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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話

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 走るシャマルを士郎が追いかけた。
「一体何が起きて居るんだ?」
「魔力飽和です、なのはちゃんの様なとてつもない魔力の持ち主は定期的に魔力を放出してあげないと魔力が暴走して大変な事になるんです」
 シャマルの背中でそのやり取りを聞きながら、もしかしたらリミッターを解除して貰えるかも知れないと淡い期待をするなのはだった。
「くそう、このスイッチを押す時がこんな形で来ようとは?」
 そう言った士郎に制止をかけたのは、シャマルだった。
「いくら何でも、この状態でセットアップすればレイジングハートが燃え尽きてしまいます。
それにまだ今の状態では体の方が魔力の使用について行けず何時発作を起こすか分かりません」
「じゃあ、どうすれば良いんだ?このままではなのはがどうにかなってしまう!」
「方法はあります」
 取り敢えず人気のない海岸に出た。
 そこでシャマルが取り出したのはカートリッジだった。
「はい、なのはちゃん、これに少しずつ魔力を込めてみて」
 一度に渡したのは10本のカートリッジ、1本ずつでは恐らくカートリッジが持たないだろうと思われたからだ。
 そのカートリッジ10本、普通の魔導師程度では5本も充填すれば魔力が尽きてへろへろになる。
シャマルでも1日8~10本程度が限界だった。
だが、なのはは10本纏めてあっという間に充填してしまった。
まだまだ魔力が余っている。
いや、ぎりぎり暴走は止まった物の何時暴走しても可笑しくないほど魔力が滾っている。
「これじゃぁ、また明日には暴走が起きそうねえ?」
「シャマルさん、一体どうしてこんな事になったの?」
「なのはちゃんはね魔力が強すぎるの、だから時々放出しないと空気を入れすぎた風船のように破裂しちゃうの、実際に破裂する事はないけれど回りの物が膨大なエネルギーを受けて燃えちゃうなんて事が起きたりするの」
 そう、なのはこの九ヶ月一度も魔力を放出していなかった。
魔法に目覚めるまではなんともなかった事だが、目覚めてからはほぼ毎日放出していた事だ。
 こういう現象から見てパイロキネシスなどはかなりの魔力を持っている物と思われる。
「だからね時々魔力を使わないととっても危険なの、本当ならレイジングハートがなんとかしてくれるんだろうけど今の状態じゃぁ大して消費してくれそうにないし」
「シャマルさん、それはどう言う事なんだ?」
 士郎が尋ねる。
「デバイス達はマスターの余剰魔力を消費して活動して居るんです、つまりデバイス達のご飯はその持ち主の魔力なんです。
でもなのはちゃんみたいに膨大な魔力量があるととても消費しきれる物ではなく、魔力が飽和に達すれば暴走事故を起こしてしまうんです」
「へ~、じゃあ最近のレイジングハートはいつも満腹だったんだ?」
『もうダイエットしたいほどに』
「お~い、シャマル持ってきたぞ」
 ヴィータだった。
空のカートリッジ100本入りの箱10箱をリュックに詰めて持ってきた。
「じゃあこれ全部お願いね」
 なのはは箱を手に取ると箱ごと充填を始めた。
「いくら何でも100本同時は無理……」
 じゃあ無かった。
あっという間に1箱充填が終わってしまう。
流石にシャマルもヴィータも唖然とした。
(一体どれだけの魔力があるんだよ?)
 そうやって一箱ずつ充填していく流石に8箱目からは充填速度ががっくりと落ちた。
それでもなのはは、10箱全部を充填して見せた。
 どうやらこれで当分の間は魔力を放出しなくても大丈夫だ。
出す物を出し終えたなのははすっきりとした顔をしていた。
「これからは定期的にお願いね」