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遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅰ

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第1話【宝石の騎士達】



「やっべえ!!遅刻する〜!!」



僕の名前は高等光輝、ハートランドシティに住む中学一年生である。

何故、走っているのかって?実は今日、僕がいつも愛用していた目覚まし時計が壊れてしまったのだ!その為に普段より15分も遅れて起きてしまったという事なのだ。つまりは今現在、僕は遅刻という恐怖の偶像との真剣決闘(デュエル)の真っ最中なのだ!。

そんな訳で走っていた僕は、交差点や歩道橋が交差し入り乱れる、大きな十字路へと差し掛かった。

「ここを左に曲がれば!!真っ直っ…」


「かっとびんぐだ!!俺ー!!」


突如としてブロック塀に遮られて死角となっていた右の道路から、同じくらいの少年が飛び出してきた。

「う!うわあああ!!」

「お!?おわああ!!」

走っていた僕とその少年は当然のように衝突し、ひ弱な僕の身体は弾けあう石の如く地面に倒れた。

「いってえ!…良く見て走れよな!!」

少年は尻餅程度で済んだらしく倒れている僕に向かってぶっきらぼうな言葉を投げ掛けてきた。しかし僕は、泣きそうな程の痛みに声が出ない。そこへ遅れて少女が駆けてきた。

「もう!遊馬ったら…だから前を向いて走りなさいって何度も…!」

少女は少年を遊馬と呼び、直ぐ様僕の方へと駆け寄ると、身を起こす手助けをしてくれた。

「大丈夫ですか?」

その少女はくっきりとした瞼とキュートな顔立ちをした、実に可愛らしい女の子だった。

「あ…はい、大丈夫ですよ!ははは!!」

僕も男子である、可愛い女の子にカッコ悪い姿は見せたくない…僕がそう素早く立ち上がると、よかった…と女の子はクスリ笑った。

「いっけね!!時間が!!行くぞ小鳥!!」

遊馬と呼ばれた少年は、時間を気にして立ち上がり、凄い早さで駆けてゆく。

「全く遊馬ったら…本当にごめんなさい!!」

小鳥と呼ばれた女の子は、健気に頭を下げ、遊馬の後を走ってゆく。

「小鳥さん…か」


取り残された僕は、地面に投げ出された鞄を拾って胸に抱き、小鳥さんでよからぬ妄想を抱こうと想いを馳せる。だって男の子ですものっ!!

「おっはよー光輝っ」

「のわああ!!」

そんな僕の背中に、軽快な挨拶と共に凄まじい重力を有した物体が衝突し、僕は本日二度目の大地との口付けを交わした。

「あー?ごめんごめん、ブレーキと加速を間違えちった〜」

舌足らずにのんびりとした口調、それに加えて究極的なドジッ娘属性。そんな奴は僕の知っているなかには一人しかいない。

「ごめんですむか!!」

僕は立ち上がり、僕を跳ねとばした主に注目する。その背丈は小柄で、スニーカーの下には僕を跳ねたであろう自走四輪ボードがある。言うまでもなく少女である、腰まである翡翠色の髪の毛をポニーテールに結び、白いTシャツの上にフード付きの白いジャケット、紺のミニスカートの下からはスパッツが覗いている…その外見はどことなく風霊術使いのウィンにそっくりである。

「えへへ〜だからごめんって〜」

屈託無く微笑む風霊術使いウィン似の少女、その笑顔に罪の意識は皆無と言う程に無く、反省の色は一切見当たらない。

「お前な!これで今年に入って十五回目だぞ!?」

彼女の名前は霧谷風香(きりたにふうか)。僕の五人もいる幼なじみの中の一人である。悔しいが一番家が近く、一番仲が良い奴だったりもする。

「わたしに過失はありますん!のんびり惚けている光輝がいけないのでーす」

律儀に姿勢を整え手を挙げる姿は正に萌えカードの精霊そのもの!だが僕にそのような無意識な色仕掛けは通用しない!なんだありますんって!!どっちだよ!ここは心を鬼に…。

「…でも〜、何で道の真ん中でつっ立ってたの〜?」

風香は小動物よろしく舌足らずに、エメラルドのような緑色で輝かしい瞳で首を傾げてきた。そういえば何故だ?本来なら風香を痛め付けて終わる筈の会話なのにな…そこで僕はそもそもの原因を思い出した。「そうそう!遊馬って奴とぶつかって…小鳥って子に優しくして貰ってたのだ…」

「ゆぅまって、あの九十九遊馬?…」

風香は何やら知ったような素振りであった。

「あいつの事を知ってるの?」

すると風香は首を傾げてから、腕を頭の後ろで組む。

「ゆうめいじゃーん、かっとまんの人でしょ〜?」

よくわからないが、盛大に間違えていると思われる。てか、なんでそんな古いネタを!?。

「えへ?気分」

「可愛いから許す!!」

楽しい会話だった。そんなこんな話していると、風香は左腕に巻かれた時計に視線を落とす。

「でも、光輝がこんな時間にいるなんて不思議〜どしたの?なんかいい事あった?」


世話好きなおばさんのように言ってくる風香に、少し苛立ちを覚えた僕だったのだが…ふと、時間という言葉が頭に引っ掛かる。

「は!!時間!!?」

時計に視線を落とした僕、時刻は7時55分…8時を過ぎたら遅刻という事態になっていた。

「そいじゃーわたしさきいくね…また、あとでね〜」

風香は足蹴にしていた自走スケボーを蹴飛ばして上に乗り、行こうとしていた。

「まっ!!待て!待って!!待って下さい!!乗せてって!ていうか乗せろ!!」

僕は風香のフードを掴んで必死に叫んだ。しかし風香は可愛らしく困り顔となる。

「だめ〜!この子はあたし専用なの〜!」

愛らしく嫌がる彼女もまた魅力的だ…だが今はそれどころではない!僕の遅刻がかかっているのだ。

「公務だ!!」

「きゃああ!!へんたーい!!」

遅刻が迫った僕は!!ジャッカルよりも強引だ!!僕は、触れるだけでもボカボカと殴ってくる風香をお姫様抱っこして、殴られ続けながらも自走スケボーに飛び乗り走りだした―。



学校―風香をお姫様抱っこしたが為に、沢山の男子から非難中傷の荒らしを受けたのは誤算ではあったが、遅刻ギリギリに間に合ったのは良かった。

「遅かったじゃん!コーキ!」

席に着いた僕の背中にぬめっとした何かがへばりつく。

「どおおおあ!!?」


僕は慌てて背を向けると、そこには燃えるような赤い髪に、学校通販で売っている基本の制服に身を包んだリチュア・エミリア似の飛び切りの美少女が、机に突っ伏すようにしていた。

「いた〜…」

顔を上げたその額が赤くなっているのを見ると僕が立ち上がった拍子に机にぶつけたのであろうと予測が出来る。

「コーキが苛めたー!!!」

わざとらしく泣き喚く彼女の名前は深水海里(ふかみかいり)、風香と同じく幼なじみのその二である。

「賠償としてカードかあんたん家のアクセサリーか宝石をよこしなさいよ!!」

この海里、口さえ開かなければこの学年でトップクラスの飛び切りの美少女なのだが、口を開いたが最後…彼女の魅力は一瞬にして無くなってしまう。


「おまえにやるカードはないし、アクセサリーなら買って僕ん家の家計を助けてくれよ」

今更だが、僕の家はジェムナイト宝石店という古くから続く宝石やアクセサリーのショップであり、父と母が仲良く営んでいる(そのために朝起こしてくれる人がいないがために今朝の遅刻ギリギリという事態が発生したのだが…)。