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井戸ノくらぽー
井戸ノくらぽー
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不思議の国のはじめくん(サンプル

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プロローグ


「総司! おい、総司どこにいるんだ」
 ここは薄桜学園。
 風紀委員長・斎藤一は、昼休みを利用して問題児・沖田総司を探していた。
 今日という今日は、総司に放課後残って反省文を書かせる話をつけようと風紀委員の顧問である土方と決定している。
 だが、今朝もまた遅刻した総司の姿を校内で全く見かけない。脱走したかと思ったが、まだ鞄が教室に残されている。
 そこで思いついたのは、学園の裏の林だった。
 一応、学園の敷地内にそれはあり、元々は大学を建設するための用地だと聞いている。
 しかし、昨今の大学統廃合などなかなか大学新設が軌道に乗ることは難しく、工事が手つかずになっているのだと情報通の山崎君に聞いたことがある。余りに広大なため、一般の生徒たちには立ち入り禁止区域となっている。
 だがやはりあそこなら、人目につかずサボれるというものだ。
 林に入って行くと、昼間でも薄暗い。総司はこの奥に行ったのだろうか。
 すると、ガサガサ、と茂みから何か飛び出して来た。
「うわっ?!」
「大変です。これでは遅刻してしまう」
 それは、白衣のポケットから懐中時計を取り出した、校医の山南だった。
 しかし、何故こんなところにいるのか。そして、それよりも一の目を引いたのは・・・。
「山南先生、何なのですか、そのウサギの耳は・・・」
 なんと、山南の頭には、白いウサギの耳が生えていたのだ。それだけではない。山南の髪も白く、瞳が赤く光っている。
「ククク・・・参りましたね。どう言い訳をしたものか・・・沖田くんもまだ見つからないし」
「なに、総司が・・・?」
 しかし山南には、一の声が聴こえていなかったらしい。慌てて林の奥に駆け込んで、いや跳ねるように行ってしまった。
「あっ、山南先生、待ってくれ! 総司を探すなら俺も一緒に!」
 山南を追って一も林の奥に急いだ。
 ところが。

 木の根につまづいて倒れた一の目に、飛び込んで来たのは口を開けた暗闇。
 巨大な穴に一は飲み込まれてしまった———。


一. 羅刹の穴へ落ちて


 それはとても深い穴だった。
 一は咄嗟に木の根につかまろうとしたが、その根もどんどんと下に剥がれ落ちて行く。
「一体どこまで伸びてるんだ?」
 地学の授業で、地球の中心核は灼熱のマグマだと聞いた。もしかするともしかしてだが、そこまで行き着いてしまうのではないだろうか? だとしたら、一瞬で一の命は終わってしまうに違いない。
 しかし、それにしてもどんどんと落ちて行くがいっこうに息苦しくもなく、むしろ宙を浮かんでいるような不思議な気分になる。そして、下のずっと先からは光が漏れている。
「死ぬ時には人生が走馬灯のように巡るというが、そんなこともないしな・・・」
 むしろ、なんだか時間を遡っているような気さえする。手に何か当たる物を感じて、一はそれをつかんだ。先ほど山南が手にしていた懐中時計だ。
「・・・・・・!」
 時計はものすごい勢いで逆回転していた。
「なんだこれは・・・」
 光がだんだん強くなってきて、眩しさに一は思わず目を瞑った。
 気づくと水の中に入ってしまったようだ。一は泳いで上がった。
 水面から顔を出すと、そこは見知らぬ海岸だった。
 なんとか岸まで泳ぎ着いた。おそらく山南もこの岸に着いたと考えるのが自然だが、それらしき足跡も見当たらない。
「見失ったか・・・」
 濡れた重い服にのしかかられるように、一は途方に暮れた。すると突然、
「ハジメ君じゃん、どうしたのこんなとこで?」
 振り返ると、同学年の藤堂平助だった。
「平助・・・お前もあの穴に落ちたのか?」
 しかし・・・どうも様子が変だ。制服ではなく、鮮やかな青のギザギザ模様のついた羽織を着ている。
(これは・・・何時か何処かで見たことがあるような・・・)
 だが一にそれを思い出すことはできなかった。
 平助の姿が異様だったのはそれだけではない。よく見れば、背中と頭のてっぺんに羽根まで生えているのだ。
「穴? 違うよ、そこの池にはまっちまったの」
 平助が指差すと、一が海だと思っていたものは、いつの間にか池に変わっていた。しかもすぐ側に広大な屋敷がある。そして塀に囲まれた屋敷からは剣道らしきかけ声が聴こえてくる。
「ここは・・・何処だ?」
「やだなーハジメ君、俺たちの屯所に決まってるじゃん。この羽織濡らした事、女王様に知られたらただじゃ済まないから、黙っててくれよな。ちょっとシマバラの森に行って乾かそうと思うけど一緒に来るか? サノさんやシンパっつぁんもそこで茶会やるって言ってたし」
「屯所? 女王様? 茶会?」
 ここで、一はようやく自分が夢を見ているのだと思い至った。そうでなければ、よく知っている者が知らない格好をしているわけがないのだ。
「早く、見つかるとマズいよ」
 平助に引っ張られるようにして一は塀の外へ出た。
「平助、どうやらしばらく俺は記憶を無くしてるようだ」
「あー、そうなの? でも俺の名前覚えてるじゃん」
「・・・名前と顔ぐらいしか思い出せんのだ。藤堂平助、だろう」
「うーん、ちょっと違うな。ヘースケ・トードー鳥だよ」
「余り変わり映えしないような気もするが、・・・鳥?」
「そっかな? 俺たちはシンセングミって国の兵士だよ。それで、俺もハジメ君もそこの騎士(ナイト)なんだ。といってもハジメ・サイトー君は銀のナイトで、オレはまだ馬のナイトだけど」
 平助、いやヘースケは訝りもせずかなり丁寧に説明してくれる。この単純さが救いだった。
「他に何か思い出せることってないの?」
「そうだな・・・そういえば、俺は確か総司を探してたはずだ」
 げっ、とヘースケが呟く。
「ソージってあの厄介な猫のソージ・オキタだろ? 今そのことで女王ムッチャクチャ怒ってるもんなあ」
「総司は何をしでかしたのだった?」
「女王様の句集を盗んだ罪がかかってるんだよ。それでハジメ君と同じ銀のナイトの称号も剥奪されて。今サンナーンさんが指名手配してる」
「指名手配?! それで、クシュウ、とは?」
「詳しくはサノさんたちに訊いてよ。あっ、着いたぜ」
 ヘースケが導いてくれたのは、先ほどまで一が歩き回っていた学園の林のようなところだった。
 中へ入って行くと、急に目の前が開けて、豪奢な朱塗りの門が現れた。門をくぐれば、瓦屋根葺きの家々に挟まれた通りの真ん中に、赤い毛氈が敷かれ、席に着いていた人物を見て一は息を飲んだ。


二. シマバラの《お茶会》


 座っていたのは、まるで近世の花魁と思しき美しい女性。その傍にいるのはヘースケと同じような青い羽織に身を包んだ、薄桜学園の教師である原田左之助と永倉新八。そしてそこに設えてあったのは、茶会というよりどう見ても宴会の席だった。
(もしかして、俺は江戸時代にでも迷い込んでしまったのか・・・?)
 だが、原田は頭の上にシルクハット、そして永倉の頭にはウサギの耳が生えている・・・。一は頭痛を覚え始めていた。
「おー、遅かったじゃねえヘースケ。お、サイトーも連れて来たのか」
「おまえがこんなとこに来るなんて珍しいな、サイトー。女王様に告げ口するなよ?」