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子供みたいな

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「おまえさ、そういう子供みてェなこと好きだよな 」
 そう言ってシズちゃんが笑った。
 笑われる対象の俺はパソコンデスクの椅子の上でくるくると回りながら、風呂上りの熱気を逃がそうとシャツの中に風を送り込んで鼻唄を歌っていた。
 なかなか俺の前でシズちゃんがこんな風に自然に笑うことってないから、思わずその笑い声に椅子を回転するのを止めて呆然としてしまった。
 でもそんな俺を見てシズちゃんは明らかに不満そうに眉をひそめたから、呆然とした自分の恥ずかしさを隠す為にちょっと残念だなって口唇を突き出してやった。
「いやだなぁシズちゃん。
 俺はいつまでも永遠の21歳だよ 」
 気だるいのかベッドに横になったまま動かないシズちゃんの脇に移動するとそっと膝を突いて、視線を逸らした隙に頬に口唇を押し付ける。
 俺からしたら、それに反応して耳がカァァッと赤くなるシズちゃんのほうがよっぽど子供みたいだけどね。
 もっと大人なことたくさんしてるくせにね。
「21歳もそんなことしねェ 」
「そんなことないと思うけどなぁ 」
 ちょっといいことがあって、いい気分でちょっとるんたったとスキップみたいに弾む歩調。
 そんでもってその視線の先にはさっきまで愛を睦んだ相手がいて……なんて、よくあること。
 スキップなんて酔っ払ったおじさんでもするでしょ。
 動かないシズちゃんを一人にして先にシャワーを浴びた俺も悪かったけどさ、それを意識しながらずっと待ってくれてたのにときめいちゃうのってダメかな?
 もしかしたらシャワーを浴びつつ口ずさんだ鼻唄だって聞こえてたかもしれないけど、別にシズちゃんにこんな俺の姿隠すことはないしね。
 悪いことに関しては隠しておきたいことたくさんあるけど。
 二人の時間でシズちゃんを好きだってことに関しては隠すことなんてないし。
「だいたいからして手前は21歳じゃネェだろ 」
「何言ってんの、シズちゃん。
 そういうのは本人の心意気次第でどうにかなるもんだよ。
 ほら、そういうの得意だから俺、情報屋さんだしね 」
「情報屋だろうがなんだろうが、年なんかごまかせるわけないだろうが 」
 それはそうだけど。
 本来の年齢はごまかせなくても、見た目で偽りの年齢を騙るくらいならできるわけ。
 まぁ俺みたいな仕事してる人間にとっては下に誤魔化すよりも上に誤魔化すほうが取引上楽なこともあるんだけどね。
 なんていうか、だいたいからして取引相手は年上も多いんだからさ、別にちょっと上に誤魔化したくらいじゃどうにもならないってことだよ。
 それならミステリアスな年齢を騙ったほうがいいでしょ。
 俺が高校生に見えるっていうんならそれでもいいけど、それじゃ明らかに変態さんに見えるしさ。
「手前は自分が変態だと思ってねェってのか 」
「アレ、心の声が聞こえちゃった?
 それともそのくらいシズちゃんってば俺のこと分かってくれてるってことかなぁ 」
 ちょっと冷やかしたつもりが、ベッドでうつぶせたままシズちゃんの身体がプルプル震えてるのを見て、少しだけ身を引いた。
作品名:子供みたいな 作家名:ちえり