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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~41-48話

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第41話 無力な私

「なのはちゃん、今日は本当にありがとう、お陰で助かったわ」
 シャマルがなのはにそう言う物のなのはの顔はうかなかった。
何かやりきれない表情をするなのは、彼女は魔法が使えなかった事が、魔法が使えていたなら誰一人死なせずに済んだかも知れない事が、たまらなく悔しかった。
 だが、起きてしまった事に「もし」は存在しない。
結果だけが存在するのみである。
 結果だけ見ればなのはの功績は大きかった。
二つの尊い命を救う事が出来たのだ。
 でも一つの命を救う事が出来なかった。
もし魔法が使えたなら、もしあの車の接近にもっと早く気付いていたならと、
悔しい思いだけが募っていく、心に刺さった棘はちくりとなのはの胸を突き刺した。
「今日はかなり恐い目にあったので、出来ればお母さんが一緒に寝てあげて下さい」
 シャマルはそう言って帰っていった。
 八神家が帰った後声を掛けたのは士郎だった。
「なのは、今日は良くやった、えらいぞ」
 その言葉になのはが涙をこぼし始めた。
「私があの場で魔法を使えたなら……
もっと早くあの車に気付いていたなら誰も死なせずに済んだかも知れないの、
なのに私は……誰も助けられなかった……もっと私に力があったなら、
せめて、この手の届く所にいる人くらいは守り抜ける力が欲しい!
誰も死なせる事のない悲しませる事のない力が……
今の私は無力すぎるの……」
 そう言ったなのはを桃子が優しく抱き締めた。
 士郎は思う(この子も立派な御神の戦士だ、立派に御神の心を受継いでいる)と。
「なのは、あなたは良くやったわ、何の力もなくても二人の命を救ったのよ、
もっと胸を張りなさい、自分で全てを背負い込まないで、もっと仲間に頼りなさい。
あなたには頼りになる仲間がいるじゃないの?
もっと自分を信じて自分を信じてくれる仲間を信じてあげなさい」
 泣きながら頷くなのは、
「あなたは私の誇りよ」
 桃子が優しくそう言った。
そんな桃子の胸に顔を埋めてなのはは泣いた、
久しぶりになのはに泣かれて桃子は思う(やっぱり私の娘なんだ)と。