神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話
「次に居取りを教える」
士郎はその場に正座するとシグナムに木刀を投げて寄こした。
「それで俺を討ち取ってみろ、出来る物ならな」
正座した状態から木刀と戦う、圧倒的に不利な状況、これで勝てたら普通可笑しいのだがそれが出来てしまうのが御式内だった。
シグナムが木刀を構える。
士郎との間合いを詰め大上段から渾身の一撃を撃ち込もうとした瞬間、木刀が空を切りシグナムが宙を舞う。
何度やっても同じだった、前から横から後ろから斬りかかっても士郎が片膝を立てた瞬間にはシグナムは投げられるか関節を取られて押さえ込まれていた。
なのは達見ている者は不思議だった。
何故あそこまで早い木刀を避けて相手が掴めるのか?
後ろから来ても何故分かるのか?
「そろそろ良いだろう?」
なのは達にそっと原理を説明した。
そしてもう一度居取りをやってみせる。
「ホントだ!動きが丸見え!」
そう、居取りの基本は相手の腕を見る事から始まる。
どんなに速く木刀を振ろうと、腕の動き事態は大したことがないのだ。
しかも武器を持つ者の鳩尾までは腕の方が速く振り下ろされ、そこから手首を中心に遠心力で加速して木刀が落ちてくる。
だから手の動きを見ていれば自ずと木刀の軌道と振り下ろされるタイミングは手に取るように分かるのだ。
後は捌きの応用だった。
居取りは対武器武術用の技なのだ。
自分が武器を持っていない時に襲われたらどうするのか?
それが居取りという答えだった。
手が止まる一点を見極め武器よりもスピードの無い手をその一点で掴んで崩す、それが居取りの極意なのだ。
「木刀じゃあ危険だろうから竹刀でやるか?」
なのはとヴィータがシグナムとフェイトがそれぞれ交互に練習する。
失敗すれば脳天に竹刀の一撃がもろに入る。
まあ、たんこぶ程度の怪我しかしないけれどもの凄く痛い。
はやては士郎が付きっきりで指導していた。
それから三日、打撃と居取りの練習が重点的に行われ、加えて寸勁の練習もかなり充実した物になった。
そして4日目の夕方、高町家を訪問する者があった。
レティ提督だった。
レティ提督は9月からなのはが復帰するという情報の真意を確かめに来たのだった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話 作家名:酔仙