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遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅲ

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『なんだ小僧!カイト様は忙しいのだっ!』

オービタル7が呼び止めようとした僕の前に立ちはだかり、人間のように両脇に手を当てる。

「……あ…ごめんなさい…」

僕はオービタル7の言葉に負け、身を引いた。


「…さっさと来い、オービタル7」

『かしこまり!』


背を向けたまま歩調を緩めていたカイトに、オービタル7が身近に近づくと、古いハードボイルドのように口笛を吹きながら速い歩調で歩いて行く。

「光輝ぃー!!!」

そんなカイトとすれ違うように、白い髪に黄金の瞳の夜だと言うのにピカピカに輝いている美少女が駈けてくる。


彼女は走りながらカイトの姿を一瞥し、カイトも彼女を一瞥してから何事も無かったかのように行ってしまう。

「ひかり!」

それは月明光、闇の双子の姉であり知る人ぞ知る探偵である。

「犯人は!?…風香は大丈夫!?みんなは無事!?どっか怪我とかは!?」

光は非常にテンションが高く、僕の襟首を掴んで締め上げながら畳み掛けるように叫び続けた。

「ぐ…くるし!…犯人は分からない…みんなは下……だ」

「はあ!?取り逃したの!!?何してんのよ〜!!」

役たたず!!光はそう言いながら僕の身体を力一杯に振り回して投げ飛ばすように開放すると。最近流行りのDゲイザーを取り付け、銀に金のゴージャスなデュエルディスクを展開する。
「先ずは現場検証!!」


「いや、取り敢えず下に行こう、みんないるから…」

風香が重傷だから…と付け加えると、いきり立っていた光も黙り込む。

「風香がっ!?…平気なの!?てかそれなら救急車!?ちょっと待って!!五秒で考えるわー!!」

光はそうしてエレベーターのボタンを無駄に連打し、扉が開いた…。開き切ったところで中に飛び込もうとした光が止まる。

「……これはどういうこと?」


光に合わせて僕もそれを見て止まっていた…あまりにも衝撃的な事態だったからだ。


「ふ…文男…」


文男だった…しかし、文男ではなかった。その髪は白く染まり、肌は黒ずみ…文男に似た老人が…否―老人となった文男がそこにいた。

「文男!」

僕は駆け寄り、文男に呼び掛けるが反応はない…まるで【魂が抜き取られたかのように】。

「光輝!運ぶわッ手伝いなさいよッ!!」


光は大雑把に文男の身体を掴んで引きずっていた。

「一応っ…現場の保管とか…しなくていいのっ?」

「保管してたらこいつが死ぬわっ!人命優先!!さっさと手伝う!!」

僕は光に言われるがままに文男の足を掴んで持ち上げ、エレベーターから降ろした。

「取り敢えず救急車ね、光輝」

光はスティックチョコレートをタバコでも拭かすかのように口に加えて目を細める。


「それより!、下には風香達も!」

風香は大怪我をしている、非力な闇では支えるのがやっとだ。

「尚更、救急車じゃないの…素人が口出しする必要はないわ…さっさと呼びなさいよのろま!」

「のろまって…おまっ」

「推理中!!話し掛けるなっつの!!!」


光はそれきり背中を向けた…僕はDゲイザーを使って救急車を呼び始めた。

「…まるで、魂を無理矢理引き剥がされたって感じね…謎だわ…」

光は一人、スティックチョコレートを噛み砕き、ビターの苦味を舌の上で感じながら、そう呟いていた。


―この後、風香と海里は駆け付けた救急隊員により、救出された…余談だが、風香の怪我は車に撥ねられたとしてもここまで酷くはならない、生きているだけでも不思議だ…と言われた程に酷かったらしく。海里とは別の救急車で病院に飛んで行った。こうしてこの事件は、疑問を残す形で終結したのである。


朝―少女が目を覚ますと、目の前には白い空間と成人男性の顔があった。

「…海里っ…」

懐かしくも逞しい顔の男は少女の―否―娘の名を呼んだ。

「おとう…さん?」

目の前にいたのは、海里の父親だった…その表情は心配の二文字しか浮かんでおらず、ただ眺めていた海里は虚ろな意識が覚醒してくるにつれ、胸の激しい高鳴りと共に、ベッドから飛び起きる。

「おとうさん!!?」

海里は素早く時計を見れば、既に昼を回っていた。

「なにしてるの!?仕事は!?」


海里にまくしたてられると、父は肩を揺らして笑う。

「はっはっはっ…娘が病院に運ばれたというのに仕事を優先する、というのはどうなんだい?いくらリチュアの担い手であっても、わたしはそんな親ではないさっ」


父はそう誇らしげに言って胸を張り、海里の頭をいとおしそうに撫でる。

「でも…あたしっ…家を…」

海里は撫でられながら、記憶が覚醒してゆくのを覚えた。

「光ちゃんに聞いたよ…あれは、No.というのに操られたからなのだろ?なら我が娘は関係ない」


父はキッパリと否定し、そしてそんな事というふうに笑う。

「それに、丁度いい頃合いだったよ」

「丁度…いい?」

海里が不思議そうに首を傾げると、父は頷いた。

「ああ、実はこれから一年位の長い長い海外への出張があってね…」
海外への出張…それは海里の頭に転校の2文字を過らせる。

「海里は連れてはいけないし…家に一人おいとく訳にもいけないだろ?」


海里は連れていけない…その言葉に海里は戸惑いと首を傾げた。

「だから、家の新築作業の間、霧谷さんのお家にお世話になって貰おうと思ってね?霧谷さんも喜んで賛成してくれてね、これでわたしも…」

「ちょっ!ちょっちょっ!!ちょっと!勝手に話を進めないでよ!転校じゃないの?」

海里は理解できず聞き返せば、父は頬をかいた。

「海里は、英語の成績が悪いから海外への転校は無理かな〜」

確かに海里は英語の成績が極端に低い、成績を父に知られていることに海里は顔を真っ赤にする。


「だから!霧谷さんにお世話になるのさ、火山さんでも良かったが…同い年の女の子の方が話が弾むし、寂しくもないだろ?霧谷さんの方は快く引き受けてくれたよ…なんかこれってガスタとリチュアに平和の兆しが出来た気がしないか?」

楽しそうに、格好よく父は話を告げる…寂しくもない、一番寂しいのは父だろうに、海里はため息混じりにベッドへ寝そべった。

「そうだ…風香は?」

風香は自分で怪我をさせてしまった、ボロボロな筈だ…彼女が許してくれるのだろうか?。海里の脳裏にそんな心配がよぎった…。

「彼女なら…」
父は笑いを堪えるように指差すと、海里のベッドの隣にはベッドがあり、そこで包帯だらけの風香が口を開けて無防備に寝ていた。右腕には液体の入れられた未来的なギブスが嵌められて固定されている。

「……」


「彼女が同室を希望したんだってな…腕は勿論、肋骨なんかも何本も骨折して生きているだけでも不思議って位に酷い状態だったってのにさ、たいした娘だよ…まったく」

海里は闇に沈んで行く自分を引きずりあげた親友の声を思い出し、眠る風香から目を逸らして天井を見上げた。

「ただの馬鹿よ…やめてほしいわ…全く」

海里は笑いながら、どこか恥ずかし気にそう言って、目を閉じた…。


孤独な少女には親友が出来ました、彼女は思う…もう寂しくはない、一人ではないから…安心だと。