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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~81-90話

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第81話 心眼

 11月もそろそろ終わりという頃なのは達はまだ気配を読めずにいた。
「後少しで読めそうなんだけど、何か切っ掛けさえ掴めれば……」
 気配を読もうと思うと回りの巨大な魔力が邪魔になる。
何せSクラスに迫る魔力の持ち主、特にはやては魔力だけならSSSだ。
そんなのが回りにいるだけで道場の中は相当な魔力が渦巻く空間になっている。
 なのはは思った。
(なまじ魔力があるからそれが邪魔になるかも?)
 目隠しの中、目を閉じ心を落ち着かせ自分のリンカーコアを感じる。
そしてリンカーコアの活動を何とか押さえ込み始めた。
 完全に魔力ゼロという状態に持って行ける訳ではないがそれでも相当の魔力を押さえ込む事に成功した。
 改めて感じるはやて達の魔力、信じられないほど巨大に感じる。
そうすると今度はバルディッシュやレイジングハートの魔力さえ感じる事が出来る。
 持ち主に比べたら待機状態のデバイス達はもの凄く小さな魔力、
「良いか、生きている物、意思のある物、思念の籠もった物全てに気配がある。
まずは生きている物の気配から探すんだ。
既にお前達の中に気配を探す方法は教えてある。
今までやった御式内の修行を良く思い出すんだ」
 士郎のアドバイスが響く、直後それに気付いたのはシグナムだった。
なのはの魔力が異常に小さくなっている。
もしかしたらと自分でもやってみる。
 なのはもシグナムの魔力が小さくなっていくのを感じていた。
 時々バシッと士郎の竹刀が頭に落ちるが、
もうそれを気にしている余裕はなかった。
 今度はフェイトがそれに気付いた様だ。
フェイトも真似をして魔力を押さえ込んでいく、
残りはヴィータとはやてなのだが相変わらずはやては魔力を垂れ流し、
ヴィータはまだなのは達に気付いていない。
 でもこれはこれである程度読みやすくなってきていた。
「そうか?魔力以外の物を探せば良いんだ?」
 集中するなのは士郎が足音をさせない様にゆっくりと歩くのが分かった。
いくら足音をさせない様にしていても時々ミシッという音がする。
その音をさせている足の運びを士郎の位置をイメージする。
「!」
 その瞬間なのはは小太刀を頭上に構えていた。
バシッと竹刀を受け止める事が出来た。
完全に気配を感じられた訳ではないが存在を感じる事が出来た。
 すぐに今の感覚を思い出して集中する。
今度はすぐに士郎を感じる事が出来た。これが気配という物だろうか?
微かに聞こえるミシリと床がきしむ音、その瞬間足の運びを姿をイメージする。
 イメージすれば呼吸を読む。
だんだんと姿形がはっきりしてくる。
 そのままその姿を追った。
(ぁ、今ヴィータちゃんの後ろ!叩かれる)
 バシッ
「いって~」
(ほら喰らった)
 また歩き出す、今度はフェイトの後ろにやってきた。
竹刀の音が分からない様に頭に近い所から一撃入れる。
「痛たたぁ~」
(フェイトちゃんも喰らったみたい)
 心眼とでも言うのだろうか?
一度存在を感じてしまえば後はそれを追いかける事は簡単だった。
(今度はシグナムさんの番だけど……やっぱり来た!)
 2回目も完璧に受け止めていた。
「どうやらなのはは出来るようになったようだな?」
「気配を読むってそう言う事だったんだ?」
 なのはの言葉に追い越されたと焦るフェイトとシグナム、
同時になのはが何を感じているのか?それが非常に気になる二人だった。
「今夜の稽古はここまで」
 こうしてまた一つ階段を上ったなのはだった。