Muv-Luv A Lost Human ～消えたはずの男～
ウォルムスがハイヴ内に突撃して既に10分。作戦開始からは1時間はゆうに越していた。
｢・・・・・｣
ゲルググに乗りながら一人、思案に更ける白銀。
｢(なんでこんな人が早く出てこなかったんだ・・・・・)｣
｢(こういう世界なら、みんな死ぬことなかっただろうに・・・・・)｣
前回ループのことを思い返す白銀。
まりもちゃんは兵士級に襲われて死に、涼宮姉妹も死に、B分隊の皆も死んでいき、最後、自分の命と世界の命運を天秤にかけ、白銀がやむ無く引き金を引かせた女性、冥夜。
そもそも初めのループの時は地球はBETAに淘汰され、地球から出ていかざるを得なかった。
その時も、多数の友人が死んでいったのである。
冥夜の双子の姉、煌武院悠陽もその一人である。
元いた世界ではよく三人で笑いあったものだったのに最初のループ時は悠陽は政威大将軍という肩書き、そして自分の意思で地球に残った。
自分の幼馴染み、鑑純夏も例外ではない。
みんなみんな、元いた世界でバカやったりしていた仲の友人が死んでいったのである。
白銀の心はズタボロになっていた。
そして、四回目の今回。とんでもない希望が見えた。
自分と同じ、転生者の"オリヴァー・マイ"と"ウォルムス・トゥワイス"、そして戦術機の数倍の戦力となるMS。
これだけの"JOKER"があるのである。
希望がないわけがない。
｢(今度こそ・・・みんなで笑いあうんだ・・・絶対に！)｣
そう意気込んでいたとき、一つの連絡が入った。
『状況終了。全機、帰還せよ』
｢・・・・・え？｣
白銀はなにがなんなのか理解できなかった。
いや、その場にいた衛士たち全員が理解できなかった。
『え！？残存BETAの駆逐は！？？』
『なにがあった！！？状況が把握できない！』
『えええええっ！！！！？？』
焦る衛士たち。そういう衛士たちを尻目に帰還命令を出した指揮官がこう言った。
『ハイヴ内のBETAはすべてウォルムス少佐が駆逐した』
｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢え"？｣｣｣｣｣｣｣｣｣｣｣｣｣｣｣
今、何て言った？ハイヴ内のBETAはすべてウォルムス少佐が駆逐した？
・・・・・なんだよ、これ。
マジでなんぞ？これ・・・・・
衛士たちは納得できなかったが皆、帰還していった。
基地に戻ったあと、ウォルムスが整備兵や基地に残っていた衛士たちには英雄扱いされて、作戦に参加した衛士たちには質問攻めにあっていたというのは別の話。