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遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅱ

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「他クラスで嫌な奴だけど同情するよ…」

「あいつ魂がぬかれたみたいになってたよな…決闘辞めるんじゃねえ?…」

ヒソヒソと、海里の耳に聞こえる噂話、海里は思う…わたしは皆のために悪を倒しただけ、でもなんで皆はあたしを褒めてくれないの?…なんで?。

「ナイスふぁーいと〜えみりー」

後ろから舌足らずななま暖かい声が聞えれば、海里は振り返る。

「風香…」

そこにいたのは風香である、風香は穏やかな笑みを浮かべていた。

「ありがとうえみりー、これであたしたちの決闘スペースが守られましたっ!」

風香は自分の待っていた言葉を平然と口にしてくれる…大切な…唯一の友達…。

「別に!…あんな雑魚、あたしの相手なんかじゃないわよっ!」

「照れちゃって〜!えみりーは可愛いな〜!えへへ〜」

「ち!ちゃかすな〜!!」

怒りを現す海里の表情は、自然と笑みを浮かべていた…もう大丈夫だろう、遠巻きにみていた僕はゆっくりと身を乗り出す。

「さ!三人でデッキ調整しよしよ!!」

風香ははしゃぐように海里と僕の手を引っ張る。

「はいはい…まったくしょーがないこね〜」

「ああ…まったくだな…」

僕と海里は共にため息を漏らして、風香に引き摺られていった。暫くすると洋助が合流し、風香と海里、僕と洋助でのタッグ・デュエルを行った…なんでジェムナイトの僕がラヴァルの洋助と組まされるのだろうか…でも、楽しい1日だった。こんな1日が、毎日のように続けばいいと…僕だけじゃなく…ここの4人全員が思っただろう。だが、運命はそんな事を許そうとはしない…。

―夜―また少女は誰も居ない住居へと帰って来ていた、そこは3LDKの立派な佇まいを見せた…自分の住まい…しかし、窓は暗く、何処までも続く漆黒が広がっている。

「ただいま」

再び漆黒の中へ舞い戻った少女は、電気のスイッチを入れた。

「あー…疲れた疲れた…たくっ…風香のやつ…少しは手加減してやれ…つの…」

少女は疲れていた、凄まじい疲労感に毎日のシャワーすら忘れ、部屋にいき、普段は玄関に投げ捨てるカバン達も、今日だけは彼女の部屋に入る事が出来た。

「……」

少女は部屋でカバンを投げ捨て、デッキやデュエルディスク、Dゲイザーなどをカバンの上に添えると、そのままベッドに横になる。

「……」

少女は孤独だった…学校でも、家でも変わりはしない…そして寂しさと共に天井に貼った神代凌牙のポスターを眺めながら…次第に瞼が重くなる―。


【孤独が寂しいなら…造ればいいじゃないか】

声がした…きっと夢だろう、疲れているんだろう…彼女はそう思った。

【可哀想な海里、母もおらず、友達もおらず…近所からは蔑まれ、親戚からは厄介者扱い…心の支えは偶像のポスターに映る彼だけ】

違う…少女は反論しようと思った、だが出来なかった…確かにそうだからだ…。

【可哀想な海里…だからさ…わたしはそんな可哀想な海里に友達を作って挙げるよ…決して海里を裏切らず、文句もいわず、どんな時にも海里を助けてくれる…そんな…友達(どれい)を…だからさ…】

少女は胸元のポケットから異常な気配を感じる。そこにあるのは文男のカードプールからとったカードだった…何をとったかは見ていない。少女は胸元のポケットに手を入れて、カードを眺めた…そこには…黒い枠の見慣れないエクシーズモンスターカード…。

「No.20 蟻岩土ブリリアント…」

そこで海里は目を見開く。

「No.!?」

慌てて飛び起き、Dゲイザーに手を伸ばすがもう遅い。

【やっと手に取ってくれた…くふ?あなたの身体をあたしに頂戴?そうしたら…あなたに友達(どれい)を沢山…あげる…】

自分の声で囁きかけるNo.から広がるまがまがしい闇、海里は闇の中に引き摺りこまれながらも、やっとの思いでDゲイザーを掴む、そして通話モードにしてから馬鹿とかかれた表記にカーソルを合わせ、発信する。

『はれ?えみりー?どうしたの?あたしはね〜いまなんと未来の夫が来てて!今から甘〜い夜を!』

『部屋を片付けるんだろ?さぼってないで手伝え!お前の部屋だろうがっ!!…』

二人の夫婦漫才は何時もどおりだ、何時もどおり過ぎて異常事態なのにもかかわらず笑いが出てしまう。しかし喉が潰れたように声が出ない…彼女は藻掻くように一言だけ…微かな声で…叫んだ。


「助けて…風香…」


そこで、海里はゆっくりと瞼を閉じ、意識を失った。