神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~19-29話
第27話 忠犬ザッフィー
5月である、なのはは相変わらず社会復帰を目指してリハビリを続けている。
週に二日ははやてと一緒にリハビリに通う。
こうする事でシグナムやシャマルに掛ける負担も減るのだ。
なのはの車椅子はアルミ製の赤い小さな車椅子、小柄な女性や子供用だ。
非常に軽く動かし安い。
ただ動力がない為非常に疲れるのが唯一の欠点か?
はやての車椅子は電動である。
座席の下に大型のバッテリーを積んでいる為非常に重い。
おまけにバッテリー切れが頻発する為切れてしまった時は普通の車椅子より大変である。
でも、きちんとメンテナンスしていればそれなりに使えたりする訳で、余り問題とも思わずに過ごしてきた。
最近はちょっとバッテリーの性能が落ちて来ているので、そろそろ新しいのに交換したい所だ。でも、さしたる問題ではない。
彼女にはザフィーラが居る。
非常に大型犬で(実はオオカミなのだが)、実際の大きさはボルゾイ程度かそれよりやや大きい。
更にはボルゾイよりも圧倒的に筋肉質である。
はやてはそんなザフィーラに乗って町を闊歩する事も珍しくなかった。
最初は町の人々も驚いた、余りの大型犬に危険を感じる人も居たほどだ。
でもはやてが乗っていれば安心する。
誰もが危険は無いと理解してくれる。
「この子はオオカミ犬とか言う種類の雑種らしいんよ」
この一言の説明で誰もが納得してしまう。
それに時々買い物用の鞄をくわえて商店街を回る事もあった。
流石にザフィーラとしても喋る訳にはいかないので、はやてにメモを書いて貰う。
メモとある程度のお金の入った財布を鞄に入れてくわえていくのだ。
「あら、ザフィーラくんお使い?」
てな感じで商店街の人気者だったりする。
お肉屋さんやお菓子屋さんの前では時々ソーセージやお菓子を貰える。
ザフィーラにとってちょっと嬉しい瞬間だ。
最近はすっかり市民権を得てその辺の人間よりよっぽど信用されていたりする。
それにコンビニ強盗まで取り押さえたほど活躍もしている。
ただ小さな子供達に捕まってしまうとそう簡単には解放して貰えなくて、いつまで経っても買い物が終わらないとかしょっちゅうである。
町の人たちの評価は「お利口さん」「天才犬」「世界一の忠犬」と上々だ。
そんなザフィーラをマスコミが放っておく訳はなく、特にはやてが乗っている時を狙って突撃取材しに来る事もある。
海鳴の町のコミュニティ放送を通じてザフィーラはお茶の間の人気者でもあった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~19-29話 作家名:酔仙