ミッションインポッシブル3パロ
3.
車から飛び降りた小十郎は、パニックになりながら病院の中に駆け込んだ。
握りしめた携帯電話の中の、彼の一番大事な番号には相変わらずつながらない。
まさかという気持ちが、一気に確信と恐怖に変わろうとしていた。
『その頬の傷、片倉小十郎だな』
『お前の恋人をなぶり殺しにしてやる』
「真田、政宗様は!?」
「・・・政宗殿なら先ほど帰られたが・・・どうしたのか、片倉殿?」
政宗の同僚の真田が、きょとんとした顔でこちらを見ている。
「なんでもない!」
あちこち探したがどこにもいない。そのとき、携帯に連絡が入った。
ディスプレイに表示されたのは、彼がよく知る人の名前。
「政宗様!」
彼の悲鳴にも似た呼びかけに答えたのは、先ほど彼が取り逃がした男の声。
『お前の恋人は預かった。今から48時間以内にブツを手に入れてこの番号に連絡しろ』
「待て!」
無情にも電話は切れた。
次の瞬間、駐車場に入って来た車からわらわらとサングラスにスーツ姿の男が飛び出す。
「片倉小十郎。お前を拘束させてもらう」
次の瞬間激しい衝撃を受けて、彼は倒れた。激痛で口を利く事すら出来ない。
待ってくれ。政宗様が。
そう言おうとしても、出てくるのは喘ぎ声のようなモノだけだった。
4.
「小十郎、どうしたんだ!おい、大丈夫か!?」
病院の中で病室を聞かれて答えようとしたところで記憶がぱったり途絶えている。
気がついたら、椅子に縛り付けられガムテープを口に貼られていた。
どうやら自分は誘拐されたらしい。
妻が見張りを撃ち殺し、飛び込んで来て拘束を外してくれた。が、様子がおかしい。
未だに状況を把握できていない政宗は、小十郎に問いかけた。
「あ・・・頭が・・・頭に爆弾が」
小十郎はうずくまり、頭を抱えている。
「爆弾!?どういうことだ!?」
「・・・そいつの頭に・・・爆弾を仕込んだ・・・後四分もすれば・・・息の根を止めるぞ」
胸に一発、弾丸を食らったせいで息も絶え絶えの男はにやりと笑った。
「shit!この、クソ野郎!」
政宗は怒りのあまり、男を蹴飛ばした。体力を使い切ったらしく、男が静かになる。
「小十郎、お前の頭の爆弾を止める方法は!?」
「電流を・・・電流を流せば・・・」
「電流を流して回路を焼き切るのか!?そんな事をしたらお前の心臓が・・・」
「あなたなら大丈夫です、政宗様」
小十郎はまっすぐ政宗を見つめた。
「あなたなら・・・あなたなら俺を、連れ戻してくれると信じています」
血まみれでぼろぼろの彼は、それでも思わず見とれてしまうほど格好良かった。
「・・・後でなにもかも話してもらうからな」
そう言いながら彼は、コードをひきちぎった。小十郎は銃を渡す。
「政宗様、これはグロック17です。セーフティは外しておきましたので、引き金を引くだけで
弾が出ます。弾切れになったらここのボタンを押してマガジンを出して、新しいのをいれて
スライドを引いてください。懐中電灯のバッテリーを換えるのと同じ要領です。できますね?」
「まかせとけ。小十郎、このコードをしっかり握れ。スイッチを一瞬入れてすぐ切る。
心臓停止状態になったらすぐに心臓マッサージして呼び戻してやる。・・・必ず生きて帰るぞ」
「・・・はい」
作品名:ミッションインポッシブル3パロ 作家名:taikoyaki