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二話詰め合わせ

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一話目  <誰にでも秘密があるもの>



小さなテーブルにマフィアのボスが帽子を取って座っている。紅茶を飲みながら人を待っていた。
そこへ静かにドアが開いてハートの城の宰相が入ってくる。ブラッドの座っている席に近づくと当たり前のように向かいの席に座った。

「遅いぞ。人を呼び出して待たせるな。」
「アリスが急に来てくれたんです。仕方ないでしょう。」

ペーターは悪びれもせずにそう言うと、用件を切り出した。

「女王陛下が自分も入れろと言って来ました。」

何処で嗅ぎ付けたんでしょうかねえと言いながら運ばれた紅茶を啜る。ブラッドはペーターを睨み付けると、話したのか!と凄んで来た。随分と待たされて機嫌が悪かったところに、追い討ちを掛けるような話を聞かされたからだろう。

「そんな訳無いでしょう。仲間に入れないならバラすって脅されました。あの人は本当にやりそうですからねぇ、今日は冷や冷やしてずっと物陰でアリスとのお茶会が終わるまで待機していましたよ。」

今のところは大丈夫ですけど、如何します?とテーブルの上にティーカップを置くと、向かいで渋い顔をしていたブラッドを見る。ペーターの方は、心配だ冷や冷やすると言っておきながら表情は冷静そのものに見えた。

「遅かれ早かれあの女には知られるとは思っていた。仕方ない。存分に利用させてもらおうじゃないか。」
「まぁ、それが賢明でしょうね。」

ペーターも言われるまでも無くその選択がベストだと思っていたようで、あっさりと人知れず行われた会談は終わった。
一番最初に言い出したのは、白ウサギである。撃ち合いの時間に提案されて、ブラッドは即乗った。役持ちが他者の提案に易く乗るなど稀なことだ。

「それじゃ、陛下は参加と言うことで。多分、城へのドアが増えると思いますから。」

ペーターは、紅茶を運んで来た顔無しを見た。二人の座るテーブル席の近くで直立不動だった彼は一層緊張した風で答える。

「承知いたしました。一生懸命に務めさせていただきます。」
「ああ、存分に腕を振るってくれ。期待している。」
「アリスに妙な懸想するんじゃありませんよ?」

「は、はぁ・・」

返答に困った顔無しの視線が窓外に留まった。

「アリス様ですね。」

ドアのところにアリスが立っている。この位置からだと丸見えだ。物凄い勢いでブラッドとペーターはテーブルの下に隠れた。だが、小さい丸テーブルだ、大の男二人が隠れられるわけが無い。

「貴様、邪魔だ!」
「帽子屋、貴方、あの馬鹿みたいな帽子、テーブルの上に置いたままじゃないですかっ!」
「宰相殿こそ、その馬鹿長い耳が丸見えだぞ!」

お互いが邪魔だ退けと言い合っていて埒が明かず、全く隠れた風にはなっていない。そろそろお互いの得物でも出てこようかという段になって、再度顔無しが喋った。

「あの~、お帰りになられたみたいですが・・」
「貴方、隠れてなかったんですか! 殺しますよ!」
「待て!彼は天才紅茶ソムリエなんだ。早まるな。」

金の時計に手を伸ばしたペーターを珍しくブラッドが止めた。二人は立ち上がると、これ見よがしに服を手で払う。そこへ顔無しが聞いてきた。

「確か、お二人のうちどちらかが入店されると自動的にclosedになると伺いました。アリス様には店内の様子が見え無くなると・・違うんでしょうか?」

役持ちの二人は顔を見合わせ、そうだったかもしれないな・・と言いながら、急に身支度を整える。
ブラッドは片手で帽子を被りながら出口に向かった。

「人と会う約束があってね。お先に失礼するよ。」
「帽子屋、手を離してください。気持ち悪い人ですね。」

帽子屋の握りこんだドアノブは、既にペーターが掴んでいた。二人は譲り合うことなく、無理やり同時に店から出て行った。

「やれやれ、アリス様も大変だ・・」

紅茶のソムリエは一人残った店内で溜息を吐いた。





「じゃ、私は此処で曲がるから。またね、ブラッド。」
「お嬢さん・・」

何か後ろ髪でも引っ張りそうな、らしくない声を出す。勿論、そんなものには惑わされずに城へ向かう道へ踏み出した。特に誰と約束があるわけではなかったのだが、これ以上この男と連れ立って歩きたくなかっただけなのだ。
誰にも知られたくない場所に行きたかったのだが、途中で追い付いて来て図らずも一緒に歩くことになってしまった邪魔な存在の為に、急遽目的地を変更せざるを得なかったのである。

(帰りに寄ればいいわ。)

さっさと城へ向かう。
昼の時間でビバルディは最高に不機嫌だったが、アリスの突然の訪問に少し気が晴れたようで、ティールームでお茶を振舞ってくれた。使用人達は思わぬ救世主の登場に、アリスに感謝する。突然の訪問にも歓待してもらえるなど感謝したいのは此方なのだが、お蔭で気分良く一時間帯ほどを城で過ごし、退城しようとした時だった。宰相閣下が大きな声でアリスと叫びながら追い掛けて来る。

「ペーター。」
「ああ、アリス。もう帰ってしまわれるのですか?」

追い付き様に両手をぎゅうと握られた。時計塔方面に向かうことは伏せ、曖昧に返事をする。

「実は、貴女と行きたい紅茶のお店を見つけておいたのですが・・・」
「行かない。」

言下に断ると、帽子屋へ続く道を歩き出す。
これから時計塔へ向かうと言えば、仕事を放り出し必ず付いてくる事がわかり切った相手に見送られるなど全く面倒なことこの上ない。彼が見送ってくれる間は時計塔には向かえない。何度も振り返り、早く仕事に戻んなさいよと呟く。
彼の姿が見えなくなってからも用心の為暫くは立ち止まったまま時間を潰した。

そんな苦労の末やっと辿り着いた秘密の場所は、ドアにclosedの札があった。閉まっているのは初めてだ。辿り着くまでの苦労を思えば落胆も大きかった。

時計塔広場の表通りから少し入ったところにあるこじんまりとしたその店は、通りに面していないため静かな場所だ。アリスは時々此処に来て息抜きをする。
古くも新しくも無く、本当に何の特徴も無い内装に、二人掛けテーブル席が二つのみ。妙に落ち着く店だ。
こんなに席数が少なく何時来ても空いている、というか、アリスは此処で他の客を見たことが無い。それで採算は取れるのだろうか。せっかく見つけたお気に入りの場所が店仕舞いなどしていないかと気になり、何度も足を運んでいる。


「偶には他のお店に入ってみようかしら。」

目当ての店が休みでは仕方が無い。本屋に寄り何冊か物色し、自分の為のお茶菓子を数件梯子して丁寧に選ぶと、そのまま帰路に就こうかとも考えたが、これから帽子屋屋敷まで歩くことを考えると何処かで少し休んでいきたかった。
表通りの目に付いた適当な店に入る。隅の方の席で壁に向かって座り、ゆっくりと紅茶を口に運ぶ。頼んだ紅茶はそこそこには美味しかった。

だが近くで話し声がする環境に酷く違和感を感じる。それで、最近はあの店にしか行っていなかったと改めて思った。
そこまで気に入りの店なのだが、店主とは会話を交わしたしたことすら無い。主が客のアリスの顔を碌々見もしないのだ。あれでは此方を覚えているのかどうかすら疑わしい。
作品名:二話詰め合わせ 作家名:沙羅紅月