神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話
第32話 暴走
8月である、夏休みの真っ最中である。
でもなのはには休みはない。今日もリハビリである。
毎日毎日変わらないメニューでリハビリである。
そう簡単には新しいメニューには成らないし劇的に体が良くなる訳でもない。
でも少しずつ回復しているのは明らかだった。
お盆前平行棒を卒業し、歩行器のみになれた。プールリハビリも順調である。
そんなある日なのはは高熱を出してぶっ倒れた。
すぐに安田記念病院に運ばれるが診断の結果は全く異常がなかった。
ただ異常だったのは、テル先生が聴診器を当てようとした瞬間、聴診器が異常な高温になってテル先生が火傷をしたのだ。
それだけじゃあない、なのはが触る物が高温になって焦げたり溶けたりし始めた。
明らかに異常な事態、流石のテル先生でも手の打ちようがなかった。
「一体何なんだよ、これ?」
家族も心配しているがどうにもならない。
だが、それを見たシャマルにはすぐに思い当たる事があった。
(いけない、魔力飽和を起こしている)
魔力飽和それはある程度と言うか、かなりの魔力量を持つ魔導師に時々見られる現象で、時々魔力を放出してやらないと魔力が暴走してしまう現象である。
(困ったわ、まさか魔法の事を喋る訳にも行かないし、どう説明しようかしら?)
(それやったら、超能力言う事にしてしまおう)
シャマルの考えていた事を読んだはやてがアドバイスを入れる。
「これ、多分なのはちゃんの超能力が暴走して居るんだと思います」
診察室へ入ってきたシャマルは、そう言った。
「超能力?」
いきなりの突拍子もない事にテル先生は目が点である。
「はやてちゃんや私達が一緒に暮らしているのは、
なのはちゃんと同じ能力があるからなんです」
シャマルはお約束のスプーンを取り出した。
でもそれは普通に曲がらない、先端の部分から真っ赤に焼け始め溶けて流れ落ちた。
魔力制御の上手いシャマルだから出来る事だが、これがはやてだとスプーンは木っ端微塵に爆発する。
「まだなのはちゃんはこの力が上手く制御出来なくて時々暴走事故を起こしちゃうんです」
テル先生は未だ信じられないという表情をしている。
そりゃそうだろう?いきなりスプーンは溶けるは超能力だと言われるわ、信じられない事が起きているのだから、おまけに溶け落ちたスプーンが床を焦がし、嫌な臭いまでしている。
でも信じるしかないだろう?目の前でそれは確かに起きている事だから……
「それに、この場になのはちゃんを置いておく事は危険なんです。
病院中の医療機器が壊れたり下手をすれば病院その物が黒こげにされてしまいます」
「な、何だって~?」
その瞬間天井の蛍光灯が1本割れる。
シグナムがばれないようにガラスの破片を投げて割ったのだった。
「もう時間がありません私が責任を持ちます、なのはちゃんをお借りしますね」
「どこに行くんですか?」
「なるべく人気のない安全な場所で力を解放させてあげるだけです。
近付くと危険なので絶対に付いてこないで下さい」
そう言うとシャマルはなのはを背負って走り出した。
どうやら直接人体に触れる分には安全なようだ。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話 作家名:酔仙