黒と白の狭間でみつけたもの (13)
優しい笑顔で、タッくんの頭をなでてくれた。
ゾロアが嫌そうにその様子をみていたのが気になったが、それ以上になんだか照れくさかった。
「さて、あの完璧な数式でつくられた円形と、放物線が美しい噴水の前で、トウコを待っていようか」
そう言って、噴水の側に駆け寄ったNを、タッくんと、ミーナはゆっくり追いかけた。
言うことはちょっと変だけど、こいつも優しい奴だよな。
白い円形の噴水は、こっちの方がずっと大きいのだけれど、サンヨウシティでみんなと遊んだ時の噴水と、少し似ていた。
そういえば、あの街からずっと3匹で旅をしてきたんだったな。
噴水の縁に腰かけながら、なんとなく今までの旅ことを自然と思い出していた。
『何考えてるの? 楽しそうな顔してさ』
ミーナが言った。
無意識に、笑っていたみたいだ。
『トウコと出会ってからの旅のことを考えてたんだ。結構いろんなことがあったなぁと思って』
『ふ~ん、面白そうじゃない。聞かせてよ、旅の話』
『ああ、いいよ。トウコが来るまでだけれど』
公園に入ってくる人を時折眺めて、トウコを待ちながら、タッくんはミーナに向かって、話し始めた。
はじまりはカノコタウン。
ゆっくりと話し始めた旅の話は、思っていた以上に盛り上がって、ミーナは楽しそうに目をキラキラさせていた。
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (13) 作家名:アズール湊