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世界一初恋 高x律 記憶喪失

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--- 俺は、生まれてから17年分の記憶が無かった

当時高校三年だった俺は、両親の離婚を期に母親の実家である四国へと引っ越した
丁度その頃交通事故に遭い、頭を強打した俺は、以前の記憶を失った

記憶を失っても、別段不自由だとは思わなかった
だが、時折無償に人恋しくなる事があった

これは俺の性格なのか、
それとも俺という人格を構成した家庭環境の影響なのか定かではないが、
他人と一定の距離を保ち、関心を持たず、傷つくことを極端に恐れていた

東京の大学へと進学した俺は、
記憶を無くす前の同級生だと名乗る人物から、当時の様子を聞いた

毎日放課後は図書室で閉館まで過ごしていたこと
特定の仲間を作ることはなく、物静かで女子からも人気があり、
成績が良かったと皮肉交じりで聞かされた

ただ、高校三年の頃、ある下級生の男子生徒と仲良くなり、
一緒に図書室で本を読んでいたのが印象的だった。と当時を振り返りながら話す

記憶が無い俺は、「ふーん」と相槌を打つことしか出来なかった

大学を卒業し某出版会社へ就職したが、周囲と意見が合わず衝突ばかりしていた
その時、同じく大学で知り合った友人『横澤』の紹介で丸川書店へ転職した

配属された部署はエメラルド編集部
俺は編集長として、会社のお荷物少女漫画部門を一年で立て直し、現在に至る

記憶が無くとも体制に影響しないと、無理に呼び戻す事なく10年を過ごしていた



丸川書店 エメラルド編集部 -- 通称『乙女部』

その名の通り、編集部内はピンク色に統一され、ぬいぐるみやファンシーな小物溢れる部屋だ
”郷に入ったら郷に従え”
まずは乙女の気持ちに近づく為に行った行動だったが、部員からの評判は良い

エメラルド編集部には俺を含め5人の編集者がいる
お母さん的存在、副編集長の羽鳥芳雪
どんな時でも笑顔を絶やさない美濃奏
外見は高校生、実は三十路の木佐翔太

そして・・・
最近中途採用された元小野寺出版文芸部所属 小野寺律

--- 俺の封印された記憶が甦る切っ掛けの人物だった