遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅳ
「…ジェムナイト・プリズムオーラの効果は、1ターンに一度、手札からジェムナイトと名の付くカードを墓地に捨てる事で、相手フィールド上に表側表示に存在するカードを破壊する…」
「なに!」
No.はNo.でしか倒せない…だが効果なら話は別である。
「ジェムナイト・フュージョンを墓地へ捨て!プリズムオーラの効果発動!消えろ【ディストラクション・プリズム】ッ!!」
プリズムオーラはジェムナイト・フュージョンから盾に光を吸収し、白銀の光をホープめがけて放ち、直撃を受けたホープが爆散する。
「ホープッ!!!」
「バトル!!!プリズムオーラでプレイヤーにダイレクトアタック!!」
指示を受けたプリズムオーラは、瞬く間に遊馬と間合いを詰める。
「【プリズミックミステイル】!!」
剣により繰り出される連続突きが、遊馬を滅多突きにした。
「ぐあああ!!」(2600-150)
ライフが残り僅かになり、吹き飛ばされた遊馬は、ゆっくりと立ち上がる。
「どうだ!これがジェムナイトの力だ!!例え戦闘なんて出来なくとも!No.なんかには負けないっ!」
遊馬は立ち上がり、土埃を叩いて払い、鼻をかく。
「あんたが何でNo.に怨みを抱いてるのかはわかんねーけど…この勝負はオレが貰うぜ!」
それは…遊馬の瞳が一際輝いた瞬間だった。
「おれは罠カード!痛恨の訴えを発動ぜ!!」
罠…だとぉっ!?てっきりブラフだと考えていたが…そうではなかった…。
「このカードは!自分が相手の直接攻撃によるダメージを受けた時に発動できる!相手フィールド上に表側表示で存在する守備力の一番高いモンスター1体のコントロールをオレのターンのエンドフェイズまで得る!この効果により!あんたのジェムナイトを借りるぜ!」
俺のフィールドにいたジェムナイトプリズムオーラが遊馬のフィールドに行って身構える。
「…な…」
ハンド0、フィールドはがら空きでメインフェイズ2を向かえ、この時点でオレの勝機は…消え去った。
「サレンダーはしない…止めをさせ!ターンエンドだっ」
エンドにあわせて遊馬のフェイズになる、遊馬は何もいわずにカードをドローした。
「名前は分からないけど…楽しかったぜ!おれは!手札からズババナイトを召喚!!」
ギザギザの剣を両手に持った黄金色の戦士が舞い降りる。
「バトル!!【ズババソード】!!」
ズババナイトは遊馬の指示を受けて俺に飛び掛かり、両手の刃をふるった…。
「……」(1600-0)
Loseの文字が視界を覆うのと一緒に、僕は地面に膝をついた。
「お前!すっげーな!」
そんな僕に、遊馬が駆け寄って来ると、ゆっくりその手を差し出して来た。
「なんのつもりだ?」
僕はそう聞くと、遊馬は照れ臭そうに鼻のしたを描いた。
「デュエルをすれば友達だぜ、理由なんかいらねーよ!」
風香のような事をいう奴だ…僕はその手を掴みゆっくりと立ち上がる。
「No.と馴れ合うつもりはない…」
「おま…まだそんなっ…」
「この雪辱は必ず晴らす…襟垢洗って待ってろ…No.39希望皇ホープっ!」
僕はそのまま家とは逆方向に駆け出していた。
「あ…おい!」
取り残された遊馬は、名も知れぬ少年の背中を眺める事しか出来なかった。
『遊馬、何故彼はあそこまでNo.を憎んでいたのだろうか…』
その隣で青白い光の人型《アストラル》がそう疑問を浮かべた。
「さあな…わかんねー、けどジェムナイト!格好よかったよな〜!」
『それより遊馬…あまり遅くなると家族が心配するのではないか?』
そこで遊馬は我に返り、時計を見下ろした。
「やっべー!姉ちゃんに殺されちまうー!!」
場所は変わり、敗けた僕はそこまで遠くへは行けなかった…。
「ナイスふぁーいと!こうき〜」
門を曲がった所で、車椅子の風香とそれを押す海里がいたのだ。二人ともDゲイザーを取り付けている。
「おまえら…どうっ」
「相変わらず後先考えずにハンドを使うから負けるのよ、もっと温存しなさい、温存」
海里はため息混じりにそう言うと、任せろと胸を張ってしまった僕としては、顔を合わせ辛かった。
「それよりさ〜かっとまんの人っ、面白い人だったね〜!今度話し掛けに行って見ようかな!!すっごい気が会いそう!」
風香は興味を持った様子で、興奮しはじめる。
「止めてよ…発情期の猿みたいな奴は一匹でいいわ…」
「ふえ?学校に発情期の猿なんていないよ〜?」
自分の事を言われていると気付きもしない風香は、指を顎にあてがい首を傾げた。
「で、なんでお前らここにいるんだ?」
この二人がいると、敗けた悔しさなんてどこかへいってしまい。思わず笑みが零れていた。
「なーによその態度、あんたの忘れ物を届けに来てあげたあたし達に対して」
忘れ物?…僕は首を傾げた。
「嘘つくなよ、僕はこうみえてキングオブ几帳面なんだぞ?忘れ物なんてあるわけがあるまい」
そう僕は胸を張っていると、風香は身を寄せて左手で僕の肩を掴む。
「ん?…」
「行ってらっしゃいのちゅー!」
そんな事をいいながらそのまま立ち上がり、自らの唇を僕の唇に押しあててきた。
「………」
しばしの静寂…いまあった事を有りのままに話すぜ、何が言いたいのか分からないかもしれないが聞いてくれ…僕は今!風香と所謂キッスをしているんだッ!!。
「ん、よし、忘れ物かんりょーッ!」
ゆっくりと唇を離した風香は赤く成りながらも照れ隠しに笑って座る。
「おー!スキャンダルスキャンダルー!きゃーきゃー」
海里は後ろでそう騒ぎ立てていやがるが、気にならなかった。
「おま!…なにし」
言葉を搾り出そうとした唇に、風香は人差し指を突き付け、それを自らの唇に当てる。
「次はあたしの忘れ物も…持って来てね?」
顔を林檎のように赤く染めながら、甘えるような瞳でそう言われては…男として引くに引けない!今日の敗け?なんだそれ?美味しいの!?学年の風香ファン残念だったな!闇君ざまあ!風香はオレの嫁だ!!ふはははは!等という雑念を振り払い、僕は姫に忠誠を誓う騎士のように片膝を付き、風香の左手の甲に口付けした。
「心得ました…」
それから…僕は家まで全速力で走って帰り、ベッドに飛び込むと、ニヤニヤニヤニヤとしてしまっていた。
戦いに敗けて勝負に勝ったとはこの事だ…次は必ず倒す!!ふはっ!ふははははは!!
作品名:遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅳ 作家名:黒兎