神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話
話は夏休み前に遡る。
士郎とケンカをし家を飛び出したなのはは管理局に復帰するべく。
レティに連絡を入れていたのだ。
当分はユーノと同棲しながら管理局に通う予定でユーノの所に転がり込んだ物のあっけなく士郎に連れ戻されてしまった。
その後レティに連絡を取っていなかった為レティの方から復帰後の人事について詰めの話をするべく出向いてきたのだ。
「管理局と致しましてはなのはさんの様な優秀な魔導師は何としても欲しい訳で……」
「くどい、まだ断絶は続いている」
「ですが……」
と、そんなやり取りをしている横ではやて達が夕食の準備をしている。
いつの間にかポメちゃんまで手伝いに加わっていた。
「大丈夫だよ、お父さん、強くなれたら復帰させてくれるって言ったもん」
なのはが口を挟む。
「なのはは黙っていなさい」
「あのう、強くなれたらとは?」
「確かになのはには強くなれたら自由にして良しと言った。
だが俺に認められるだけの強さまで成長できなければ管理局をスッパリ諦めて翠屋を継いで貰う。
そう言い渡してある。期限は中等部卒業までだ」
それはいきなりだった。
いきなり期限を切られもしダメならもう向こうへ行く事すら叶わないのだ。
「そ、そんな……」
なのはにとって引導を渡されたような物だった。
恭也や美由紀のように格闘技の才能に溢れた人間ならいざ知らず、凡人のなのはにとってそれだけの短期間で士郎に認められるほど強くなれるとはとても思えない。
「お父さんの嘘つき!初めっから復帰させてくれるつもりはなかったんだ?」
「そんな事はないぞ、お前が24時間、365日休み無く努力したならギリギリ間に合う期間だ。
まあ、並大抵の努力では強く成れんがな」
「士郎殿、では後2年半と少し復帰は認めて貰えないと……?」
「さあな、もしかしたらもっと早いかも知れないし永遠に認められないかも知れない。なのはの努力次第だ。
それまでは管理局には口出ししないで貰おう」
「あのーちょっと良いでしょうか?」
口を挟んだのはシャマルだった。
「もっと具体的に目標を示してあげてはどうでしょうか?
なのはちゃんは具体的な目標が有ればこそ実力を発揮するタイプですから……今までのリハビリがそうだったように」
「なるほどな具体的目標か?そうだな、取り敢えず3段並の強さになったら”仮”復帰させてやろう。
ただし中等部卒業までに5段並みと認められるほど強くなる事、
それが出来なければ管理局を諦めて翠屋を継ぐ事だ」
5段並……つまり美由希と素手で互角に戦えなければ管理局を諦めなければならない。
なのはは目の前にとてつもなく高い頂を見た。
この頂きに辿り着けなければもう自分の自由はないのだとそう感じていた。
取り敢えずの目標3段並みとは?どれ位強いのかも想像できない。
まだ始めてたったの一ヶ月、初段にすら到達していないとそれだけははっきり分かった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話 作家名:酔仙