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ネコミミスト
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玉虫の翅

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1.八坂神奈子   ――巡り移ろう季節の色

あらあらこれは珍しいお客だ。あなた、何て言ったっけ、確か天狗の。
射命丸。ああそうそう射命丸文。悪いね、次からは覚えておくよ。
清く正しい?いやそこまでは聞いていない。
一体何の用だい。わざわざ土足でこんな奥までやってきて、参拝しにきましたって訳でもないだろう。
ああ、変に畏まらなくてもいいさ。別に冷やかしだからって邪険にする気はないよ。同じ山の住人だ。
引っ越してくるときにはごたごたと迷惑かけたしね。
天狗からの信仰なんてそもそも期待しちゃいない、ってのもあるけどさ。いや別に嫌味を言ってるんじゃないよ。
実際その通りだろう?
ま、私達は私達で地道に信仰を集めていくさ。
おっと、私が話をそらしちゃったか。今日は……取材?ああ、新聞の。
天狗達も好きだねぇ。外の世界にはそれこそ色々あったけどさ。こっちにきてまで見るとは思わなかったよ。
それなりに楽しませてもらってるけどね。あまり出歩かない方だから里の情報には疎いんだ。
神がふらふら出歩くのも格好がつかないだろう。これでも威厳というのにはそれなりに気を使ってるのさ。
さて何が聞きたいって?あいにくだけど早苗も諏訪子も今出払っているから、話すと言っても私が知ってる範囲になるが。
……露骨に残念そうな顔をするね。記者というのはもう少し外面を取り繕うものだと思ってたけど。
正直が心情、と。まぁ細かいことを言っても仕方ないのかもねぇ。幻想郷のやり方というのもあるんだろうしさ。
用があったのは早苗の方?
ああ、この前の異変のことを。なるほど。確かにそれは早苗から直接聞くのが早そうだ。
というか、私も詳しいことは知らないんだ。無事に戻ってきたならそれでいいかとも思ったし。
それにさ。
どうもあまり触れて欲しくなかったようだしね。早苗も。妙にそわそわしてさ。
それならまぁ無理に聞くこともないだろう、とね。実害も消えたのだし。
解決?解決はしたさ。それはもちろん。当然だよ。
うちの早苗が出張ってるんだ。洩矢の神威の前に解決できない異変なんてないさ。
巫女は博麗神社にばかり居るわけじゃない。
事実、消えたろう?あの異変。
里の人間と冥界の亡霊が次々失踪したとか。
へぇ、そんな呼び方してるの。って、あんたが勝手にそう読んでるだけかい。
なに、記事にして、真っ先に定着させれば問題ない?いい加減だねぇ、つくづく。
早苗?さあ、麓に下りるとは聞いたが。人間の里あたりじゃないかな。まだそんなに顔の広い方じゃないしね、あの子も。
いや、そんなに細かく聞き出したりはしないよ。あんまり過保護にしたって仕方ないじゃないか。
ガチガチに神社に縛りつけるのもいいことだとは思わないしね。正直。
意外かい。
まぁ信仰の対象が直々に言うことじゃなかったかもね。ここだけの話にしてくれると助かる。
記事にしたら?そのときは諏訪の軍神の力を嫌と言うほど……冗談冗談。
つまりね。信仰は集めてくれないともちろん困るんだけど、それ以外は自分の時間を大切にして欲しいと、それだけのことさ。
最近麓に下りる回数が増えたのはいいことだと思ってるよ。知り合いが多いに越したことはない。
博麗の巫女くらいふわふわされたら、問題だと思うけどね。
まぁあんたも見かけたら世間話くらいしてあげてくれ。
ああ、そう言ってもらえると安心だ。
もう行くかい。役に立てなくて悪かったね。いやいや。
そうだ。
一つ思い出したことがある。
その異変のことなんだけどさ。結構な規模だったらしいじゃないか。
かつてない規模の弾幕が展開されたとか。太陽の畑が焼け野原になったとか。
やっぱり。眉唾ものの噂もさぞ多いんだろうね。
色々、事情も複雑だと聞いたし。
そう、『色々』とね。
死んだらしいよ。
あの人間の娘。名前はなんだったか。
ええと。そう何度も顔をあわせたわけじゃないからな。魔法使いの。
霧雨魔理沙。
そうそう、あの元気のいい人間だ。
ん。
どうした。
そんなに驚くようなことを言ったかい。私は。


2.河城にとり  ――透き通った水底の色

ゲゲッ、天狗。
あ、いや言ってみただけ。別に逃げも隠れもしないよ。
どうしたの。いっつも血眼になって事件を探してる射命丸文ともあろう人が。ふわふわ空飛んでちゃ最速の名が泣くよ。
血眼は言いすぎだって?こりゃ失礼。
いや呆けた顔してたから珍しくってさ。なに、天狗の組織をクビになったりでもしたの。それは一大事……って違うのか。
霧雨魔理沙?
ああ知ってるよ。よく知ってる。人間は盟友だもの。忘れたりなんかしたら河童の名折れだからね。
ちょうど山の上の神様が引っ越してきた時期からかな。交流は。まぁちょくちょくってところか。
死んだ?
魔理沙が?何で?
この前の異変で……ああ。
それは、ん〜。
ふふ。
ないない。
ないってば。
いやそりゃないでしょ。ありえないって。天狗の頭領が山の神様と不倫してるって話の方がまだ信じるよ、私は。
あはは。山の神が別の意味で山の神に……ごめん、忘れて。
とにかく。幻想郷の人間の中で一番最後まで生き残りそうな人間は誰って聞かれたら私は魔理沙って答えるよ。
しぶとそうじゃん。イメージ的に。何となく分かるでしょ。
ってかどっからそんな話を……ああ、そりゃ担がれたか、さもなきゃ噂に惑わされたんだねぇ。
普通に考えれば分かりそうなもんだけどねぇ。
そもそも弾幕ごっこで死人が出るって、その時点でありえないでしょ。
分かった?理解した?ああ、落ち着いたって顔してる。
弾幕ごっこで死人は出ません。いやいや、文も生粋の幻想郷育ちだろうに。意外と基本のところを忘れちゃうんだねぇ。
前の異変について?落ち着いたらいきなり取材かい。
したたかだねー。なに、大会の成績とかやばいの?
おっと、ちょっとマジになったとこを見るとさては図星だね。
何ていうか、趣味も行き過ぎると大変だねぇ。もっと楽しくいこうよ楽しく。
うちら河童なんて好きなことやってたらいつの間にか他の連中から技術持ちなんて言われる風に。
頼られるのは悪い気しないよ。きちんと礼儀を知ってさえいればね。河童は義理堅いのだ。
そこにいくとこの前のときなんてさぁ……。
おっとと。
い、いや、なんでもないデスよ。
おおっと、ここでにとり自慢の光学迷彩の登場だ。
……壊れてるんでした。
すいません。ほんと勘弁して。
そうじゃない。そのときのは修理したんだけど……そう。前の異変でまた壊しちゃったの。
はいはい白状しますよ。私も前の異変にはちょっと関わってました。
私……というか、河童のみんなが……かな。
って、ちょっとやめて!?そこに食いつくのやめて!?
これ以上は言えないから。ほんと、冗談抜きになるから。
今でも軽くギリギリなくらいなのに……。
う〜〜、盟約なんだよぉ。人間との。黙っててくれっていうさ。
ああ、引き下がってくれる。やっぱりいいねぇ、そういうとこ。
約束の重みをよく分かってるからさ。妖怪は。
まぁそういうことだよ。よそに行っておくんな。私の口はもうテコでも動かない。
うぅ、ほんとは自慢したいこと一杯なんだけどなぁ。あんなことや、こんなことや。
作品名:玉虫の翅 作家名:ネコミミスト