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遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅰ

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「何よ!ケチ!!嫌いだ!!」

「あ、えみりーおはよー!」

そこへ、クラスの男子達と雑談していた風香が帰って来て海里の隣に座る(因みにエミリーというのは風香がつけた海里のあだ名である。予断だが勿論、海里は気に入っていない)。

「風香おはよっ!!でもエミリーじゃねえっつってんだろ!?」


海里は突然男のような口調で風香の顔面を鷲掴みにするなり握力で締めあげている。

「あはは〜いたいよ〜えみり〜」

本当に痛がっているのか分からない位に明るく笑う風香、彼女達は昔は仲が悪かったようだが(主に風香では無く海里が嫌っていた)、ヒトの良さと能天気な風香に迫られ、いまにいたる。

「はあ…疲れる…早退すっかな」

海里は目を座らせて不良ぶりながらも風香を掴んでいた手を離して机に突っ伏す。

「おいおいおい!そりゃだめだぜ!午後は決闘やり放題なんだからよ!!」

そこへ、煩いやつがもう一人。その声に僕はうんざりしながらも、声の方に体を向ける。そこには我がクラス一番の悪党(に見える)、火山洋助(ひやまようすけ)がそこにいた。

「はあ〜?…あんたのカードなんていらないわよ〜…あたしが欲しいのはコーキのハート?」


海里はそう僕の背中にイカの触手が如く腕を伸ばしてへばりついて来る。当然、洋助の視線は僕へむかう。

「ああん?」


「おうコウキ!!遅かったじゃん!何処かで油でも売ってたのか?おれが燃やしてやるぜ!?だっはっはっは!!」

洋助は、タンクトップに短パンといったバスケット選手のような格好をしており、炎の様に逆立つ髪が特徴的で、その上身長が僕よりも高い(あ、関係ないか)。


「煩いな…僕はお前と違って所や時間に構わず決闘をしたりしないんだよっ」

「そうよっ!あんたの居場所はここには無いの〜残念っ!」

幼なじみの中で、僕とここまで相性が合わないのは洋助位であると思われる…。

「ま〜ま〜…みんななかよくしよ〜よ」

双方に睨み合っていると、風香は唯一中立(というかどっちつかずに)のんびりと言ってきた。

「そーだよなー!」

洋助はそんな風香を唯一の味方と思った様子で、風香の肩に手を回して風香の椅子に座ろうとする。

「あう〜洋助〜おさわりは禁止だよ〜」

風香は岩の間を擦り抜ける隙間風が如く洋助から逃げると身軽で柔軟に卓上からカバンを取りつつ横一列な机の上で前転して僕の前を横切り、僕の隣に座る。

「ちぇ…しらける〜」

洋助は机に足を載せて頭の後ろに腕を組む。

「さあ、授業ですよ」

そこへ僕達のクラスの担任である、二十歳後半の女教師【聖国院歩】が教科書となるデバイスを片手にやって来て、授業が開始された。




―午後―

午後は全クラス合同でのフリー決闘が催され、海里と洋助に置いていかれた僕は、律儀に待ってくれていた風香と共に体育館に向かう。

「待たせて悪かったね、風香」


体育館へ歩きながら、横目で風香の顔色を伺う。

「コウキはいつも遅いから仕方ないよ〜」

風香は毒を吐きながらも、たいして気にする素振りも見せずに、頭の後ろに手を向ける(遅刻常習犯の風香だけには言われたくないな…)。

「それよりさ!ちょっと見たらあたしのデッキ調整に付き合ってよ〜」

僕は、ポケットから取り出した鑑定等に使われるルーペのようなデザインのDゲイザーを取出して頷く。

「僕でいいなら相手になるよ、お手柔らかにね?」

「はいよ〜」

元気よく軍隊がやるような敬礼をすると、風香も一般的なデザインのDゲイザーを取出して取り付け、僕もそれに習う。

「ゆけ!!アレキサンドライトドラゴン!!相手プレイヤーにダイレクトアタック!!」


体育館の前でも決闘が行われており、Dゲイザーを通してその決闘を観戦出来る。今も、他のクラスの生徒が繰り出した攻撃力2000のアレキサンドライトドラゴンが、我がクラスの生徒にダイレクトアタックを食らわせ、ぶっ飛ばしている。

「あちゃ〜うちのクラスはやっぱり弱々だね〜…」

風香が言うのもわかる。我がクラスは決闘の成績があまり良いとは言えず、弱い人間が多いため、他クラスにデッキ調整の相手に使われる事が多いため…【調整クラス】等と呼ばれている。しかし、僕自身の実力も普段の時では中の下以下だ…勝つは少なく負ける事の方が遥かに多い。

「コウキ〜飽きた!中で観戦しよ?」


風香が、愛玩動物のように人懐っこく僕の手に抱きついて来ると、悪い気持ちがしない僕は頬をかきながら目前に聳える体育館へと向かう。

「ラヴァルツインスレイヤー!!プレイヤーにダイレクトアタックだ!!」

威勢のいい洋助の声に顔を向ければ、他クラスの生徒に、洋助のエースモンスターであるツインスレイヤーがダイレクトアタックを食らわせてライフをごっそりと削りとり、勝利していた。

「さっすが洋助だね!!我がクラス最強!」

風香は洋助を大袈裟に褒めちぎる、が…僕は反論したりはしない、否、出来ないのだ。確かに洋助は我がクラスで最強クラスのタクティクスがあり。かつて我が学校で全国大会優勝候補者と言われていた上級生【神代凌牙】には遠く及ばないだろうが、それでも他クラスの生徒との決闘では余り負けた事は無いようだ。

「おう!風香!!光輝!!」

決闘を終えた洋助が汗を拭う序でにやって来た。

「おつかれ〜!どう?調子は」

風香は、洋助の手にしたタオルを奪い取り、洋助の汗を拭いだす。

「はっ、ど!…どいつもこいつも話にならねえよ!この学校でオレに勝てる生徒は神代凌牙位さ!ふははははっ!」


風香に汗を拭ってもらえたのがそんなに嬉しいか畜生が…と、僕の嫉妬はさておき、急に洋助は表情を真顔に戻す。


「そういや光輝、聞いたか?」

その表情には何かを感じさせる…恐らくは、あれだろう。

「何かあった…?」

僕の言葉に洋助は深呼吸のように深く息を吸い込む。

「ああ…最近、半ば強引にアンティールールを要求して、デッキを奪い取る連中がいるらしいな…」

デッキごと?、僕は顎に手を当て探偵のような仕草をする。

「海里じゃないよね?」

アンティールールといえば大体は海里が原因であるため念のため聞いてみた。


「海里は有り得ねえだろ…お前だって知ってるだろう?あいつのアンティールール」

僕は頷いた。海里のアンティールールは、デッキからではなく余分なカードプールから一枚を賭けて行うのだ。…それも良いことではないのだが、海里は決闘をそれなりに楽しんでいる人間であり、決闘人の命であるデッキを奪う事など絶対にあり得ない。


「それで、まあ…海里の奴も疑われちまってな…あいつ躍起になって犯人を捜しに行っちまった訳なんだが…」


「そうか…一応注意するよ、ありがとう洋助」

僕の言葉に、洋助はにへらと笑うと僕の背中をバシリと叩いた…かなり強く。

「気にすんな、ダチだろ?」


「お前が火村洋助だな!ボクと決闘だ!!」


そうもしている間に新たな決闘人が洋助に決闘を挑みかかる。

「おう!いいぜ!!…テメェの魂を消し炭にしてやんぜェ!!」