二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ふたりの狩人

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 


暗い気持ちで仕事を終えた帰り道、ふと顔をあげたプロイセンは、遥か丘の上で金色の光を見つけた。
見間違えようもないハンガリーの髪の色だった。喜び勇んで駆け寄り声をかけようとして、プロイセンはそのままぽかんと口をあけた。

そこにいたのは賢者の魔法で美しい娘に化けたハンガリーだった。
たっぷりなお湯で磨きあげられ、良い匂いの香油を擦りこんだハンガリーの肌はびっくりするほど白くなめらかだった。伸ばしっぱなしだった金の髪は念入りに櫛梳られ、まるでお日様のように輝いていた。
花を飾り上等な絹のドレスと色とりどりの石を飾ったハンガリーは、女に化けたプロイセンに負けないくらい、いや、それ以上の美しさだった。

ハンガリーは駆け寄ってきたプロイセンに、かつて娘に化けた彼がやったように、にっこり笑いかけた。
プロイセンは大きく目と口を開いたまま、ただハンガリーの姿を上から下まで眺めた。
ハンガリーはいつかの自分のようにプロイセンが求婚してくるのを今か今かと待ったが、プロイセンは、まるで恐ろしい獣にあった時のように、じりじりと後ろ向きで逃げ始めた。
慌てたハンガリーは小走りでプロイセンに駆け寄り、逃げられないようにぎゅっとその手を握った。
プロイセンはびっくりしたように動きを止め、ハンガリーを見下ろして耳まで赤くなった。
その顔がたいへん面白かったので、ハンガリーが思わずふふふと声をあげて小さく笑うと、プロイセンはますます真っ赤になりうつむいた。

それから二人は月明かりの下を手を繋いだまま歩いた。
丘を越え森を抜け、どれだけ歩いても、プロイセンは黙りこくったままだった。
ハンガリーが顔を覗きこんでも顔をそらして唸るばかりで、そのくせしっかりと握った手だけは、けして離そうとはしなかった。

いつしかプロイセンのの家までたどり着いたふたりは、手を繋いだまま戸をくぐり、寝台に並んで腰掛けた。
窓から差し込む月明かりがやさしくふたりを照らしていた。
プロイセンはハンガリーを見下ろすと、とうとう小さな小さな、搾り出すような声でひと言、
「よく似合っている」
と言った。
嬉しくなったハンガリーが、またうふふと笑うと、握ったままの手にプロイセンがぎゅっと力をいれるがのがわかった。
いつまでたっても求婚してこないプロイセンにしびれをきらし、ハンガリーはとうとう自分から口をひらいた。
「わたしをお嫁さんにしてくれる?」
プロイセンは赤い目を大きく見開き、しばらくうろうろ彷徨わせた後でハンガリーをぎゅっと抱きしめ、
「いいのか」
と震える声でたずねた。
「俺と結婚してくれるのか、ハンガリー」
名前をよばれ、ハンガリーは飛び上がるほど驚いた。
とっさに逃げ出そうとプロイセンの胸を両手で押したが、分厚い胸はびくともしなかった。
ずいぶん逞しくなった腕に閉じ込められしっかりと抱きしめられて、ハンガリーは雷に撃たれたように動けなくなった。
「大切にする。どうか俺のものになってくれ、ハンガリー」
必死な声でささやくと、プロイセンはハンガリーの木の実より赤く色づく丸い唇に、不器用に口づけた。
プロイセンの唇が一度離れて、再び近づくまで、どういうわけかハンガリーは指いっぽん動かすことが出来なかった。
二度目のくちづけを受けたあと、ハンガリーは魔法にかかってしまったようにおとなしく、ゆっくりと目を閉じた。


その夜、プロイセンは娘に化けたハンガリーをすっかり自分の妻にしてしまった。
新婚の夫婦の行う魔法の儀式をずいぶん念入りに行った為か、夜が明け、朝になり、また夜が明けて、幾日かたっても、ハンガリーが男に戻ることはなかった。

今までのように一緒に野山を駆けて狩りをし、夜には胸に抱かれてくれるハンガリーをプロイセンはたいへん大切に扱い、銀色の髪と金色の髪のほんものの夫婦になって、黒い森のふもとでいつまでも仲良く暮らしたということである。



おしまい
作品名:ふたりの狩人 作家名:しおぷ