水辺にて ~ひよ恋二次創作~
「は? なんで俺がそんなとこ行かなきゃならないんだよ!」
「だって……ひよりに誘われたんだもん! 結心も一緒だし……」
「三人でいけばいいだろうが!」
「……それってなんか寂しいじゃん! 私だけ仲間外れなんて嫌だよ……」
「だからって……他の奴誘えば……」
「私は、二戸部君がいいの!」
思わず、大声で二戸部君に叫ぶ私。
……ってなにやってんの?
私、恥ずかしすぎだよ。
「た、他意はないんだよ? ただ、私たちその……『ひより同盟』じゃん!」
あわてていい訳をする私に、
「勝手にへんな同盟作るなよ……。っていうか、そういうところ、やっぱ西山そっくりなんだな……」
冷めた口調でいう二戸部君に、
「えっ? ひよりもなんか……。 あっ、そうか! 『ちっちゃい同盟』だったっけ?」
「違うって……。あいつは、『人見知り同盟』とか言い出して……勝手に俺を仲間にしてひっぱりだして……」
そういえば、そんな話……ひよりから聞いたっけ?
「でも、あってるでしょ? 二戸部君なんだかんだで、ひよりのこと意識してるもんね……」
そういうと、
「意識なんかしてないし……だれがあんなちんちくりん……」
二戸部君の顔に少し赤みが帯びている。
「あれなんでしょ? 二戸部君ってその……『ツンデレ』なんだよね?」
「『ツンデレ』とかいうな!」
真夏の太陽が容赦なく私たちを照りつける。
そんななか、私たちはこんなやり取りを繰り返していた……。
その時、
「あっ、りっちゃん! コウくん! どうしたの? 2人して?」
ひよりが後ろから声をかける。
「いや、そのさ、明後日、プールに行くじゃん? で、二戸部君を誘ってたんだよ」
「そうなんだ! コウ君、これるの?」
ひよりがあどけなくそう尋ねると、
「……だから、俺がいっても……」
そういいかけた途端、
「そんなことないよ! コウ君も着てくれたら、私、嬉しいよ!」
満面の笑顔でいうひより。
「あんた……隙ありすぎ……」
ボソッ。とつぶやく二戸部君に、
「? 隙って」
ひよりが尋ねると、
「……いいよ。別に。 でもあんたは本当にいい訳? 広瀬と2人っきりがよかったんじゃないの?」
そういうとひよりは顔を赤くしてい、
「そ、そんなことないよ……。それに私、りっちゃんとコウ君がカップルになったら嬉し……」
私は急いで、ひよりの口を塞ぐ。
「ひ、ひより……。何いってんの?」
私がひよりに耳打ちする。
「ふぅん。まあ、いいや……。巻き込まれるのは慣れたし」
そう二戸部君がいうと、
「やった! みんなで楽しみだね!」
満面の笑顔で返すひより。
☆☆☆
「わたしがあんだけ誘ってもダメなのに、ひよりに言われたら一発なんてね……」
ジト目で二戸部君に私がいう。
「な、なんだよ……」
「……まぁ、いいけどさ……結局一緒に行けることになったんだし……」
「……なんか、怖いな、お前」
「怖いって失礼でしょ?」
暫く沈黙がつづいたのち、
「よし、じゃあ約束!」
私が、小指を差し出す。
「……何のまね?」
「『ゆびきりげんまん』よ! ほら、さっさとする!」
そういうと私たちは指きりをして、別れた。
☆☆☆
「訳わかんないな……」
俺は、中野たちと別れて、家で考えていた。
「西山をみてると、なんか素直になれるっていうか、俺じゃなくなるっていうか……自分でも分かんない……」
「それに、中野も、なんで俺のことひっぱりだしてくるんだ? なんか、あの2人と一緒にいるとほんと、自分が自分じゃないよな感じになる……」
「しかし、プールか……何年ぶりだろ……」
☆☆☆
翌々日。
天気は快晴。
ギラギラとコンクリートを照りつける光に、めまいすら覚える。
「なぁ、コウ君」
今、男子更衣室の中で広瀬と一緒だ。
「なんだよ」
「コウ君はさ、りっちゃんのこと、好きか?」
「はあ?」
俺がそ返すと、
「なんだかんだで、仲良く見えるんだよな……。それに、その方が俺も安心だし……」
「何が安心なんだよ?」
「その……ひよりんのこと、好きとか……じゃないよな? 一応、確認」
そういう広瀬、顔真っ赤。
「……なんども言わすな! あいつはお前しか見てないだろうが!」
そういうと、
「今の答えになってないような……」
そう広瀬が小声で不満を漏らす。
俺は西山のことどう思ってるのかよくわかんない。
……っていうか、そもそも人を好きになったことがない。
だから、西山も、広瀬も、中野も……なんか自分とは違う世界に住む人……
そんな感じ。
☆☆☆
「ごめん、待たせた?」
既にプールサイドにいた男子2人に私は声をかける。
「別に……」
いつも通りの返事が二戸部から返ってくる。
「? ひよりん、なにりっちゃんの後ろに隠れてんの?」
そう結心が私の後ろに回って声をかける。
「ひ、ひゃあ!」
へんな声を上げるひより。
「かわいいぞ、ひよりん」
そう結心はひよりに声をかける。
「あ、ありがとうございます……」
小さなの声でいうひより。
ほんと、かわいらしい……カップルだなぁ。
「二戸部君はなんか感想ないの?」
私が尋ねると、
「別に……」
いつも通りの答えが返ってくる。
「ふぅん。二戸部君は女の子に興味ないんだ?」
わたしがからかい口調でいうと、
「別に……」
また、この口調が返ってくる。
「じゃあ、その……男同志がいいわけ?」
そう尋ねると、
「何故そうなる?」
とやっとまともに答えが返ってきた……。
「だってね、水着姿の女の子になんも感じないなんて……変でしょ?」
「……なんも感じてなくはな……」
そういいかけて、あわてて口をつぐむ二戸部君。
「へぇ~。じゃあ感想は?」
私がそういうと、
「へそが寒そうに感じる」
バンっと私は二戸部君の背中をたたいた。
今日私が着ている水着はセパレートタイプ。ひよりは、ワンピース。
機械的な感想だ。
「そうじゃなくて!」
そういいながら、私は無意識に二戸部君の腕をひっばる。
「ち、ちよっと……」
あわてる二戸部君に、
「どう、感想は?」
と尋ねる私。
「……アンタ、自分が女ってこと、自覚したほうがいいんじゃないの?」
そう二戸部君に言われ、今の体制を確認する。
なんか私が、二戸部君を引きづり、抱えているような状態。
二戸部君の顔が至近距離にある。
「きゃあ」
そういって、私は二戸部君を離す。
「……まあ、その、きれいなんじゃないの……」
ほんとうに小さな声だけど、確かに聞こえた。
二戸部君の顔を確認してみると、ほのかに赤い。
「あ、ありがとう」
私はお礼をいう。
そんな光景をひよりと結心はジッと見ていたようで、
「なかいいな、コウくんとりっちゃん!」
「やっぱりコウ君はりっちゃんのことが好きなんだね!」
そう声をかけられる。
「……別に」
そう答える二戸部君。
作品名:水辺にて ~ひよ恋二次創作~ 作家名:kureha