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SAO二次元創作【魔女と呼ばれた処刑者】1-1

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一章【始まり】


2022年11月―わたしは囚われた…何に?と言う方が大半かとも思われるだろうが、それは勿論―あのゲームだ…。

この物語は、あの忌まわしきデスゲームがクリアされる迄を―漆黒の魔女と称され蔑まれ続けたわたしの物語である。

2022年11月―とある大手電気メーカーが仮想空間への接続機器「ナーヴギア」を開発した事で、世界は遂に完全なるバーチャルリアリティを実現させた。このナーヴギアを使った初のVRMMORPG「ソードアートオンライン」(通称SAO)は大人気の内に完売し、わたしを含めた一万人のユーザーがその世界を楽しむ筈だった。しかし、ゲームにダイブした私達は、ゲームマスターから恐るべき託宣を聞かされる。

SAOからの自発的ログアウトは不可能であること、SAOの舞台「アインクラッド」の最上部第100層のボスを倒してゲームをクリアすることだけがこの世界から脱出する唯一の方法であること、そして、この世界で死亡したプレイヤーは、現実世界でもナーヴギアから放出される大出力のマイクロウェーブ波により、脳ミソを焼き尽くされ―死亡するということだった。


「―馬鹿馬鹿しい…」

悲鳴と罵声の中、わたしは中央の広場で踵を返し、さっさとフィールドに出ていった。

紹介が遅れた…わたしの名前は【服部水城(はっとりみずき)】当時16歳だったわたしは、ゲームマスターの信託をそう糾弾し、単なる冗談だろう…と、心の中で思いながら、例え冗談でなくとも望む所だ…と笑いとばしていた。

わたしは生まれつき裕福な家で育ち、多額のお金で入れられた私立の学校で、息の詰まるような静かな生活を送っていた矢先のSAOなのだ…。わたしは他人に気を遣いながらの静かな生活に飽き飽きしていたし、MMORPGは初めてではなかったのだから多少のノウハウは持ち合わせている。ただ、現実世界での戦闘経験は勿論、運動神経もろくによくないわたしを、VRという空間が苦しめた…何故ならば、攻撃が全くと言っていい程に当たらない、最初の街の周辺をうろつくスライム系統の雑魚にすら後れを取り、遁走するという不覚を味わった。


わたしはゲームマスターの託宣が行われる遂今頃まで、ゲームシステムを体に慣らす為のひたすらな狩りを楽しんでいたのだから…正直、いい迷惑だった。

直ぐに次の街に移動しなくては…託宣を終えた後、私が一番に頭に浮かべた言葉はそれだった。

そして―それを裏付けるように、いの一番に集団から抜け出していく数人の姿が目に映れば、MMOの経験がある人間ならば思っただろう…彼らはベータテスターだと。

「……」

私は、街を駆け足で出ていく少年の後ろ姿を目の届く範囲で追いかけ…途中に現れる敵を的確に仕留めながら、はじまりの町と対して変わらないレベルの敵が多く配置されている小さな村へとたどり着いた…。


そこを拠点としてフィールドへとくりだし、楽な敵を集中して倒しレベルを上げる、そうしているとわたしは自然と不安感は無かった…。しかし、不安があるとしたら右上の・・わたしの名前【アクエリアス】だ…我ながらピンとも来ない名前だ…。


悪夢のような託宣から1週間が過ぎ去った…。この世界にも慣れてきた私は…改めて武器を握り、空間に素振りすると、槍の矛先に鮮やかな緑色のライトエフェクトを煌めかせ放つ。

【スパァンッ!】

迸る槍の基本ソードスキル【ストライク】が空間に一筋の光の線を描く事でわたしは実感を得ると共に、実に単純な達成感に酔い痴れる。


現在わたしのレベルは17、迷宮区と始まりの町の間に位置する淋しい村のすぐそばにある森の奥で、自分よりレベルの低いアクティブモンスターである狼を何匹も何匹も葬り、黙々とレベル上げの真っ最中であった。


そうして思いに浸っている間にも新たに二匹の狼の姿が目の前で浮かび上がり、名前の表記と共にエンカウントの安い効果音が鳴り響く。その数二匹…。


「やっとお出ましか!!」


狩り尽くして数分間、ようやく現れた新たなる獲物に、わたしはぶっきらぼうに言い放ちながら駆け出し、即座目の前の狼の顔面に槍を突き立てそのまま突飛ばすことで距離を取り、矛先をもう一匹へと走らせながら緑色のライトエフェクトが軌道を描く。


「はあああ!!」


槍の二連撃ソードスキル【ダブルソニック】が発動し、横で呆気に取られていた狼の身体に不恰好な大穴を2つ空けてライフゲージを一息に削り取り、四散させる。


本来ソードスキルは、発動後に硬直時間が存在し、スキルの強さが強い程にその硬直時間は長い…いま使用した初期スキル【ダブルソニック】にも、当然の如く1,5秒間の硬直が設けられており、その硬直を狙ったのは、他ならぬ最初に吹き飛ばされた狼である。

狼は瞬く間に飛び掛かり、ばっくりと開けたアギトでわたしの首を捕らえようと飛び掛かる。

「遅い!」


わたしはそう叫びながら飛び掛かる狼の顎下を蹴り上げた。

『ぎゃいん!』

悲痛な悲鳴と体術スキルの上昇が交錯し、そのつかの間、空中で無防備に曝された狼の体に槍を突き立てて地面に叩きつけ、四散させる。


『ウオオオオン!!』


休憩も与えずに新たな咆哮が耳を貫き、そちらへと視線を送ると。そこに現れたのは10匹を越える沢山の狼と、その中心を闊歩して歩く一回りも二回りも大きな狼だった…わたしの目に表示される赤い名札が、このモンスターの強さを証明している。明らかにボス狼だった…、恐らく近くで子分の悲痛な声を聞き仲間を助けるべく駆け付けたのであろう…。


「遅かったな…あなたの子分はおいしく頂きましたよ?」


わたしの言葉を受けてか、ボス狼は怒りに身を震わせ、牙を剥き出しにして唸ると、周囲を取り巻いていた子分狼たちが分散し、身動き一つしなかった私を完全に囲んで退路を断つ。


「厄介な…」

さあ、どう戦ったらいいか?、と私は本来ならば絶体絶命の場面で呑気に唇を噛み思考を凝らす。


1、背を向けて一目散に走る。

恐らくそんな事をしたら一斉に背後から襲われて反撃もままならず私は身体を四散させ、現実世界の私もナーヴギアに脳髄を焼かれて死ぬ事だろう。


2、正面突破

これも現実的ではない、何故ならば私は囲まれており、正面にはボス狼が身を震わせている…彼に手間取っている間に周囲の狼に食い荒らされるに違いない。


そう考えた私は、ならば…と体力ゲージに目を向けて思考の切り替え…そして目を閉じ、ゆっくり…諦めるような素振りでその瞬間を待つ。

『があ!!』


その瞬間はまもなく訪れた、まず背後にいた一匹が背中に飛び掛かり―

【ドン―】