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東方~宝涙仙~ <其の壱拾(10)~弐拾(20)>総集編

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特に美鈴・レミリア・フランドール・小悪魔…その4人だけはなんとしても守りたいと思っている。それにこの4人は人間ではない。寿命が短いということはまずありえないのだから、長い時間のなかで共に過ごしたいと願っているようだ。
しかし今現在美鈴が行方不明。パチュリーは爆発後美鈴の姿を一度も確認できていのだから、それは相当焦っている。
 喘息で苦しむ体に耐えながら紅魔館の中をくまなく捜索する。
「美鈴…お願いだからでてきて頂戴……」
 時間が経つにつれて焦りは次第に増してくる。焦れば焦るほど捜索は疎(おろそ)かになってしまう事など分かりきっているが、どうしても焦らずにはいられない。
「捜索魔法なんて持ち合わせていないもの…。美鈴……」
 瓦礫をかき分けるも美鈴は見当たらない。それでもパチュリーは諦めることはなかった。
そして最後の希望。最後の部屋。廊下から各部屋まで、もし美鈴が動けない状態だとしてここにいなかったらもうどこにもいないと考えるしかない。
その部屋のドアには『二人の部屋』と書かれている。
「ここにいればいいんだけど……」
 そう、ここはあのレミリアとフランドールの思い出の部屋。
その部屋のドアをパチュリーはゆっくりと開けた。ギィ…と音を立ててドアが開く。
「美鈴…いる?」
 おそるおそる暗闇に質問をした。返事どころか物音ひとつない。
「めい…りぃん……」
 希望をすべて失ったパチュリーは膝をついて闇で見えない天井を見つめた。このまま闇に消えてなくなりたいという気持ちが伝わってくる、そんな感じだった。
「うげっ…げほっ…」
「!?」
 パチュリーの耳には何者かの声だと思われる音が聞こえた。
「誰かいるの!?」
「うぅ…。その声は…パチェ?」
 声だ!確かに人の声だ!しかも私を知っている! という感情を鎮められないように声の発声源を慌てて探しだした。
「レ…レミィ…?」
 発声源を突き止めたパチュリーの青ざめた顔にふるえが走る。
パチュリーの見ているものはボロボロになって倒れ苦しむレミリアの姿だった。
「レミィ!?どうしたの!?誰がこんなことしたの!?」
 倒れているレミリアを揺さぶり叫びあげた。
「パチェ…あんま揺らさないで……」
「あ、ごめん。でも…誰が…」
「狂った奴が…」
「狂ったって、まさかフランが!?」
 パチュリーはレミリア同様すぐにフランドールが犯人だと決めつけた。
「違う」
「え?」
「フランじゃない…。私は…いや、私も犯人を…フランだと思い込んで……思い込んで…」
 レミリアは後悔の底辺にいた。妹を信じれず責めたて、さらに妹を敵に回した。
全ては自分のせいだと責任を負うも、今は戦うどころか動く事すらままならない。プライドの高いレミリアにはこの上ない屈辱だ。
「フランをね、信じてあげられなかった」
「レミィ?」
「フランを信じてれば今頃こうには……」
 レミリアの声はどんどん小さく薄れてしまう。
「今そんな事悔やんでる場合じゃないわ!」
「そうね…。もうじき魔理沙と霊夢がかけつけてくるはずよ。その時にはこう言って」
「うん…」
「フランを…フランを傷つけないで…。片腕の頭のネジがどうかしてる奴と、その姉を倒して…って」
「そいつが…?」
「黒幕よ」
 会話が途切れた。黒幕の特徴を頭に叩き込んだパチュリーはまずその姿を想像して、これまでにそんな奴にあったことあるかを検索した。
「幻想郷にそんなのいた?」
「私も初めて見たわ。そいつが…そいつが……」
 レミリアは憎しみをぶつけるように床をひっかきだした。
「そいつが…さく…咲夜…を……」
 レミリアが今日涙を流すのは何度目だろう。枯れた目からはまた涙が流れてしまった。
「まさかそいつらが咲夜を殺した…の?」
 レミリアはうなずくこともなかったが、涙で答えた。その涙が真実を語っていた。
「わかったわレミィ。さすがの私も頭に来たとかそういうもんじゃなくなったわ」
「美鈴が多分どこかにいるから合流したほうがいいわよ」
 パチュリーはその名前を聞いた途端我に返ったように表情を暗くさせた。
「美鈴もいなかったわ」
「?」
「どこ探しても美鈴は見つからなかった…」
 パチュリーのあまりにも深刻な言葉にレミリアは固まった。そしてくくくと笑いを上げた。
「何言ってんのよパチェ。美鈴ならたったさっきまで私といたわ。どうせ違う道ですれ違いになったんでしょ」
「え?美鈴が?」
「ふふふん。私の館の門番よ。こんな程度じゃくたばらないわ。というかくたばらせない!どっかで多分私が死んだと勘違いしてると思う」
 横たわりながら笑いを浮かべて真実を話すレミリアに、パチュリーは肩の力が抜けた。
「よかった。美鈴…生きてたんだ…」
「勝手に殺したら美鈴泣いちゃうよ」
「泣いちゃったのは私のほうよ」
「なんでこう紅魔館には泣き虫が多いのかしら」
「あんたも泣き虫じゃない」
「泣き虫館の主だからね!」
 身体的には回復されていないが、精神的な面ではだいぶ回復をとげた。
咲夜を殺し、紅魔館を爆破した黒幕であり犯人。そろそろ決着をつけなくてはならない。


 ▼其の弐拾(20)へ続く



〜あとがき〜
 今回の総集編はここらで切りたいと思います。
前回の総集編のアクセス数が自分の想像をはるかに超えてくれてうれしい限りです(笑)
その記念として投稿すると発表した『東方〜宝涙仙〜 其の零』の内容も決定しました。お楽しみに。
 東方宝涙仙、これからはおそらく戦闘シーンが多くなるでしょうと予想されます。推理小説でもミステリ小説でもないのに黒幕を探すというのもなかなか珍しい作品なのではないか…いや、そうでもないな。冒険ものはだいたいそうですもんね(笑)
これからも逃亡はせず最終章まで書き続けていきたいと思っています。今後ともよろしくおねがいします!