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GUNDAM ALTERNATIVE 第2話「Eye」

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ブリーフィングルームにはマット達、試験科部隊の他にもモビルスーツ部隊の面子の姿があった。彼らはモビルスーツ[ヘイスト]の前身に当たる機体EMS-05[ウォード]を主戦力とする部隊である。
「え〜と、そんじゃ、今回の作戦を説明しますね」
ウィルソン少佐はいつも通り頭を掻きながら壁に設けられた大型ディスプレイの前で口を開いた。
「今回の作戦は革命軍の補給基地を叩く。ここを叩くことにより革命軍の補給路は断たれ、政府軍が優位に立つはずである・・・ということなんだけれども、問題の作戦内容なんだけど、相手方の拠点は森に囲まれているうえに大型のジャミング装置を設営している。だから歩兵部隊も航空部隊も近づけない。そこで609試験科部隊には威力偵察を行ってもらう。609は先行して敵勢力と交戦中にジャミング装置とその他施設の座標データを後方に控えている砲撃戦装備の[ウォード]部隊に報告し一気に砲撃しその間に609は拠点の制圧を行うという作戦なんだけど・・・。なんか質問ある?」
一瞬の沈黙の後、ダニーが口を開いた。
「大型のジャミング装置があるのにどうやって、後方に座標の報告をすりゃいいんだ?短距離なら赤外線通信で行けるけどよ、長距離じゃ無理だろ」
彼の質問はもっともだった。妨害電波を出すジャミング装置が近くでは至近距離で行える赤外線通信では問題はないが長距離無線は電波であるため妨害電波が散布されている中にあっては機能不全に陥ることだってあるのだ。誰もが彼の答えを待った。ウィルソンは鼻を掻きながら言った。
「糸電話だ」
部屋にいたほぼ全員が耳を疑った。
「609は二手に分かれ一機は新装備で情報を収集し後方に伝える役割をする。後の二機はその一機の護衛を行う。情報の伝え方は通信用ケーブルを通して行うということだよ、わかった?」
なるほど、それで糸電話か。ダニーは聞き返した。
「新装備というのは?」
「それはあとでアメリア技術中尉から説明がある。他に質問は?」
誰も声を上げない。
「それじゃ、後は各部隊の隊長さん、よろしくね。あと、前回の作戦のこともある、敵さん、モビルスーツを使ってくる可能性もあるから。」
そう言ってウィルソン少佐は足早にブリーフィングルームを去った。なぜ、この日和気味な男がモビルスーツ隊を統率する立場になったのであろうか、マットは不思議で仕方なかった。
・パナマ基地モビルスーツ格納庫
輸送機「オスプレイMk-5」にヘイストが搬入されている。可動式のツインローターを左右に備えた本機はヘリコプターよりも高速移動が可能であるが本機が試験機だったころには墜落事故が相次ぎ、「羽根つき棺桶」たる仇名を頂戴していたが、パイロットの訓練の改善やOSの進化によって安定した飛行を可能にしていた。このMk-5は機体の胴体左右にモビルスーツ用のコンテナを装備しており一機に二機のモビルスーツを搭載可能な点を特徴としている。
「今回の任務では一号機及び二号機に新装備を施しました」
資料片手に淡々と説明するアメリア技術中尉は今は北米軍の制服を着ていた。
「一号機は隊長機ということもあり通信能力を発展させた専用の頭部を装備させました。赤外線通信能力が向上しています。続いて、二号機は試験的装備で狙撃用OSとライフルのスコープを改良したものを実装させました。なお今回の任務では通信の中継役はダニー曹長にやっていただくことになります。」
「なんで俺がっ!」
すかさずダニーが異を唱える。
「狙撃手がうかつに動くわけにはいかないでしょ」
そこにスティーブン隊長が割って入る。
「ダニー曹長はポイントベータで中継役をしろ、そこからの援護も頼みたい」
「隊長まで・・・」
ダニーはがっくりと肩を落とした。
「三十分後に出撃だ、準備しておけ」
スティーブンはダニーの肩を叩きながら言った。
・革命軍補給基地周辺
合計三機の[オスプレイmk-5]は途中で二手に分かれ、うち二機は指定されたポイントにたどり着きホバリングしつつ密林に三機のヘイストを降ろした。
「基地制圧後にまた会おう」
オスプレイのパイロットはそう言って輸送機はその場を後にした。
「これより作戦ポイントまで移動する。後方の部隊はすでに展開済みだ、あと、後方部隊のコールネームは「トランペット1-1,1-2」だ」
「了解」
スティーブンの合図にマットとダニーの復唱が続くと609試験科部隊は指定ポイントまで前進を始めた。

「こちら、cat2、指定ポイントに到着」
ダニー機から入電が来る。マットとスティーブンはダニーよりも基地に近づいた地点に待機していた。
「cat3、始めろ」
スティーブンが命じると了解と復唱し回線が閉じる。やはり赤外線通信だと音声はクリアだ。
「cat3、前みたいに敵機にタックルをかますのはやめとけよ、リスクが大きい」
「りょ、了解しました」
和ませようとしているのだろうか、しかし無線機から聞こえる隊長の声にユーモアらしい空気は含まれていなかった。

ダニー機は匍匐した状態で狙撃体制についていた。
「うーん、よりどりみどりってか?」
ダニーは狙撃モードに入ったモニターを見つめながら言った。敵施設はカムフラージュネットで偽装しているがところどころに粗が見える。敵勢力である革命軍は一部軍人と現地の武装組織が合併した構造である。戦略的に見て素人のような側面がある感じは否めない。
「こちら、トランペット1−1。通信用ケーブルの接続を確認」
「cat2、感度良好だ。さっそく始める。ポイント22A、37Bだ」
「了解、砲撃を始める」
間も無く指定した座標に砲撃が加わり硝煙が膨れ上がる。するとモニター内でカムフラージュネットが剥がされているのが見えた。そこから木々の間から砲身が見えた。トーチカ(砲台)だ。
「cat2、よりトランペットへポイント67E、85J。砲台だ」
「トランペット、了解。ぶっ飛ばしてやる」

「砲撃が始まったようです」
マットはスティーブンに入電する。
「少佐の読みが正しければそろそろモビルスーツがでてくるな」
そのセリフに答えるかのようにHUDのヘッドセット内にアラートが木霊す。
「来たな、しっかりcat2を守ってやれ」
マットは戦慄からか操縦桿をしっかりと握りしめた。

・革命軍補給基地、指令室
「やはり来たか」
男は息を切らして報告に来たゲリラにその言葉だけで応じる。
「くそっ! 北米の犬どもめ!まんまと嗅ぎつけたか!!」
もう一人のゲリラの上官が葉巻を片手に怒鳴り散らした。昨今になって北米軍の介入が激化したせいで満足に政府軍にも攻撃を仕掛けられない、そのことにイラつきを覚えて久しい状況だ。
「分かった、俺が出よう」
「しかし、あんたは“店員”だろ、いいのかよ?」ゲリラの上官は落ち着きを取り戻そうと葉巻をくわえながら言った。
「商売敵がどんな顔か見ておきたくてねぇ。グリンカを一機、貸してくれるかい?」
「わかった。だが大切に扱ってくれよ。貴重な戦力だ」
「無傷で返すよ。弾はアフターサービスにしといてやる」
男はそう言って急ごしらえの指令室を出た。
「いいんですか?あんな奴にモビルスーツなんかまかせて」
「見てりゃわかるさ、あの男がどれだけものか」
作品名:GUNDAM ALTERNATIVE 第2話「Eye」 作家名:josh