遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅱ
第2話【NO.(ナンバーズ)の恐怖!】
―夜―少女は誰も居ない住居へと帰って来ていた、そこは3LDKの立派な佇まいを見せた家である…しかし、窓は暗く、何処までも漆黒が広がっている。
「ただいま」
鍵を開けて中に入る彼女は、生活習慣のように呟いた。
「………」
当然、帰って来たのは沈黙である。しかし少女は暗闇の中で手近な明かりのスイッチを入れて、漆黒の家に明かりを灯す。
「…はあ、疲れた」
少女はため息と共に愚痴を一つ、手にしたカバンを投げ捨て、上にデッキとデュエル・ディスク、クラシックなデザインのDゲイザーを乱雑に添えると、燃えるように赤い深紅の髪をツインテールに結んだリボンを乱雑に…まるで虫でも払うかのように払いのけ、抑えの無くなった長い髪は乱れて直ってゆく…目の前が髪の毛に覆われても構いはしない…そのまま学校の通販で売られている制服を乱雑に脱ぎ捨てながら、風呂場へ向かって行った。
彼女の名前は深水海里(ふかみかいり)、高等光輝(たからこうき)の幼なじみにして同級生…顔やスタイルは歳相応の美形だが、口を開けば単なる悪女である。
彼女に母親はいない…何故ならば彼女が産まれて直ぐに離婚してしまったのだという…。
父親に引き取られた海里は裕福な暮らしの反面、母も待たず…父も帰って来ない家で孤独だった…。
シャワーから出てきた海里は、シャツとパンツのみという無防備過ぎる格好で、自室のベッドに飛び込んだ。
「……」
仰向けで無言になる彼女の目の前には、我が学校で世界大会優勝候補として名を馳せた上級生【神代凌牙】のポスターが貼られている。
【あの事件】で表舞台から姿を消した後の彼の姿を盗撮し、加工して作った自作のポスターである。
「やっぱ…格好良いなぁ〜…」
うっとりとする少女はため息混じりに漏らした…。単純に柄の悪い不良少年が此方を睨んでいるだけの写真である…。しかしそれでも、今の孤独を和らげるのにはそれだけで十分だった。
「お休みなさい…神代先輩」
それが彼女の夜の挨拶だった、決して返って来る事のない返事…だがもう、慣れっこだ…彼女はそうして考えるのを止めた。
翌日―
僕は、昨日の屈辱を発散すべく1時間以上早起きして風香の家の前に来ていた。
「今日こそあいつに規則正しい生活を身につけさせるのだ!」
これは、本来の僕の日課である。朝は必ず風香の家に行き、風香を叩き起こしてやっているのだ!僕はすぐさまインターホンを鳴らす。
【やあ!光輝君!】
インターホンに取り付けられたスクリーンが開き、光の中から現れたのは、眼鏡を掛けた怪しげな男…どことなくガスタ・ガルドに似ている彼が風香の父である。
【娘が毎回世話をかけるな!君に嫁にあげる前にもう少し教育が必要なようだ!だっはっはっ!!】
風香の父と母は、僕の父と母と仲が良く、父と父の間で既に婚約後の未来予想までされており、母と母の間でそれが肯定されてしまっているのが問題だ…何故中学生の今から結婚予定をされねばならんのだ…。
「失礼しまーす!」
中に上がるとガスタの静寂カーム似の美女がひょっこりと顔を出す、その顔立ちは非常に若く年齢等を微塵も感じさせない程に素晴らしい美女である(美少女といってもいい)…姉と良く間違われるらしいが、彼女は風香の母親だ。
「あぁ、上でまだ寝てるから〜…宜しくね〜?」
風香のおっとりとした眠く為りそうな口調は、母親譲りのものだというのが明確に理解出来る。そして彼女の怠け者な性格も母親譲りであるのだろう。
「パパ、トースト焼けた〜?」
風香母は、ボサボサにした髪型のまま欠伸を漏らしてリビングに通じる扉に顔を引っ込み、それを見届けた僕は上に上がってゆく。
一応女の子の部屋に入るのだから緊張の一つでもしたい所なのだが、彼女にその緊張は必要ない。
「まだ寝てるか…」
彼女の部屋の前には兎のぬいぐるみが首吊りのようにぶら下がっている、これは風香が寝ているという証拠だ。
「……はあ」
扉を開けた僕は、いつもの光景にため息をもらした。…何故なら、風香の部屋には、カードや自動走行スケボーや服が散乱している。つまりは足の踏場が無いのである。
「この前片付けたばっかなのに…」
そこは2日前に僕が片付けたのだが…僕は思わずやるせない気持ちになる。が、直ぐに服に埋もれた風香の足を確認すると、そんな気持ちも無くなった。
「またか…」
こいつは翌日の服を悩むうちに、埋もれて寝てしまうという謎の奇病に侵されているのだ(僕案)…僕は合間を縫うように傍に行くと、服を指で摘んで次々に退かしてゆく。たまに下着などを拾うが…こんなものを触って喜ぶのは変態だけに間違いはない…僕は寧ろ嫌だ!そうして葛藤すること3分、漸く風香が現れた。風香はパジャマ姿のまま大きく口を開けて無防備で幸せそうに眠っている…乱れたパジャマが一層その無防備さを露呈させる、最初の頃はドキドキしていたが、今では最早見馴れ過ぎてどうでもいい。
「おら…起きろ風香」
俺は風香の柔らかい頬を軽くペシペシと叩く。
「ん…ん〜…あと…42時間…」
長っ!そんなに寝たら寧ろ身体に毒だ!。
「おら…起きろよ」
俺は風香の肩を掴んで揺する、が、風香は起きようとしない。
「まま…あとで…ちゃんとおきるから〜…」
僕をママと勘違いしているらしい。
「そうか…起きないか〜…」
僕はデュエル・ディスクにカードを差し込み、彼女の顔にDゲイザーを取り付ける。
「ジェムナイト・ルマリン(レベル4、通常、雷族、攻撃力1600、守備力1800)を召喚!!!」
僕はディスクにルマリンを差し込み、ソリドビジョン内の風香の枕元にトルマリンの鉱石が現れて光り輝くと、腕を組んだ騎士の形に変わる。
「ダイレクトアタック!ルマリン・サンダー!!」
ルマリンは両手に雷を迸らせ、風香に叩きつけた。
「うわあああっ!!」
風香は途端に飛び起きて顔をまさぐり、Dゲイザーに触れる。
「びりびりした〜…なんかジェムナイトに攻撃される夢をみたよ〜」
Dゲイザーを取り外し、身体を起こす。
「あと一時間もあるじゃーん…ふぁ」
「そうか、ジェムナイト・ガネットの方がお望みか?」
二度寝しようとする彼女の目の前にジェムナイト・ガネットを晒す。
「じ!!じょうだんだよ〜!!」
風香は飛び退くように服の山から抜け出して僕から離れた場所で立ち上がる。
「でも〜…なんで光輝がわたしの部屋にいるの〜?」
口に人差し指を当ててそんなすっとぼけた事を抜かす。こいつは一度痛い目を見たほうが良い…僕は心の底からそう思った。
「起こしに来たんだよ!!何時も通りだろうが!!」
しかし、風香は首を傾げて怪訝な瞳を向けてくる。
「え〜?でも昨日は来なかったじゃん〜」
「昨日は僕が遅刻しそうだったから当たり前といえば当たり前だ…いいから着替えろ!外で待ってる」
僕は乱雑に放られた服を適当にコーディネートしてやって押し付け、部屋の外に出た。
「ん〜…一人で起きれるのに〜」
部屋の中から風香の不機嫌そうな声が響いてきた。
―夜―少女は誰も居ない住居へと帰って来ていた、そこは3LDKの立派な佇まいを見せた家である…しかし、窓は暗く、何処までも漆黒が広がっている。
「ただいま」
鍵を開けて中に入る彼女は、生活習慣のように呟いた。
「………」
当然、帰って来たのは沈黙である。しかし少女は暗闇の中で手近な明かりのスイッチを入れて、漆黒の家に明かりを灯す。
「…はあ、疲れた」
少女はため息と共に愚痴を一つ、手にしたカバンを投げ捨て、上にデッキとデュエル・ディスク、クラシックなデザインのDゲイザーを乱雑に添えると、燃えるように赤い深紅の髪をツインテールに結んだリボンを乱雑に…まるで虫でも払うかのように払いのけ、抑えの無くなった長い髪は乱れて直ってゆく…目の前が髪の毛に覆われても構いはしない…そのまま学校の通販で売られている制服を乱雑に脱ぎ捨てながら、風呂場へ向かって行った。
彼女の名前は深水海里(ふかみかいり)、高等光輝(たからこうき)の幼なじみにして同級生…顔やスタイルは歳相応の美形だが、口を開けば単なる悪女である。
彼女に母親はいない…何故ならば彼女が産まれて直ぐに離婚してしまったのだという…。
父親に引き取られた海里は裕福な暮らしの反面、母も待たず…父も帰って来ない家で孤独だった…。
シャワーから出てきた海里は、シャツとパンツのみという無防備過ぎる格好で、自室のベッドに飛び込んだ。
「……」
仰向けで無言になる彼女の目の前には、我が学校で世界大会優勝候補として名を馳せた上級生【神代凌牙】のポスターが貼られている。
【あの事件】で表舞台から姿を消した後の彼の姿を盗撮し、加工して作った自作のポスターである。
「やっぱ…格好良いなぁ〜…」
うっとりとする少女はため息混じりに漏らした…。単純に柄の悪い不良少年が此方を睨んでいるだけの写真である…。しかしそれでも、今の孤独を和らげるのにはそれだけで十分だった。
「お休みなさい…神代先輩」
それが彼女の夜の挨拶だった、決して返って来る事のない返事…だがもう、慣れっこだ…彼女はそうして考えるのを止めた。
翌日―
僕は、昨日の屈辱を発散すべく1時間以上早起きして風香の家の前に来ていた。
「今日こそあいつに規則正しい生活を身につけさせるのだ!」
これは、本来の僕の日課である。朝は必ず風香の家に行き、風香を叩き起こしてやっているのだ!僕はすぐさまインターホンを鳴らす。
【やあ!光輝君!】
インターホンに取り付けられたスクリーンが開き、光の中から現れたのは、眼鏡を掛けた怪しげな男…どことなくガスタ・ガルドに似ている彼が風香の父である。
【娘が毎回世話をかけるな!君に嫁にあげる前にもう少し教育が必要なようだ!だっはっはっ!!】
風香の父と母は、僕の父と母と仲が良く、父と父の間で既に婚約後の未来予想までされており、母と母の間でそれが肯定されてしまっているのが問題だ…何故中学生の今から結婚予定をされねばならんのだ…。
「失礼しまーす!」
中に上がるとガスタの静寂カーム似の美女がひょっこりと顔を出す、その顔立ちは非常に若く年齢等を微塵も感じさせない程に素晴らしい美女である(美少女といってもいい)…姉と良く間違われるらしいが、彼女は風香の母親だ。
「あぁ、上でまだ寝てるから〜…宜しくね〜?」
風香のおっとりとした眠く為りそうな口調は、母親譲りのものだというのが明確に理解出来る。そして彼女の怠け者な性格も母親譲りであるのだろう。
「パパ、トースト焼けた〜?」
風香母は、ボサボサにした髪型のまま欠伸を漏らしてリビングに通じる扉に顔を引っ込み、それを見届けた僕は上に上がってゆく。
一応女の子の部屋に入るのだから緊張の一つでもしたい所なのだが、彼女にその緊張は必要ない。
「まだ寝てるか…」
彼女の部屋の前には兎のぬいぐるみが首吊りのようにぶら下がっている、これは風香が寝ているという証拠だ。
「……はあ」
扉を開けた僕は、いつもの光景にため息をもらした。…何故なら、風香の部屋には、カードや自動走行スケボーや服が散乱している。つまりは足の踏場が無いのである。
「この前片付けたばっかなのに…」
そこは2日前に僕が片付けたのだが…僕は思わずやるせない気持ちになる。が、直ぐに服に埋もれた風香の足を確認すると、そんな気持ちも無くなった。
「またか…」
こいつは翌日の服を悩むうちに、埋もれて寝てしまうという謎の奇病に侵されているのだ(僕案)…僕は合間を縫うように傍に行くと、服を指で摘んで次々に退かしてゆく。たまに下着などを拾うが…こんなものを触って喜ぶのは変態だけに間違いはない…僕は寧ろ嫌だ!そうして葛藤すること3分、漸く風香が現れた。風香はパジャマ姿のまま大きく口を開けて無防備で幸せそうに眠っている…乱れたパジャマが一層その無防備さを露呈させる、最初の頃はドキドキしていたが、今では最早見馴れ過ぎてどうでもいい。
「おら…起きろ風香」
俺は風香の柔らかい頬を軽くペシペシと叩く。
「ん…ん〜…あと…42時間…」
長っ!そんなに寝たら寧ろ身体に毒だ!。
「おら…起きろよ」
俺は風香の肩を掴んで揺する、が、風香は起きようとしない。
「まま…あとで…ちゃんとおきるから〜…」
僕をママと勘違いしているらしい。
「そうか…起きないか〜…」
僕はデュエル・ディスクにカードを差し込み、彼女の顔にDゲイザーを取り付ける。
「ジェムナイト・ルマリン(レベル4、通常、雷族、攻撃力1600、守備力1800)を召喚!!!」
僕はディスクにルマリンを差し込み、ソリドビジョン内の風香の枕元にトルマリンの鉱石が現れて光り輝くと、腕を組んだ騎士の形に変わる。
「ダイレクトアタック!ルマリン・サンダー!!」
ルマリンは両手に雷を迸らせ、風香に叩きつけた。
「うわあああっ!!」
風香は途端に飛び起きて顔をまさぐり、Dゲイザーに触れる。
「びりびりした〜…なんかジェムナイトに攻撃される夢をみたよ〜」
Dゲイザーを取り外し、身体を起こす。
「あと一時間もあるじゃーん…ふぁ」
「そうか、ジェムナイト・ガネットの方がお望みか?」
二度寝しようとする彼女の目の前にジェムナイト・ガネットを晒す。
「じ!!じょうだんだよ〜!!」
風香は飛び退くように服の山から抜け出して僕から離れた場所で立ち上がる。
「でも〜…なんで光輝がわたしの部屋にいるの〜?」
口に人差し指を当ててそんなすっとぼけた事を抜かす。こいつは一度痛い目を見たほうが良い…僕は心の底からそう思った。
「起こしに来たんだよ!!何時も通りだろうが!!」
しかし、風香は首を傾げて怪訝な瞳を向けてくる。
「え〜?でも昨日は来なかったじゃん〜」
「昨日は僕が遅刻しそうだったから当たり前といえば当たり前だ…いいから着替えろ!外で待ってる」
僕は乱雑に放られた服を適当にコーディネートしてやって押し付け、部屋の外に出た。
「ん〜…一人で起きれるのに〜」
部屋の中から風香の不機嫌そうな声が響いてきた。
作品名:遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅱ 作家名:黒兎