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井戸ノくらぽー
井戸ノくらぽー
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不思議の国のはじめくん(サンプル

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「わりーわりー、ちょっと池にハマっちまってさ。それより大変なんだ、ハジメ君が記憶喪失になっちゃって」
「な、なんだって?!」
「どういうことだ、ま、とりあえずこっち来て座れよ」
 永倉は怪訝な顔をし、原田が手招きをした。
「どーした、ハジメ君?」
 原田たちの所へ行こうとしたヘースケが、突っ立ったままの一に声をかけた。
「ははは、キミギク公爵夫人の美しさに見とれてたんだろ」
 永倉が豪快に笑った。
「いやですわ、シンパチウサギさん。おからかいになっては」
 公爵夫人と呼ばれた花魁のような女性が婉然と微笑む。どうやらそれがこの世界での彼の呼び名らしい。
「まあ、ヘースケも、サイトーも、呑め呑め」
 原田、いや確かサノと呼ばれたシルクハットの男が盃を勧めてくる。
「は、原田先生、俺はまだ未成年です!」
 一は驚いて断った。
「またまた〜ハジメ君、何言ってんの。シンセングミで一二を争う酒豪が〜」
 ヘースケは困ったように笑っていた。
(お、俺はこの世界ではもう大人なのか・・・?)
「《茶会》ってことにしないと昼間っから呑めないしな」
 サノが肩を竦めて見せた。
「まーこういうカンジなんで、説明してやってよ、サノさん、シンパチさん」
 そういえばさっきからヘースケは二人に対して敬語を使っていない。ここはやはり夢なのだな・・・。
(夢ということならば、呑んでも問題はない・・・のだろうか)
 少し悶々としている一を見て、キミギクが手を叩いた。
「お茶とお菓子を持って来ておくれ」
 ほどなくして黄色い着物姿の少女が向かいの家から出て来た。何処かで見たことがある。近所の島原女子校の、鈴鹿千とかいう名前だったはずだ。お嬢様で薄桜学園内でもファンがいるなど有名なのだ。
「もう〜、人使いが荒いんだから〜」と云いながら千はお盆を運んで来た。
「申し訳ありません姫、作者の希望で・・・、さ、これなら良うございましょうか?」
 微笑む公爵夫人に一はお礼を言った。
「ヘースケも本来なら未成年だ。おまえも茶にしろ」
「ええ〜、冗談キツいぜハジメ君。オレはこの一杯のために屯所勤めしてるようなもんなのに」
 千の点ててくれた抹茶を口にすると、こっくりとした甘みと苦みがムースのように舌に流れ込んだ。
「美味い・・・」
「え、ありがとう」
 千は嬉しそうに頬を染めた。そういえば、あの鈴鹿千も茶道部だったような気がする。
「で、記憶喪失ってのはどういうことなんだ?」
 シンパチウサギが訊いてきた。


三. サンナーン、ヤマザキを送り込む


「オレたちの名前と顔以外覚えてないらしいんだ。それと、ソージの指名手配の理由も覚えてないって」
 ヘースケが簡単に説明してくれた。
「そりゃあ、サイトーはソージと仲良かったもんな、忘れたふりして庇おうって肚じゃないのか?」
 盃を手にしたサノが少し意地悪く言う。
「違う! 俺は、土方先生に言われて総司を探しているんだ・・・」
 一は反論した。
「うん、それは間違いないぜ。ソージはヒジカタ女王の句集を盗んだんだからな」
 シンパチがそう言って、酒の肴をつまんだ。
「そのクシュウとは・・・土方先生まで?」
「女王の俳句がたくさん載ってる。今度屯所で開かれる俳句大会に使うんだそうだ。」
 そういえば土方も俳句が趣味だと聞いたことがあった。
 屯所が先ほどの池のあった大きな屋敷のことで、そこに女王ヒジカタやコンドー王、サノやヘースケもみんな住んでいるのだとシンパチは教えてくれた。
「まー、とりあえず女王に逆らうことさえしなきゃ、シンセングミでは問題ないはずだ。サイトーは特に、女王の信頼も厚かったしな」
「信頼、っていうより、サイトーは女王様の信奉者みたいなもんだろ」
 サノが茶々を入れた。
「確かに、オレたちみたいに仕事さぼるなんてことは、記憶喪失でもなきゃしてないよなー」
 ヘースケが愉快そうに笑う。
 そう言われて一は、やはり本来の仕事に戻るべきなのでは、という気持ちになってきた。
「ただ、気をつけないといけないのは、金のナイト、白ウサギのサンナーンさんだな・・・」
 サノがそう呟くがはやいか、朱塗りの門の向こうから人影が一たちの前に現れた。
「や、山崎・・・?!」
 黒尽くめの忍装束を着た山崎が、大きな封筒を持って現れた。しかし、この山崎の格好は忍者っぽいだけではなく、大きなトカゲのしっぽをつけていた。
(山崎、薄桜学園きっての常識人であるお前もか・・・!)
「シンセングミ香(かおり)のナイト、ススム・ヤマザキ、キミギク公爵夫人へヒジカタ女王陛下より招待状を持って参りました」
「あら、ありがとう。早速出かける準備をしなくては。では皆様、ご機嫌よろしゅう」
 キミギクは手を叩いて立ち上がると、千に連れられて家の前に入って行った。
「ヤ、ヤマザキ君。勘違いしないでくれよ。これは《茶会》なのであって・・・」
「心得ております。女王は句集が戻って俳句大会の準備に余念がありません。報告すると余計な手間がかかってしまいます」
「ありがてえ〜。流石、話がわかるぜ」
 しどろもどろなシンパチたちに、ヤマザキはさらりと言った。
「句集が戻った、ってことはもうオレたちはソージを探さなくていいわけか?」
「それはまた別の話です。ただ、今は俳句大会のため、保留になっているだけかと。みなさんも屯所にお戻りください」
「えー? オレなんかまださっき来たばっかだって言うのに・・・」
 ヘースケが不満を漏らす。しかし、一もそろそろ屯所に戻るべきなのだろうと考えていた。
「ま、またそのうちやればいいんだよ、《茶会》なんだから」
 サノが飄々と言った。
「けど、サイトーの隊服はどうすんだ?お前、それも忘れたのか?」
 シンパチが訊いてきた。どうやら隊服というのは、この揃いの羽織のことらしい。「隊服無くしたってなると、また女王がオカンムリだぜ」
 しかし一には答えられない。
「だよなー。ヤマザキ君、余ってる隊服ない?」
「一体どうしたんですか」
 一はヤマザキに、記憶がないのだという説明をした。
「そうですか・・・。一応部屋にストックがあります。オレについて来てください」
 そこで一は屯所に帰ると、ヘースケたちと別れてヤマザキについて行くことになった。


四. 伊東虫からの助言


 屯所に帰ると、トカゲのヤマザキはしっぽをぴょこぴょこと揺らしながら勝手口らしいところに案内してくれる。
「ここなら人目につかない。ひとまずオレの部屋へ行きましょう。オレは隊服の管理も任されていますから」
 ヤマザキの部屋は、まるでクリーニング屋のようだった。
「この中から、ちょうど合う大きさのを選ぶので待っていてくださいね」
 ヤマザキはサイズ順にかかっている羽織の列を見ていった。
「山崎君は・・・俺のサイズを知っているのか?」
「ええ。隊士のみなさんの寸法はみんなここに入っています」
 ヤマザキは少し得意そうに、自分の頭を人差し指でトントンとたたきながら答えた。
「サイトーさんのは特に」
 小声でそう付け足したが、背を向けていたので一には聴こえなかった。
「わかった・・・。だが、俺が着ると他の人たちの服が足りなくなってしまうのでは」