東方~宝涙仙~ <其の壱拾(10)~弐拾(20)>総集編
爆発による影響で電気が止まっており、さらに窓のない廊下な為本当に真っ暗だ。ルーミアとかぼちゃんが暗い中でも目が効くようで、二人の誘導によって後ろの二人が着いてくるという形になっている。
「この紅魔館、だっけ?には何かあるの?」
かぼちゃんが根本から質問し始めた。
「実はな、これはアタイとルーミアだけの企業秘密で言えないんだよ。な、ルーミア」
「そう、あまり言うと……うっ!ひ、左目が!!左目がこれ以上言うなと警告している!!」
「な!大丈夫かルーミ……うあ!ア、アタイも右腕から闇の呪縛を感じる!これ以上は言えない!!」
あらかさまな嘘でごまかす二人のナイスコンビネーション&チームワーク。
大ちゃんは「やめなって」と笑って突っ込む。大ちゃんが突っ込むまではかぼちゃんは二人の急な覚醒を信じてしまっていたらしい…。
歩いている途中、ルーミアが何かを発見した。
「あれ、あそこなんか光が見えないかー?赤い感じの」
みんながルーミアの言葉に耳を傾け赤い光を探したが、見当たる事はなかった。
「アタイには何にも見えないぞ?」
「私も」
「うん、私も」
「あれー?今なんか見えたのになぁ」
キョトンとするルーミア。
「まあいいか!もう自分にも見えないし!」
ルーミアがそう言った瞬間、チルノのリボンが切れた。切れたというより誰かに刃物のようなもので切断された感じだった。
チルノ本人には見えもせず感じもしなかったが、大ちゃんを除く二人にはそのリボンの一部が切飛ぶ瞬間が見えていた。
「チルノちゃん!リボンが!!」
かぼちゃんが目を丸くして叫ぶ。
「え?」
全くと言っていいほど気付いていないチルノ。
「チルノ、リボン切られてる!」
「え?うおおおお!!アタイのリボンが!!誰だこんなことしたの!!」
チルノは三人を疑った。しかしこの三人のうちでそんなことできるような者はいない。
「さっきのルーミアちゃんの言ってた赤い光の正体じゃないの!?」
「そーなのか!?」
「とりあえずみんな危ないよ!チルちゃんもリボンは忘れて犯人を警戒して!」
「あのリボンは……」
チルノがリボンの切れ端を暗闇で見えない目で探しだしていた。
「あのリボンは大ちゃんと出会ってから、初めて大ちゃんがくれた大切なプレゼントリボンなのにっ……!」
「また買ってあげるから!チルちゃん、とにかく伏せて!」
チルノがしぶしぶ大ちゃんの言う通りに身を伏せた時、まさにそのタイミングで赤い一筋の光がチルノの上を通りすぎた。
今回ばかりはチルノも上を通り過ぎられる風を感じた。
「ここまで狙われるなんて、やっぱアタイはサイキョーね!」
急な刺激に興奮気味のチルノは立ち上がってしまった。
「ちょっと、チルちゃん立ち上がったら危ない!」
しかし赤い光の次の目標はチルノではなかった。
次に切られ舞ったのはかぼちゃんの頭についた蝙蝠の形のリボンだった。
「あ、わたしのリボン!」
「くそっさっきから誰だコソコソと!」
「でもあれだね、ルーミアちゃんのリボン切られないようにしないとね」
大ちゃんがチルノにボソッと言った。
ルーミアはリボンが解けると自分自身でも恐れるほどに能力、攻撃力、スピードなどが進化し、本当に覚醒してしまう。
通称"EXルーミア"
この状態になると理性が飛んで相手が仲間であろうとも攻撃をしてしまう。
ここにいる三人はみんなその事情を知っているが、今までそれについては触れないでいた。触れてしまうとルーミアが傷つくことも知っているからだろう。
「月符『ムーンライトレイ』!」
ルーミアが手当り次第にスペルカードを放つ。廊下にレーザー状の攻撃が走る。
手ごたえはなく、次のスペルカードを発動しようとしたとき、今さっきまでルーミアの真横にいたかぼちゃんがいなくなっていた。
「かぼちゃん!?」
「!?」
「!!」
ルーミアの発言に二人も敏感に反応を見せた。
「かぼちゃんがいなくなった!!そんな、さっきまで真横に…」
「危ないルーミアちゃん!!」
大ちゃんがルーミアを押し倒して伏せた。もし大ちゃんが押してなかったらルーミアは今頃目の前を通った赤い光の餌食になっていたかもしれない。
倒れる際ルーミアは見逃さなかった。
赤い一筋の光のしたに霞んで見えるかぼちゃんの姿。その姿はまるで誘拐犯に捕まった少女が連れ去られているようだった。
「光にかぼちゃんが!」
「え?ルーミィ、どういうこと?」
「チルちゃん、とにかくあの光を止めよう!」
「うんえ?お、おう!」
「氷符『アイシクルフォール』!!」
チルノはスペルカードを発動した。規則的に並ぶ氷の列が弾幕となり廊下に散る。
赤い残光は迅速に氷の間を潜り抜けて着実にチルノに近づいてきた。"アイシクルフォール"は規則的な弾幕な故、チルノの正面ががら空きになってしまう。どうやらそこを見切られたようだ。だがチルノもやられっぱなしになるわけにはいかない。
「ばーかばーか!正面に安置なんてないんだよ!」
チルノが氷に加え、正面めがけて黄色の弾を飛ばした。正面の安置に入ろうとした赤い残光はチルノの飛ばす正面の弾幕に反応できず直撃した。
「ぬおっ!?」
「きゃあっ」
かぼちゃんと誰かの声が鳴る。赤い残光がおさまった。
「光符『イルミネーション・ハロウィン』!!」
赤い残光と共に落ちたかぼちゃんがスペルカードを発動する。当たりに光を放つカラフルな弾幕が飛び交い廊下の壁に付着した。廊下に光が灯される。
廊下にはチルノ、ルーミア、大ちゃん、かぼちゃん、そして黒い胴着の女性が倒れていた。胴着の女性の手元には日本刀らしきものが落ちている。
「お前か!リボン切ったのは!」
チルノが犯人を確定する。
「私が弾幕に当たるなんて…。しかもこんな幼い奴に……」
※ネペル・ダーブレイル
二つ名:絶影の女侍
能力:破壊および創造を阻止する程度の能力
「リボン返せお前ェっ!」
「切れたものはもう取り戻せん」
「あれは大ちゃんとの大切な思い出のリボンなんだぞ!」
「そういわれてもなぁ…油断してたお前が悪い。」
「なんだとー、このズル虫!!」
「なんだそれ、そう油断してるとまた切られるぞ」
チルノの目の前で倒れて寝そべっていたネペルはいつの間にかいなり、天井に張り付いていた。それも一瞬で、まるで瞬間移動したかのように早かった。
「は、早い!」
チルノはビックリ仰天。
「チルちゃん気を付けて。おそらくあれがさっきの赤い光の正体。」
大ちゃんがチルノに冷静な言葉をかける。
「チルノ、あれは私達じゃ敵わない…」
「何言ってるんだルーミィ!さっきアタイはアイツに一撃喰らわせてやったんだぞ!もっかい行くよー」
「氷符『アイシクルフォール』!!」
さきほど同様の氷の弾幕が廊下に発生する。今度はかぼちゃんの弾幕の光の効果があるおかげで相手の位置までよく見える。
二度目も正面めがけてネペルは突っ込んできた。
作品名:東方~宝涙仙~ <其の壱拾(10)~弐拾(20)>総集編 作家名:きんとき