新生勇者戦記 ブレイヴ・サーガ・ディザスター 第60話
第60話 「日常!ライヴ!!魔法少女!?」
多くの犠牲者を出した大ハカイジュウ災害より3週間余りが過ぎ去ろうとしていた。
いつものように登校する勇士朗。激戦の事を、グレートファイバードになった事を思い出しながら朝の日差しの中を歩く。
勇士朗 (俺・・・・グレートファイバードになって闘ったんだな。)
広げた右の手の平を見つめ、ドライアスとの激戦の映像を脳内にフラッシュバックさせる。今でも伝わってくるビリビリとした戦闘の感覚。ドライアスは一応の撃退はできたものの、未だ取り逃がしたままである。
本当の闘いはこれからと言うべきだろう・・・。
♪〜〜〜
だが、デストリアンとの最終決戦以降、これといって目立った災害は起きていなかった。とりあえず今はこの時、この瞬間の日々を噛み締めて生きる。日常と言う名の報酬を得たのだから。
その時、ケータイが鳴った。澪から朝のメールが届いたのだ。
勇士朗 「お!メール☆そっか・・・・俺、澪ちゃん・・・いや、澪と付き合うことも出来たんだよな。」
長きに渡る恋心の成就に未だに実感が湧かない。惚れた当初の澪の存在は、雲の上だったのだ。
だが今、まさに自分の彼女としての澪がいる。想いを切り替える。もう両思いなのだと。すぐにメールを返す勇士朗。
メールを打つ勇士朗に蓮が背後から勇士朗の肩にドンと手を叩く。
蓮 「おっす!!勇士朗!!」
勇士朗 「うぃー。蓮か。」
蓮 「おおう、おおう!朝っぱらから澪ちゃんとメールか??」
勇士朗 「ま、まぁな!本当、今でも正直付き合っている事が実感しない!」
蓮 「そりゃ、よーござんすな〜。俺も律っちゃんと付き合いテー・・・・なーんてな!」
勇士朗 「何が「なーんて」だ!本音なくせによー!!」
蓮も律へのほのかな想いをズリズリと引きずっている。彼もまた告白できずにここまで来ていた。
蓮 「うっ・・・澪ちゃんと付き合ったとたんに強気になりやがって〜?!」
勇士朗 「告白しちまうとスッキリするぜ??そんなに律っちゃんが好きならいっそ言ってみればイージャン!!今までなかなか告れなかった俺が言うんだからよ!」
蓮 「・・・・・ほーんと強気になったな・・・・。」
口を「3」の字にして言う蓮。そのほぼ同時刻。エリザベスを背負った登校途中の澪に、勇士朗からの返信のメールが届く。
澪 (あ!返ってきた!)
想いを馳せながらまたメールを打ち返す。ずっと澪を想い続けていてくれた勇士朗と付き合えていることに、この上ない喜びを感じていた。あの大災害を越えた後のコトであるゆえに、その幸せの感覚も倍増であった。
澪 「勇士朗・・・ふふ♪」
その時、後ろから律がやってきた。澪にとってのいつもの朝だ。
律 「おっはよーっ!澪!」
澪 「ああ、おはよう!」
律 「で!!どーなのさ〜?勇士朗君とは?!」
すぐに律はニヤケながら勇士朗とのカンジについて突っ込んでくる。
澪 「う、うるさいなー!朝から早々!」
律 「だって気になるじゃん!!澪にとって初めての彼氏なんだからさー!!」
律が押す。澪は「しょーがないなー」と思いながら、この前のデートのことを思い出しながら言った。
澪 「別に・・・まだ最初だからそんな急な展開なんてないぞ。ただデートは行ったけどな。勇さんと和と一緒に。和はまだ付き合ってるわけじゃないけど、いい感じだったよ!」
デートという言葉に反応し、律はさらに澪をからかう。
律 「おおう!!ダブルデートかぁ!!何処まで行ったの〜??キスはしたのかねぇ〜??それとも・・・更にそのサキにいっちゃったのかなぁ〜〜??キャー!!」
ゴンッ!
澪の鉄拳が律の頭上に炸裂。コブが発生する。これもまたいつものコトだった。
澪 「だ・か・らっ!!急な展開なんて無いって言ったろ!!私も和も同じ感じだよ!!」
律 「いたいなー、ちょっとからかっただけじゃんかー。」
澪 「まったく・・・まぁ、手は・・・繋いだよ。結構・・・あ、温かかった・・・。」
何だかんだで顔を赤くして言う澪。けれども実際は更にもう少しイイ感じである。だが、律のこと・・・言えば更にオーバーに迫ってくるだろうことを思って最小限に澪は発言していた。
律 「なんだ、展開あったじゃん。でも・・・いつかは勇士朗君、澪にボコボコにされちゃうのかなー・・・・。」
澪 「何を言ってるんだよ!そんな事、勇士朗にできないよ!!」
律 「そーかねー??でも、勇士朗君が澪の凶暴な性格わかったら嫌われちゃうかもな。」
澪 「う・・・・でも、きっとそんな事しない。したとしても、勇士朗は受け入れてくれるんだと思う。」
澪の脳裏に今までの付き合う以前の記憶が流れる。楽しかった時の事、切なかった時の事、危険にさらされた時の事。
澪は勇士朗から、初めての彼氏にして運命的な感覚を感じていた。これまで乗り越えてきた日々を思い返せば、そう感じてならなかった。
律 「それはチョット買いかぶり過ぎ・・・っていうか考え過ぎ!!」
澪 「それだけ信じてるんだよ。それはそうと、律はどうなんだ〜??蓮君と!!」
今度は律に攻撃が行く。赤くして否定する。
律 「な、なんでそこで蓮が出て来るんだよぅ!!あいつはカチューシャ同盟だよぅっ!!」
澪 「そうか〜?顔が赤くなってるぞ??」
律 「うっさいわい!!」
何気ないような日常の会話のやりとりが戻り始めていた。そう思うと自然に笑顔がこぼれる澪。
だが、決して市民の人々の心の傷が癒えたわけではない。街は元に戻っても、心の傷は直ぐには戻らないのだ。故に澪たちは以前にもやったことのある、街のチャリティーライヴの参加を決めていた。
数日後の土曜日。市が主催したチャリティーライヴが再び市民文化センターで催される。前回同様以上に市内外からバンドグループが多く参加していた。
そんな中、今回の彼女達は、さわ子お手製の衣装を着ての参加だった。どれも個性がある衣装だ。控え室では次の出番を控えた澪達が待っていた。外からは他のバンドが放つサウンドが聞こえてくる。
このサウンドを聞きながら椅子に座っていた梓が嬉しそうに微笑みながら言った。
梓 「こうしてまたライヴが出来るって、私、とても幸せです!」
澪 「そうだな!私も改めて実感できてる!今日のライヴもあの日やったチャリティーライヴの時の様に成功させるぞ!」
梓 「はいっ!それにしても澪先輩、その衣装って確か・・・澪先輩が高1の時の学園祭で着ていた衣装ですよね?」
メンバーがさわ子の新作衣装を着る中、澪だけが何故か初の桜高文化祭で着ていた衣装を着ていたのだ。梓も少しばかりの疑問を抱く。
だが、これには澪なりの想いがあってのことだった。
作品名:新生勇者戦記 ブレイヴ・サーガ・ディザスター 第60話 作家名:Kブレイヴ