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海賊と烏【島国童話】

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そして―――――――――突然鎖を引きちぎらんばかりの勢いで、アーサーから離れようとする。
火がついたようだった。フェリシアーノが声を揺らして
「・・・アーサー!危ないよ!・・・かわいそうだよ」
いったいどちらの味方なのか、アーサーと白い着物の青年とを交互に見つめて叫んだ。
それは、自分の体を抱えるようにして「触るな海賊!!私をここから出せ!!」犬のように鎖につながれながらも、出来るだけアーサーから離れようとする。
文字通り火が点いたような威嚇の声である。
アーサーは皮手袋に食い込む鎖を感じながら、
「まぁそう言うな、傷つくだろ。お前も魔物というだけでそんなに嫌がられたらさ」
軽口をたたきながら非情な様子で彼を手繰り寄せた。肩を掴むと、布の下の骨ばった体がびくりと震える。そのまま着物の合わせを掴んで引き倒す。
フェリシアーノの制止もどこか遠い。
それは息を吞んで、声も出さずに冷たい床に倒される。ほぼ馬乗りになってアーサーは言った。
「魔物ならそれらしい抵抗をするんじゃないのか?見たところ牙も羽根もないが」
拳銃を喉の窪みに当てると、思いのほか豪胆らしくそれは睨み返してきた。
髪を乱しながらも憎しみのこもった瞳で嫌悪感たっぷりに見上げてくる瞳が、ふと恐れたように泳いだ。

(はね)
彼の口が確かにそう動いて、白い着物の背中を勢いよく見やった。
「はねが」
それは静かだったが、絶望が込められた響きだった。
「・・・ああ?」
アーサーの掌にきつく食い込んでいた鎖が、途端に緩む。
見上げてくる瞳は、先ほどの烈火を消して、消し炭のような黒になる。
みるみるうちに表情が失われていくさまに
「おい、どうした?」
思わずアーサーが問うて覗き込んでも、その瞳はガラス球のように表面にアーサーの顔を映すだけだ。
「・・・おいおい、戦意喪失か?つまらねえな」
「・・・・・・もう、いい」
諦観しか込められていない声音で、落とすようにそう言う。
アーサーは心底つまらないと思った。
彼に点った炎がてのひらの痛みとともにとても鮮烈に、残っていたから。
もっとその火の色を感じていたかったというのに。

魔物は顔をそむけながら、投げやりな声音で
「海にでも捨てろ。わたしはもう魔物ですらない。ここにいる意味もない」
微笑とも涙とも、次に浮かべそうな表情でそれは言った。
アーサーはその様子を見下ろしていたが、投げ捨てるように鎖を離して背後のフェリシアーノに言う。
「おい、こいつの口に枷付けとけ」
魔物の肩が、びくりと跳ねる。
「・・・アーサー?!なんでだよ、これ以上・・・やめてあげてよ」
事の成り行きを涙目で見つめていたフェリシアーノは飛び上がる。
「いいから、さっさと嵌めろ。こいつはかなり躾が必要な狂犬のようだ」
「それはアーサーが苛めるからでしょ?」
なんとでもいえ、と言って、それの襟首をつかんだまま見下ろす。
「そうだな、見た目は嫌いじゃねえし根性は悪くなさそうだから、少しは待遇をよくしてやろうか?ふんじばったまま、『客室』へ運んでおけ」
その発言に、フェリシアーノはぎょっとして
「ええええ?ちょっとそれは・・・どうだろ・・・」
口答えするなとばかりに睨まれて、彼はまたううっと詰まりながら、うつむいた黒髪の君に心の中で謝った。
そしてそのうつむいた首筋と、広がった袖を見てどことなく、
まるで、鳥のようだと思ったのだった。



***************to be continued
作品名:海賊と烏【島国童話】 作家名:うー