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樹ニ入ル(誰が為に陽光は輝くネタバレ)

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 偉丈夫のパラディンが降り下した剣が、がつんと悲鳴をあげた。操る本人もまた、手ごたえの固さに顔をしかめる。だが、引こうとはしない。彼の背後には、守るべき相手がいるのだ。その横あいから、ソードマンが肉厚の刃をもつ斧をふりおろした。
 今度は辛うじて効いたらしい。大型のカニを思わせる魔物が、いらだたしげにハサミをふりあげた。ソードマンは軽いステップでハサミの有効範囲をはかる。パラディンは巨大なタワーシールドの後ろで身体を縮めている。
 効いたとはいっても、致命傷には程遠い威力だったらしい。人にたとえれば、ひじをすりむいた程度だろうか。元気いっぱい、見かけからは想像できないほどの俊敏な動作で距離を詰めてくる魔物に、ソードマンは小さく舌打ちをした。
 自らが魔物のターゲットではないことを見てとり、パラディンは、再度剣をふるった。効かないことは承知のうえだった。予想通り、魔物の甲殻(こうら)は鈍い音で彼の剣をはねのけた。
 彼らの背後を、ふわふわした動きで一人の青年が横切ろうとする。それに気づいたパラディンは声をあげ、ソードマンに注意を促す。ソードマンは言葉なき合図にただ無言でうなずいた。
 皆忙しいのだ。微かな虫の羽音など聞き取れるはずはない。
 響いたのは、術の解放を告げる最後の一節のみだった。
 巨大な火球がパラディンの斜め後ろに現れたかと思うと、魔物に直撃……いや、ソードマンがいるためだろう、魔物の半分ほどを焼いた。
 火球の主、アルケミストは小さく舌打ちをする。だが、ゆっくりと結果を確かめている余裕はない。火球に押されたかのような柔らかな動きで、後ろへと下がった。その後を、キチン質が焼ける独特のにおいが追う。さらに、辺りにいるものを、腹の底から揺さぶるような轟音が追った。機をうかがっていたガンナーの一撃――いや、連射だった。一塊の轟音としか聞こえぬそれは、熟練の早業でありったけの銃弾を標的の同じ場所へと叩きこんだしるしだ。
 断末魔は哀れなほどに地味だった。声はない。窮鼠のごとき一撃も許されず、片方のはさみがぽろりと落ちる。
 魔物が動きを止めてもなお、彼らは各々の武器を携え、それをとりかこんでいた。それほどに厄介な相手だった。