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GUNDAM ALTERNATIVE 第2話「Eye」

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大国同士の全面戦争の時代は終わり、先進国の勢力は疲弊した。国々は衰退した国力を立て直すために周辺国との連合協定を結び始める。そして、北米連合、ユーラシア統合共和国等の連合国達が産声を上げた。しかし先進国が衰退したことでこれまで抑えつけられていた中小国の紛争が激化。世界は大きな火種を抱えテロリズムと紛争の恐怖にさらされていた。

・南米エリア
「パナマ駐屯地」は北米陸軍が南米の情勢の鎮静化を名目に介入した際に設営した暫定的な基地だ。駐屯地とは言ってもその規模は一般的な基地とほぼ同じであり、航空部隊や歩兵部隊等の様々な部隊が所属している。まさに南米情勢の鎮静化の一大拠点である。その中に第609試験科部隊の名もあった。

・パナマ駐屯地指令室
「奴は何か吐いたか?」
サム少将が指令室で書類に目を通しながらウィリアム少佐に聞いた。すでに齢57であるが、その眼光は猛禽類を思わせるほどの鋭さを持つ。いわゆる士官コース、キャリア組と呼ばれる類の人間だが高みに立つ人間の持つ傲慢さは無く威厳のある雰囲気を醸し出す男だった。現場の声を聞き、それを現場に生かす、理想の上司と部下からは呼ばれているが、その現場主義の思想ゆえに上層部からは煙たがられモビルスーツというまだ成熟し切らない技術を持つ兵器を扱う部隊を一手に統率するという、言い換えれば体の良い責任の押しつけられ役を強要されている苦労人の側面があることは一般の兵士達の知ることではなかった。ウィリアム少佐はそんな機甲師団所属モビルスーツ部隊司令官、サム少将の内情を知る人物の一人だった。
「二時間程度では何も吐きませんよ」
ウィリアムはサムの書類を見る目線が尖るのがわかった。
「やつらか?」
やつら、ウィリアムにはそれがどの組織を指すのか瞬時に悟った。
「背広の連中が連れて行きました、重要参考人という名目で。やけに嗅ぎつけるのが早かったですな」
「ハイエナと同じだ、あの連中は。」
サムは眉を潜ませながら言った。彼のCIA嫌いは軍内部では有名である。自分たちが突き止めつつあった真相を持ち逃げされることも珍しくなく、闇に葬られ、後々垂れ流されるカバーストーリー(偽情報)を聞かされることになる。これを快く思う連中は政府の高官たち以外にはいないだろう。
「連れていったのは、“例の事件”に関連が?」
「さぁな、そうであろうとなかろうと、革命軍にモビルスーツを売り渡した組織を調べあげるにはもう少し時間がかかる、ということだ」
“例の事件”、このキーワードはごく少数の人間の間でしか交わすことのできない言葉だった。
「そのようですな、で、今回の作戦は?」
サムはきつく引き結んだ口元を少し緩めた。
「察しの良さは今でも健在か。うらやましいよ、全く」
そう言いつつウィリアムに作戦内容が記録された小型のメディアを手渡した。
「失礼します、サム少将」
ウィリアムは敬礼をして、部屋を出た。
 サムは椅子から立ち上がり窓に設置されたバインダー越しに外の景色を見た。今日は快晴らしい。その時、サムは珍しく“例の事件”について回想してみた。それは寝耳に水というものだった。突如受けた出動命令。内容は中米で旅客機が何者かによって撃墜されたというものだった。当時、現場に駐在していた歩兵中隊の指揮官を務めていたサムは乗組員の救助任務にあたった。そのサムが現場で見たもの、それは墜落した旅客機の残骸とモビルスーツや戦車の残骸だった。そのモビルスーツはすぐに北米軍の訓練部隊所属の機体と判明し、戦車は旧式のもので登録番号が抹消されていたことから現地ゲリラ等の所有品と疑われた。サムが現場の捜査を命じようとした瞬間、ヘリコプターの大群が
乗り付けた。そこから降りてきた連中は現場の物品を積み込み始めた。制止しようするサムにスーツ姿の男が書類を突き付ける。書面の下部には北米連合大統領、直筆のサイン。男は国防上、重要な証拠品があると言い、暗に介入するなと示した。サムはすぐにこの男はCIAだと悟る。   
一部残骸を残しCIAの輸送ヘリは無遠慮な騒音をまき散らしその場を去った。生存者はただ一人、モビルスーツのパイロットだった。程なくしてCIAから公式の発表が出る。「旅客機は南米の情勢を脅かす革命勢力が北米の介入を不服とし北米から出発した機を撃墜、当時、付近で演習を行っていたモビルスーツ訓練部隊が援護に向かうがそれも虚しく全滅してしまった」と。これに世論は南米の情勢鎮静化を支持し軍も大規模な介入を行うようになった。しかし、国防省にいた一部の人間たちはこのことに不信感を募らせていた。CIAの迅速すぎる介入、調べる間もなく持ち去られた現場の物品、上手くいきすぎている。国防省の人間達はその唯一の生存者のパイロットを調べることにした。だが、彼が話したセリフは捜査を暗礁に乗り上げさせた。
「なにも憶えていない」
軍医から解離性健忘と診断されたパイロットは虚ろになった瞳を取り調べ官に向けた。そのパイロットこそ・・・。

・パナマ駐屯地モビルスーツ格納庫
「おい、マット。セットの仕方、間違えるなよ」
「わかってますよ」
整備員の声に答えながらマットはモビルスーツ[ヘイスト]の肩に立ち、側頭部にあるバルカンユニットのカバーを開けた。
この格納庫ではモビルスーツたちは膝立ちの状態で駐機してあった。起動状態でないモビルスーツは各関節にロックをかけられており緊急時のパイロットの素早い搭乗が行えるようにと考えられた結果、膝立ちの状態になったというのだ。全長8メートル弱あるモビルスーツが屈んだとはいえ5メートル強の高さである。その位置から格納庫を見渡すと巨人の巣窟のようだ。
「ボサっとしてねぇで、20ミリセットしてくれ」
「了解です」
マットはバルカンユニットの基部にあたるスリットの部分にベルト状に連なった20mm弾を差し込む。
「では、お願いします」
「あいよ!」
整備員の合図と共に駆動音が走り、20mm弾がバルカンユニットに巻き取られていった。マットは向かいに駐機してあるダニーが駆る二号機の姿があった。機体の足元にはダニーとアメリアの姿があった。口論しているようだが給弾の音で耳に届かない。
「さすがのダニーもあの火薬庫女には手も足も出ないか」
整備員はマットと同じところを見ていたらしい。
「どうだ?マットああいうタイプの女は」
「いや、どうにもあれは・・・」
「だろうな。おめぇみてぇなヘタレには似合わねえよな」
他の軍隊のことは詳しくわからないが北米軍に関していえば男女比は9:1で圧倒的に男性比が高い。女性の大半は後方に務める割合が大多数で広報や事務関係が主である。ごく少数ではあるが前線に出る補給部隊や戦闘部隊にも女性隊員はいる。しかし、前線に出撃することもある試験科部隊にメーカーの人間がいることは他では聞かない話だ。それにしてもあそこまで高飛車な性格の女性も珍しい。20mm弾の巻き取りが止まると、コクピットから給弾の終了を知らせる電子音が鳴る。それと同時に機体の足元からスティーブン隊長の声が聞こえた。
「30分後に第二ブリーフィンブルームに出頭だ」

・第二ブリーフィングルーム
作品名:GUNDAM ALTERNATIVE 第2話「Eye」 作家名:josh