子供みたいな
なにそれ。
この期に及んでまだ俺に隠してる何かがあるわけ?
そう思ったら暴きたくなる。俺は独占欲の塊だから。シズちゃんの意識が他に向いてるなら俺だけに向かせたいんだ。
それの何が悪い。
だって、シズちゃんは俺のだから。
ゆっくりとベッドに置いた手に体重をかける。ギシッと軋む音がしたと思うとそこに視線をやったシズちゃん。スキありとガラ空きの首元に吸い付いてやる。
「お、いっ……イ、ザッ…… 」
抵抗の力はさほど強くない。シズちゃんならこんな時に俺を突き飛ばすなんていともかんたんなはずだ。それでもそこで力の加減がきいてるってことはちゃんと受け入れてくれてるってことでしょ?
シズちゃんに纏うシーツを左手でベッドの下に落とす。
これでシズちゃんを隠すものなんて何もなくなる。
「ねぇ、俺の知らないトコってどこかな?
教えてよ、シズちゃん 」
ねっとりと跡の見える首筋を舐め上げる。このままこれが残ればいいのに。押し付けるように所有の証。
少し震えたシズちゃんの手が堪えるように俺の肩に少し食い込む。このまま力を入れたら俺なんてかんたんに折れちゃうのに。でもシズちゃんはそうしない。
どうにか何かを残したいのは俺もシズちゃんも同じなんだ。
俺はシズちゃんを壊したい。
シズちゃんは俺を壊さないように。
その本質の部分が同じ……なのかはシズちゃんの気持ちを聞いてみないと分からないけど、たぶん。俺が聞いても素直な答えが返ってくるとは思えない。
ほんっとに素直じゃない。
そう言ったら手前に言われたくないって睨まれそうだけどね。
「なんか震えてるね。
俺が恐い? 」
ほら、今だってたぶんつよがり。
「恐い訳あるかよ。
たかがノミ蟲だろうが 」
ふうん、たかが、ね。
シズちゃんが俺に答えを教えてくれないなら、どうにか聞くしかないよね。その口が俺に何かを求めて欲しいから。
もし言ってくれたら、全力で応えてあげるのにさ。つれないね。
「じゃあさ、キス。
してもいい? 」
ギロリと眼光が俺に向く。普通の人間なら池袋最強たる平和島静雄にこんな視線を向けられたらたじろぐとこだろうけど、俺にはそんな風に思えない。
だって、そんなのとは裏腹に手のひらから伝わるのは愛情そのものだから。
「返事は?
さすがの素敵で無敵な情報屋さんでもこれだけは譲れないよ。
シズちゃんの気持ちは仕事とは全くの別もので、誰かの口から仕入れた情報じゃ信用なんかできやしないんだ。君の口から直接聞かなきゃ価値なんてカケラも存在しないものだ。
「ダメだって言ったら……」
小さな声でそう言うそれには何とかもがく姿しか見えない。でもあがきもさせてやらない。
だって。
触れる部分からはそんな抵抗は感じられないんだから。
あと5センチまで口唇を近づけて、その口元で笑う。それにシズちゃんの身体がいっそうこわばるのが分かる。
ふふっ、かわいいんだから、シズちゃんは。
「嘘はダーメ。
だってホントはシズちゃんもしたいでしょ、キス 」
シズちゃんに対して余裕の笑みをいうのを見せつけてやる。
悔しそうに奥歯をかみ締めるその姿に俺は心の奥底からあふれ出て止まらないほどに情欲をそそられる。
本当は分かってるでしょ?
でもそれに気持ちが対応しきれないくらいに俺の言葉を意識しまくってるっていうんなら、それはそれで愛しいよ。
だって俺にもそんな余裕なんか本当はないくらいにシズちゃんの一挙一動を意識しまくってるんだからさ。