世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律x高野 ファイナル】 ---------------------------
「ハァー?何今更言ってんだ!泣きごと言う前にとっとと手を動かせ!」
ガチャンッ!
「高野さん、吉川千春との連絡が途絶えました。
家宅捜査に行ってきます」
「高野さん!斉藤先生のところのアシが風邪でダウンしたって!どうする?!」
「印刷所行ってきます!」
「美濃!とりあえず印刷所の連中の口を塞いでおけよ!!」
「木佐!手当たり次第アシに連絡して斉藤先生のところに廻せ!」
丸川書店 エメラルド編集部では修羅場も修羅場
鬼さえも近づけないドス黒いオーラをかもし出していた
校了最終日の今日、原稿を落すことが出来ない状況下で、バイク便で届いた原稿に写植を貼り
次々に印刷所へ滑り込ませる
「手伝いますよ」
誰も近づけないエメ編へ一人の若者が声を掛ける
木佐から原稿を奪い、慣れた手つきでカッターを使い、写植を貼っていく
「り・・・律っちゃぁぁぁん!!!!」
顔面蒼白(でも肌つやピチピチ)の木佐は、隣の席に座った律に泣きながら抱きついてきた
「う・・うわっ!危ないですよ木佐さん。俺今カッター持ってるんですからね!」
その声に反応して、高野が顔を上げると、律が何事もなかったように座って作業をしている
目を見開いて驚いていると、井坂がヒョロヒョロと近づいてきた
「今日からエメ編に新人採用したから、後はよろしくな」
そう言って、固まってる高野の肩をポンポンと叩き、スタスタと部屋を後にする
我に返った高野はフロアーに響き渡る程の声で指示を出した
「木佐!泣く暇があったら手を動かせ!」
「小野寺!斉藤先生のところに行って原稿をもぎ取ってこい!」
「「はい!」」
*
無事(?)入稿完了したエメラルド編集部には、高野と律だけの二人になっていた
羽鳥、美濃、木佐は原稿を手に印刷所へ向かい、直帰していた
高野が机に突っ伏していると、律がコトンとデスクに缶コーヒーを置いた
「お疲れ様でした」
顔を上げた高野は律の手を取り「何で昨日話さなかった?」と尋ねた
そう、この修羅場中にも関わらず、高野は一旦家に戻り律と逢っていたのだ
律はクスっと笑いながら
「だって、事前にネタバレしたら驚かないでしょ?」
今朝の高野さんの顔面白かったなぁーとケラケラ笑う
そんな律を見ながら「帰るぞ。話しは家に着いてからだ」と言って腕を引っ張り部屋を後にした
*
食事も終わり、風呂に入ってサッパリしたところで、尋問タイム開始
律を膝の上に乗せ、ガッチリホールドし問いただす
「最初は丸川に戻る気は無かったんです。
でも帰国後すぐに井坂さんから電話があって、俺は『休職中』だから戻ってこいって言われたんですよ」
「だったら何で直ぐに戻らなかったんだ?」
「諸事情・・・と言うか、小野寺側の後始末が微妙に残ってまして・・・
てっきり大丈夫だと思って帰国したんですけどね。
引き継いだ新しい社長っていうのが、これまた細かい方で・・・・」
手子摺ってしまいました。と肩を落とす
「本当はもっと早めに合流するつもりだったんですけど、
結局ギリギリまで掛って、今日になりました。
ごめんなさい・・・」
「いいよ。別に怒ってないし」
律はグイッと顔を上げて高野のを見る
「だけど、これだけは約束して」
高野は律の左手にある指輪を弄りながら話しを続けた
「これからは些細な事でもお互い隠し事せず話すこと」
約束して。そう言って、薬指にチュッとキスをする
「はい。政宗さん」
律も高野の左手を取り、薬指にキスを落す
二人だけの約束
これからの人生、何が起こるか分からないけど、これだけはハッキリ言える
-- 律、愛してる。一生お前を離さない
-- 政宗さん。俺も愛してます
end
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico