃー!」
「いえ、聞かれなかったし、紺野さんとの交代の件で推測できるだろう、と」
「推測しかできんし、聞かないと言わんのか、己はー!!」
先輩はどこで覚えたのか、ホクロくんに間接技を決めた。
そして、少しだけ落ち着いた顔で、――とはいえ、ホクロくんに技を決めたまま――皆に言った。
「いい、いまからは一旦ゴール下の守りを捨てるわよ。水戸部くんは紺野さんと交代。あと、黒子くんと火神くん、協力してね!」
はい、と言いつつ上着を脱ぐ私。
隣で微妙な表情を浮かべるバカ神くん。それに気付き、肘で脇を小突く。
「協力、したげなよ」
それに対し、
「わっ、分かってるよ」
とバカ神くんは、右手で私の脇を狙った。が、右手の先が肌に触れる寸前、それを私が止めた。
「私の身体に不用意に触れるな。死ぬよ」
くぐもった私の声に滝のような冷や汗をかき、バカ神くんは、黙って手を引いた。
そして、笛が鳴る。
さて、久々に黒子くんと一緒に出た。

「ゴール下を捨てた?!」
私たちのメンバーを見て、彼らは目を丸くした。
「でも、一応火神のや(つ)が、い(る)っスよ!」
「バカか、早川。あいつは黄瀬がマッチアップだ。んで、センターだったやつの代わりが、」
海常のSG・森山さんが私に視線を向けて、
「あの可愛い娘ちゃんだ」
と言った。
なんか、怖い。
彼のすぐ側でなにやら汗だくな海常の主将がいる。
「どうした、笠松。興奮しているのか」
「黙れ、森山……」
「ホント、女子に弱いよな、笠松」
「小堀、お前がマッチアップしろ」
「まあ、黒子と一緒に、だな」
「先輩、できるんスか?」
「やってみるよ。そっちは、火神を」
「了解っス」
海常の指揮は高まり、10人は相対した。
――まずは、海常ボール。
少し身体をほぐし、再開1分。笠松主将がパスをし、黄瀬くんにボールが渡る。
そこで走り始めた直後、
ッッ、バシッッ
私の無音のバックチップ、無音のスティール(ノイズレス・ピック)でボールを手にする。
そのまま手を捻り、日向先輩にパスをした。
この近距離ではランで黄瀬くんを抜けることはありえないからだ。
だが、日向先輩も撃つ寸前、森山さんと黄瀬くんの挟み撃ちに合う。
「予想通りだよ」
前に走りながら私はそう言い、先輩のシュートフェイクの後、即座に返されたボールを受けとる。
「「なっっ!!!?」」
海常の二人は一瞬困惑する。
しかし、黄瀬くんの躊躇は一瞬だけだ。
すぐに切り返して私に視線を向けた。
「紺野っち、よく君がそんなやり方するっスね」
挑発には乗らず、私はフェイダウェイより遥かに身体を反り、得意技・反体シュート(スリーブシュート)を撃つ。
ブワンッッ
ボールはリングに触れずに網をくぐった。私が二点取り返して、23ー29。
黄瀬くんは点数を確認してから私に話しかけた。
「らしくないっスね、紺野っち」
「どういう意味よ」
「君が黒子っち以外の誰かのパスを受けるなんて、思わなかったっス」

そう、中学のときである。
私は当初ホクロくんと一緒に試合に出ていた。
私はホクロくんからパスをもらい順当に点を重ねた。
「黒子っち、オレもパスほしいっスよ〜」
はい、これは当時のニセだ。
「黄瀬くんは始めたばかりなんでなんかまだ感触が掴めません」
「それ、紺野っちも一緒のはずっスよね!?」
「いいじゃない、黄瀬くん。私、あなたたちからパスを受ける気ないから、黒子くんだけよ」
「はあ?!オレたちのパスは受けないんスか!?」
「黄瀬くん、よく思い出してください。君たちのパスはいつも片手で、もらって即刻誰かにパスしてます」
そこへ一人のレギュラーが近づく。
「そいやそーだな。頭いいな、テツ!」
「見てたら分かります」
「あー、でもよ、黄瀬のはいつもタップパスだよな」
「はっ、そいえばそうっスね。なんでっスか?」
「黒子くんのを少し使ってみたの。ってか、黄瀬くん、あなたのパスは一生まともには受けとる気ないから」
「マジっスか!!」
半べそのニセであった。

黄瀬くんはたしなむ目をして続ける。
「結局、最後まで黒子っちとキャプテンからしかパスもらわなかったっスしね」
私は苦笑し、黄瀬くんも笑う。
「まあ、次は止めるっスけど」
「あんたの相手はバカ神くんでしょ」
「紺野っちも相手っス。それと、」
ボールがコートを駆け、黄瀬くんに渡る。
「お返し、するっスよ」
彼はスリーブシュートをした、が、甘い。
そもそも私のバレエで得た驚異的な柔軟性から応用されたシュートであり、正確には背中は水平ではない。首のラインだけで言えばコートと平行。ただし足先から背中の中間までは少し寝せたフェイダウェイ。
この姿勢を保ちつつシュートするのは男子の、黄瀬くんでも無理だ。