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図書館戦争 堂x郁 記憶喪失(郁視点)

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部屋に入った途端、唇を奪われた
何度もキスを交わしながら舌を絡め合えば、表現のできない幸福感に満たされていくのが分かる

啄ばむように離れては触れて、その度に「郁」と囁く
抱きしめられた感触、声、鼓動が郁を温かく包んでゆく

何度もお互いの熱を感じ合い、まどろみの中郁は眠りに着いた

「郁?いーく?」
薄ら目を開けると自分を覗き込んでいる堂上と目があった
「・・おはようございます」少し枯れた声で堂上に挨拶する
「おはよ」と言って、堂上は郁の唇にチュッと音を立ててキスをする



シャワーを浴びようと脱衣所に着くと、体中に赤い花が咲いていた
これは堂上が付けた所有の証
急に恥ずかしくなって、若干冷たい水を頭被り、邪念を払おうとする

ベットの中では口ベタな堂上もサラリと愛の言葉を伝える
言葉で伝えなくとも行動や素振りで自分が愛されていることは伝わってくる
でも・・・それでも言葉で伝えてほしいと思うのは我儘だろうか?

男性と付き合うこと自体が初めての郁にとって、どこまでが許される我儘なのか測りかねていた

グルグルと考えながら、支度を済ませ部屋に戻ると、堂上はバスローブに身を包みソファーに座っていた

「教官、お先に頂きました。」
堂上は振り向きながら「ん」と答え、着替えを持って立ち上がる
すれ違う時、郁の髪をクシャと弄り「ちゃんと髪乾かせよ」と一言告げ脱衣所へ入って行った

つい先程までお互い生まれた姿のままで抱き合っていたのに、ほんの少し触れられただけでもドキドキしてしまう。

記憶が無かった間のことは鮮明に覚えている
まるで夢の中でもう一つの物語が紡がれているような感じだった
例え忘れたとしても、自分は堂上の元に戻って来て、また恋をした
そのことが郁にとって本当の恋、最後の恋なのだと再確認させられたのと同時に、もう堂上と離れられない、離れたくないと心に深く刻まれる

『いつまでも一緒に。どこまでも一緒に。最後の瞬間まであなたの隣にいたい。』



二人の支度が終わり、部屋を出る時、郁は意を決して堂上の袖を引っ張った
「郁?」
堂上は「どうした?」と言わんばかりの顔で郁を見る
「あの・・・堂上教官・・・その・・・クリスマスプレゼントもらえますか?」
「何が欲しいんだ?」
郁はドキドキしながら、言葉を紡いだ
「えっと・・・言葉が欲しいです・・・普段・・その・・ベットの中では聴けるんですけど・・・」
チラリと上目使いで堂上を見ると、一瞬「何のことだ?」と考えているように感じた
しかし、次に気付いたらしくバツの悪そうな表情に変わった
「・・・ダメですか?」
固まっている堂上を見て、やっぱり我儘だったかな・・と考え
「・・ごめんなさい・・時間無いですよね?帰りましょ?」
と堂上の袖から手を離した

すると、急に堂上は郁を抱きしめ耳元で「郁、愛してる」と囁いた
郁は「嬉しいです・・」と堂上の背中をギューと抱きしめ返した

心臓が早鐘に打ち、もう幸せでいっぱいの気分だった
すると、今度は堂上から「郁、俺もクリスマスプレゼントが欲しい」と言われた
「何がいいですか?」と堂上の顔を見上げながら答えると、予想外の返事が返ってきた
「郁、プライベートでは名前で呼んでくれ・・・」
ボッと音が出るかのように顔が赤くなった

『そ・・それって・・・堂上教官じゃなくて・・あ・・篤さんって呼んでってことだよね?』
『キャーなんだか恋人みたい!!恋人なんだけど・・あれ?違うか・・婚約者?キャー』

許容量一杯の状態で郁は「努力します・・///」と返事を返した

堂上は郁の返事に満足したらしく、額にチュッと音を立てキスをした後「ほら、行くぞ」と手を繋ぎ部屋を出た



特殊部隊事務室へ行くと、既に出社していた隊員達が机に突っ伏していた
堂上が「どうしたんだ?」と小牧に声を掛けると「寝不足・・・朝まで呑んでたんだよ」と答える
郁は「?」と思いながら堂上と目を合わせ首を傾げていると、進藤が近づきながら「お前ら二人の婚約を祝して、昨日呑みに行ったんだよ」とボソッと答えた

廻りを見渡すと、皆二日酔い&寝不足で普段の活気ある特殊部隊の面々とは思えないほど静かなことに気付き、郁は堂上と顔を合わせクスッと笑った

皆が自分達のことを心底心配してくれていて
自分はそれに何時も甘えてばかりだなぁーと郁は思った

今自分が出来ることは?と考え「皆さんの分のコーヒー淹れてきますね!」と給湯室に向かおうとすると、「お前一人じゃ無理だろう。俺も手伝う」と堂上も一緒に向かった

これから先も、色々とあると思う
喧嘩もするし、また皆に迷惑を掛けると思う
それでも、堂上と二人一緒に手を取って前に進みながら未来を歩きたい

郁は堂上の横顔をチラリと見た後、前を向いて力強く一歩踏み出した

end