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約束

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――ごめんよ、知らなかったんだ。君に家族がいたなんて・・・。けれど、僕だって譲れないんだ、僕の夢を。 だから約束する。約束するよ・・・――

 僕は4年前、初めてここを訪れた時にはなかった看板に愕然とした。
『ポケモン保護区によりトレーナーによるポケモンのバトルおよびゲットおよび逃がす行為を禁じる』
 僕は手にしたモンスターボールを握り締め、来た道を引き返した。

 僕の名はアキラ。旅を始めて5年目のトレーナだ。4年前、僕には一つの夢があった。それはポケモンリーグへの挑戦だった。そして僕はあの森で一番信頼できるパートナーのこいつ、リングマのカエサルと出逢った。
 幼かったのだ、僕は。 ポケモンもまた僕らと同じように“家族”がいることに気がつかないほどに。だから僕はあの時約束をしたんだ。
――僕の夢が叶うまで付き合ってほしい。そのかわり、その代わり・・・。――
 僕はまたボールを握り締めた。大丈夫、絶対約束は守るから絶対に。

 さっき立ち寄ったポケモンセンターにたどり着いた。自動ドアが開き、僕が入ったことを知らせるチャイムが鳴る。
「あら、アキラくん。どうかしたの?」
 先ほど出て行ったトレーナがすぐ戻ってきて、ジョーイさんは不思議に思ったらしい。
「あの、あの森っていつから保護区になったんですか?」
「えっと、確か、あそこは・・・。2,3年前だったかしら。あの森はこの町で管理してるけど、ちょうどその頃町長さんが変わったのよ。
『ポケモンとトレーナーという枠をなくし、イキモノ同士のふれあいを。』
これを合言葉にした今の町長さんの音頭でまず保護区の制定が行われたの。」
「・・・」
「やっぱりアキラくんもトレーナーね。ポケモンを道具みたいに使う、そういうのは確かに変かもしれない。でも、一方的にトレーナーを断罪するのも、ちょっとね。」
 ジョーイさんはそう言って言葉を切った。僕はカエサルたちを道具だなんて思ってはいない。けれどポケモンは“保護”されるほど弱いのだろうか。人間が“保護”してやらなきゃいけない存在なのだろうか。
「今、あの森の責任者は誰ですか?」
「今?今はジュンサーさんが担当主任よ。でも、どうしてそんな・・・。あ、ちょっとアキラくん!?」
 駆け出した僕は後ろで小さくなるジョーイさんの声を聞いた。

「あなたがアキラくん?」
 扉をあけようとした僕は先に、中の人物に声をかけられびっくりした。
「まあ、中へどうぞ。」
 僕は声に促され建物に入った。
「自己紹介は必要ない気もするけど、わたしはこの町のジュンサー。ジョーイから連絡は受けているわ。あの森について何か?」
 僕はがばっとひざまずき土下座をしていった。
「お願いです。あそこでポケモンと分かれさせてください。」
「え、どういうこと?」
 困惑した顔でジュンサーさんは聞きかえした。
「4年前、僕はあの森でこいつをゲットしました。」
 そう言って握っていたボールを見せた。
「けれど、こいつには“家族”がいたんです。」
「“家族”・・・」
「そうです。そのときすぐに逃がしてやるべきだったのかもしれません。でも、僕には夢があって、その夢のためカエサルはかけがえのない存在でした。」
「それで。」
「だから約束したんです。僕の夢が叶ったら、君を家族のところに帰す、と。」
「それでやっと?」
 僕は顔をジュンサーさんに向けた。。
「やっとリーグ出場できたんです。ベスト16、まだまだ先は長いです。でも、こいつとの約束はここまでです。今度はこいつの願いをかなえてやる番。それなのに、あの森へ行ったら、あの看板があって・・・。お願いです。こいつの、カエサルの願いを叶えさせてください。」
 もう一度、頭を下げた。
「もう立ちなさい。アキラくん。」
「じゃあ。」
 僕は期待に満ちた声で顔を上げた。
「あなたの強い思いは分かったわ。けれどやはりルールはルールなの。」
「でも、」
「聞きなさい。」
 ぴしゃりとさえぎられた。
「まったく、チャンスがないわけではないわ。」
「チャンス・・・?」
「『三人以上の立会いの下、特別な事情のあるトレーナーのみ、これを認める』
こういう例外規定が保護区法にあるの。一人目は私が付き合うわ。あとジョーイも。」
「じゃあ、あと一人は・・・?」
「賭けといきましょうか。」
 ジュンサーさんは微笑んだ。

「私がこの町の町長じゃ。なんぞようかね。」
 禿わたった頭に、黒ぶちの丸眼鏡、小柄な老人は僕にたずねた。 和やかな笑みを浮かべながらも、僕を覗き込むようにな目だった。

――賭け、ですか?――
――あと一人を町長さんにお願いするのよ。――
――保護区制定の張本人じゃないですか。――
――だからよ。賭けだというのは。私のほうでこの件について町長さんに通しておくわ。その上で彼があなたに会うかどうか、これが第一の賭け。―
――二つ目は・・・?――

「あの、ジュンサーさんから・・・」
「聞いとるよ。その上できいちょるんじゃ。なんぞようかね。」
「ポケモン保護区のことでお願いがあって来ました。」
うん、うん、とうなずきながら町長さんは目を細めた。
「あの森が保護区になる前に、僕はあるポケモンをゲットしました。帰り際に振り向くと、じっと一匹のポケモンが僕を見つめていました。腕にしっかりと子どもを抱いて、僕を見ていたんです。そのとき僕は自分のしたことに気がついたんです。生まれたばかりの子どもと、父親を引き離してしまったと。」
「なぜ、そのときかえしてやらなかったんじゃ?」
 黙っていた町長さんは疑問を投げかけた。
「ポケモンリーグ出場の夢が・・・。」
「それはヒトのエゴじゃろうて。」
「・・・」
「なぜ、ポケモンバトルをというのにポケモンは付き合ってやらねばならんのじゃ? ポケモンに何の利も、理も、ない。ヒトの娯楽に。現に、お前さんのゲットという行為で家族別れの悲劇が起こったんじゃ。ちがうかね?何かまちごうちょるか?」
 町長さんの口調は強いものではなく、のんびりとして、顔に笑顔は残っていた。けれど反論できるはずもない、そういう自信に満ち溢れた言葉だった。

――二つ目は町長さんを説得できるか。――

「確かに、僕らのかってだというのは、そうかもしれません。でも、」
「でも?」
 つばを飲み込み、僕は続けた。
「けれど、僕はヒトとポケモンは対等だと思っています。
 かわいそうだからとか、守ってやるべきとか、そうゆうことじゃなくて、」
「そうゆうことじゃなくて?」
 とぎれとぎれの言葉の続きを促す町長の顔には笑みはもうなかった。
「そういうことではなくて、僕はカエサルやほかの仲間を信頼してるし、カエサルたちから信頼されてるって思いたいし、だから裏切りたくないから、みんなを、僕の夢を手助けしてくれた仲間の願いをかなえるって約束したから、約束を守りたくて・・・。」
作品名:約束 作家名:まなみ