神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話
もうすぐ12月かなり寒くなってきた。
修行にはちょっと辛いがそんな事も言っていられない。
「今日から、気配を読む修行をする」
士郎がそう言った。
「気配を読む?」
「そうだ、お前達魔導師は魔力を読んで相手の攻撃を避けている様だがそれを気配に置き換えれば分かり易いだろう?」
「そう言えば美由希さんも何で魔力も無いのにあの連中の襲撃が分かったんやろ?」
そうキール事件の時襲撃を始めに感知したのは美由希達だった。
「確かに俺たちは魔力を持っていない。だから魔力その物を感知する事は出来ないけれど魔導師の気配は分かる。
特に強い魔力を持った奴ほど気配もまた強いんだ」
「じゃああの時やばいとは思わなんだの?」
「気配は強いかも知れんが本当の強さとはまた別問題だ。
むしろ気配その物を読んだ方が相手の強さは良く分かる。
気配の質が違うからな」
「気配の質?」
「まあ、魔力にも質があると聞いているがそれと同じような物だ。
それに魔導師が如何に強かろうとも大きな欠点を抱えている以上、俺たちが負ける事は万に一つもあり得ない」
「魔導師の欠点?」
「そうだ、お前達魔導師は欠点だらけだ。
その欠点がある以上は武術の達人クラスには勝てないだろう?
近接戦闘では特に弱いとしか言い様がない」
「そんなに接近戦に弱いかな?シグナムさんなんか滅茶苦茶強いのに」
「そうでもないぞ接近戦の得意な魔導師でさえ共通の欠点を抱えている」
そう言って士郎が説明する魔導師の欠点それはなのは達にとって考えを改めるべき物だった。
魔導師の欠点①魔法を発動する際は詠唱が必要であり詠唱中は動く事が出来ない。
②無詠唱でも発動出来る魔法もある様だが発動すると思ってから、実際の発動まではタイムラグがある。
③大きな魔法を撃った後は2~3秒動けない。
④大きな魔法は連射が利かない。
⑤大きな魔法は何発か撃つと体の方が付いてこない。
⑥魔力切れを起こすと動けなくなる。
⑦気配を読めない奴が多い。
ここまで具体的に指摘されると返す言葉さえなかった。
そう、どれも回避しようのない欠点だった。
⑦番は修行でどうにかなる。
⑤⑥番は出来る限り魔法の使用を抑える事で何とか乗り切れるかも知れない。
でも、①~④番はどうにもならない欠点だった。
「だから御式内を教えたんだ」
そう、その欠点を克服するには接近戦だった。
今まで接近戦のからっきしダメだったなのはとはやて、御式内のお陰で相当強くなっていた。
とにかく接近戦に持ち込んで御式内で仕留めろと言うのが士郎の教えだった。
「じゃあ修行を始めるぞ!」
なのは達に渡されたのは小太刀の木刀と目隠しだった。
座禅を組んで目隠しをする。
小太刀は膝の上だ。
後ろから士郎が竹刀で頭を狙う気配を読んで小太刀で受け止めれば良し受け止められなければ痛い目に遭うのである。
1巡目全員頭に竹刀を受けて痛い目にあった。
2巡目当てずっぽうでも小太刀を出すフェイトが何とか受け止めていた。
どうやら竹刀が風を切る音を聞き分けてそれで出している様だ。
その為他の誰かが叩かれても小太刀を出していた。
なのははズキズキする頭と戦いながらそれでも必至に何かを掴もうとしていた。
気と魔力はよく似ている。
なら絶対に士郎の気を掴む事が出来るはずだと考える。
以前恭也にも聞いた事があった。
気はありとあらゆる物が持つエネルギーその物だと、その全てを感じられる様になれば目で見る必要さえないとそう言っていた。
「今日はこの辺にしておこう、これからは毎日試合の後にやるぞ?」
こうして気配を読む練習が新しいメニューに加わった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話 作家名:酔仙