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『無償の愛』は素晴しいものらしい。
愛する人のために、見返りを求めずに尽くすのが美徳らしい。
ギブ&テイクが染み付いた世知辛い世の中『無償の愛』は素晴らしいもんなんだと。
くだらねーって思ってた。アホくさって。
だって、良く考えてみろよ。
無償ってのは、自分に割り振られた限りある大事な時間を削って、自分には何の得にもならない労力を払って、せっせと動いて働いて頭を使って、そうして出来た成果を自分以外の奴にゴッソリやって、んで、見返りは何もいらないって言う事だぜ?
無駄だ。時間も労力も、何もかも。
何一つ自分の為にならない事をするなんてそれこそ愚の骨頂。
そんなボランティア精神溢れた奴は早々に自滅すんのがオチだ。
俺はごめんだ。
俺は、俺の為に。
俺の、俺という国の為に。国民の為に動いている。
戦争で勝利すれば国が潤う。領土が広がる。名が轟く。
体調崩して辛い思いしなくても良くなるし、上司に叱咤されることもなくなる。
他の国に一目置かれれば、容易に争いをふっかけられなくなる。
『国』と言っても地盤が危うい俺みたいな『モドキ』は余計に『無償』とは縁遠かった。
そんな無駄な事してる暇も余裕もない。
『無償の愛』何て、おとぎ話の中で十分。


だった。


進境の変化ってヤツは恐ろしい。
俺は今、その馬鹿にしまくってた『無償の愛』の為に日々を生きている。
極寒の雪国。いろいろと不自由。てか、自由な事はなーんにもない。
呼吸やまばたきさえ時に吹雪にさらわれる。
仕事に励んでみても原始時代みたいな道具しかないし。どれもこれもアナログ過ぎて手間が異様にかかる。
無駄だ。時間も労力も、何もかも。
で、近くに寄るだけで虫唾が走るような笑みを浮かべる子供に付き合って、毎日毎日睡眠不足。
食いモンも碌にないし。雪が叩きつける日にも暖炉には燻った薪が転がってるだけ。
飢えと寒さに耐え続けて体はガタガタ。筋肉は削げ落ちて、見るも無残。
夏は夏で寒さに脅かされる事は無いが、暑さで意識がぶっ飛びそうになる。
俺はどちらかといえばまだ寒さに耐性があるはずだから、そう考えれば冬の方がまだましなのかも知れない。ほんの1mmぐらい。
365日自分に何も得にもならない倹約と節約。我慢三昧の日々。
この全ては弟の為に。
俺がここにいればあいつの安全は保障される。
俺がイヴァンの気を引いていれば、あいつはここに呼ばれる事はない。
あいつがこんな辛い目に遭わなくてもよくなる。
今の全てはヴェストの為。
なんて素晴らしい。
自分に割り振られた限りある時間をつかって、俺が出来る最大の労力を払って、必死に動いて働いて頭を使って、それであいつが、ヴェストが幸せに過ごせるなら。
こんなに素晴らしい事はない!!



素晴らしい。
本当に ホントに素晴らしい。



ロシアに居候して早20年。
今日俺は
20年ぶりに弟を見た。


作品名:お願い 作家名:akira