とある転生者の話(第一部)
第五話 メタルコートとストライク
ストライクはボクと一緒にいた。
しかし、かなり意地っ張りなのか、無口だった。
必要以上は話さず、後ろにスッと立っている事が多かった。
別に嫌われてるとかじゃない。むしろ好かれてる方だと思う。
ボールには入れてない、てか入りたがらないんだ。
いや、入ってくれるんだが…すっごく嫌がっている。
基本、ポーカーフェイスなんだけどちょっとだけ変わるんだ。
ほんのちょっとだけどね。
彼が生まれて3年。ボクは8才になった。
今日は雨。
暇で暇で暇すぎた。だから…
『…アユム、やはり不味い…部屋に戻ろう』
ストライクが言う。
父さんの書斎でめぼしい物を探すことにした。
「だいじょーぶだいじょーぶ、父さんは今日は遅いって言ってたし」
『……しかし…』
「ほら、ストライクの進化に必要なものとかありそうだし!!」
『!?……進化…出来る…?』
「うん、ほら、これ」
ボクは子ども用図鑑のストライクの欄を見せた。
知ってるか?この時代、もう400匹以上居るんだぜ?
『……ハッサム…』
「カッコイイだろ?今でも十分カッコイイけど更にカッコよくなるんだ」
なにせボクが一番好きなポケモンだからな!
「だから…ね?」
『……父上には内緒にする』
「よっしゃ!じゃあ【メタルコート】っていうアイテム…あった、これこれ」
図鑑にあったアイテムを見せる。
「これを探そう!」
『……頑張る』
ごそごそ
ごそごそ
「んー…父さんなら持ってそうなんだけど」
『……父上は、万能ではない』
「いやいや、父さんは万能だから」
非公式だけど様々な地方のチャンピオンに勝ってるし。
『……その万能じゃない…』
「いや、まぁ分かってたけ…お?」
箱の中をゴソゴソしてたらそれっぽい物を見つけた。
「これじゃね?」
『……図鑑のソレにかなり似ている』
「よし、これで第一段階完了だ!」
『……第一?』
「あぁ、第二段階が…あぁ!しまった!!」
重大な事実を忘れていた。
「交換相手がいないじゃん!!」
『……交換、される…』
ストライクが黙った。
「……あぁ、進化条件が【メタルコートを持たせて交換】だからな」
ストライクは言った。
『……そこまでして、進化したくない』
「…ストライク」
『……相棒、だから』
そう、一番の悩み。
ストライクからすっごく好かれているのとか、言われなくても分かってた。
だから【交換】という条件はすごく難関な問題だった。
「うん、わかってる。だから持ってるだけでいいよ」
『……済まない』
「いや、もしかしたら他の進化方法あるかもしれないじゃん?」
なにせポケモンってのは未知の領域が多いからな!
『……』
「ストライクが嫌って言ってるんだ、絶対他の方法を探すからさ」
しゅん、としてしまった。
期待してたもんな…。
その後、やっぱりバレました。
二人でお説教を喰らいましたが、メタルコートはくれました。
作品名:とある転生者の話(第一部) 作家名:紗雅羅